公安調査庁パンフレット解説・官庁訪問対策 ~スパイになりたいあなたへ

この記事は約24分で読めます。

2015-07-29インテリジェンス・治安

平成26年度版 公安調査庁採用パンフレットの女性

公安調査庁は情報機関、業務内容はスパイです。
トップイラストは公安調査庁の平成26年度採用パンフレット
ネットで話題になりました。

ついにスパイまで萌えの時代に入ったか、目立ってはいけない存在のはずなのに。
みたいな感じで。

本記事では、元職員の私が本件採用パンフレットの内容について解説します。
公安調査庁を志望する人、単にスパイに興味のある人、謎の組織の実態が知りたい人。
いずれの需要にも応えさせていただきます。

公安調査庁とは?

公共の安全を脅かす可能性がある団体等に対し調査をおこなう法務省の外局

もう少し具体的に言うと、二つの顔を持っています。
一つは情報機関。俗な表現を用いれば、いわゆる「スパイ」を業務内容としています。
一つは規制官庁。オウム真理教への立入検査は、報道でも目にするところでしょう。

何やらすごそうです。
しかし実のところ、霞ヶ関においては無名であり弱小です

でも、だからこその試み。
内部の職員からは、

「とにかく役所の名前を知ってもらう」

純粋にそれだけの理由で実施したものと伝え聞いています。

著者および本記事執筆の動機

本記事は、「公安調査庁・私の小説の読者・官庁訪問する方」という三つの対象を念頭において書いています。

公安調査庁

一時は身をおいた場所、愛着はそれなりにあります。
古巣が存在をアピールしようと頑張るなら、少しでもその応援になれば。
そう思って書きました。

国家にとって大事な仕事をしているはずなのに、名前すら知られていない。
友好国のCIAなんか、あんなに有名なのに。
日本だって警察庁や外務省ばっかり、公安調査庁の名前が出るときときたらオウムか不祥事だけ。
世の中、声の大きい者が勝つ。
公安調査庁の宣伝下手は在職中より頭抱えていた部分ですから。
この点において「とにかく名前を」という今回のパンフ戦略は正解じゃないかと思っています。

ただ、「それなり」にすぎません。
忠義は感じてませんし、ヨイショする義理もありません。
いいことも悪いことも織り交ぜ、書ける範囲で客観的に書かせていただきます。

私の小説の読者

現在の私はプロの小説家を目指す身。詳しくはこちらを。

本記事は、拙作「こんな弟クンは欲しくありませんか? 」(略称:こん弟)で扱った小ネタの説明です。
連載当時応援してくれた読者は、みんな公安調査庁なんて知らない人達。
そのため、作品世界観を深めるのに役立てていただこうと書いたものです。

官庁訪問を行う方

官庁訪問は真贋織り交ぜ様々な情報が飛び交い、精神がすり減ります。
匿名掲示板のスレなんて覗こうものなら、振り回されっぱなしになりかねません。
私のときでもどれだけ怪情報が乱れ飛んだことか。

本記事の内容は、私が内部で直接見聞したもの
あくまで私の在職時の話ではありますが、出所不明な情報よりは信頼できるものかと思います。
(退職してからかなりの年月経ちますが、聞いている限り大幅に変わっているということはなさそうです)

また上記記事で紹介された「キノコ煮込みに秘密のスパイスを  」(略称:キノスパ)は、公安調査庁について等身大の姿を描いています。
小説ですので全てが本当というわけではありませんが知る手掛かりにはなるはずです。

公安調査庁をオススメしない点・する点

まず「悪いこと」から述べます。
ただ必要があれば「いいこと」もあわせて書いています。

キャリアの場合

短所1 検事の植民地

公安調査庁は法務省の外局。

実際にトップに立つのは検事であり、いわゆる植民地官庁です。

他官庁みたいにキャリアが尊大に振る舞うことはできないし許されないものとお考え下さい。

当然、出世にも限界があります。
昨年までのプロパートップはナンバー3の総務部長Sさん。
しかしSさんはキャリアの中でもずば抜けた存在で、そもそも次長になることが目されていました。
(次長=他省庁の局長級)
そのSさんが退官した今、総務部長はしばらくプロパーに戻ってこないと噂されています。

ただし検事がいるのは、基本的に課長以上の限られたポスト。
ヒラから検事のいる本省に比べると存在を意識することはないです。

なお、法務省本省については、入国管理局を除き、やめた方がいいです。

キャリアと言えどもノンキャリア同然の扱い、友人の話を聞くと地獄です。

入国管理局は実質的に外務省であり、またプロパーの局長も出ています。
一人は特別優れたと評判の方でしたので例外かもと思ったのですが、その後も続いています。
その一方で競争がないので、仕事にさえ興味持てるなら割とおすすめだったりします。

短所2 ノンキャリアの力が強い

プロパー最高ポストとなる本庁調査第二部長に就くのは、キャリアではなくノンキャリア(2016年現在)。

それほどまでにノンキャリアの力が強い官庁です

これは上に検事がいることもさることながら、公安調査庁が一種の専門職集団であるため
公安調査庁の命は、敵組織に張り巡らせた協力者(=スパイ)網。
そして協力者を作り上げるのはノンキャリアの仕事。
「誰が公安調査庁を支えてると思ってるんだ?」と言われれば反論できませんから。

なお、キャリアで協力者獲得工作に成功したのは過去3人しかいません。
10年以上前の私が最後です(海外担当の調査第二部では唯一、その後も出ていないと聞いてます)。

短所3 天下りがない

何の利権もありませんので。
再就職先は自力で探します。
私の知っている例ですと大学教授とかですかね?

長所1 ある程度までの出世が他官庁より保証されている

出世のペースは他官庁より遅いものの、指定職までほぼ保証されています。

指定職とは審議官級(地方支局だと局長)以上のポスト。
安定という観点からいえば、指定職になれないとキャリアの意味はありません。
他官庁だと保証されているのは課長まで。その前に選別される可能性もあります。
定年まで勤めたキャリアで指定職になれなかったのは、私の知る限り一人だけです。
割り切れるなら、それなりにはキャリア気分を味わえます。

以前は「次長をもらえることはあっても総務部長をもらえることはない」と言われていました。
(総務部長が実質的にヒトとカネを握っているため)。
その総務部長が一旦ながらもキャリアの手に渡ったわけで。
昔は検事ポストだった関東局長も現在はプロパーポスト。
全ては本省(検事)の御機嫌一つという弱さはありますが、話を聞く限りだと風向き自体は決して悪くないと思います。

今から入庁する方なら、さほど悲観的になることもないかも知れません。

長所2 仕事が楽で、いい人が多い

キャリアが定時に退庁できる官庁は、霞ヶ関の中でも公安調査庁くらいではないでしょうか。
他官庁みたいに変な雑用で使われることも、残業に付き合わされることもありません。

また、誰もが指定職になれる一方で出世にも上限があることからキャリア間の競争がありません。
課長以上で本庁勤務を続けられるか地方回りをするかの選別は行われていますが、退職金の関係からいえば大差ありません。
(むしろ地方の方が検事いない分、気楽という人もいます)

加えて、もともと野心のない人が多いため、他官庁みたいにキャリア同士でギスギスすることもありません。
まったりほっこり働きたい方には向いていると思います。

ノンキャリアの場合

短所1 業務のメンタルに掛かる負担

まず、業務の厳しさが挙げられます。

人事院の調査によると、

公安調査庁職員の平均寿命は他官庁より10年短い。

とんでもない話ですが、本当です。
これにつき、人事課の職員は次の通り説明していました。

退職すると在職中にかかっていた強大なストレスから解放され、気が抜けてぽっくりいくのだろう

そのくらい精神的にきついです。

なお本庁に転勤できれば、この問題は発生しません
基本的にシンクタンクと変わらない仕事ですので。

聞いたところ、本庁も知った人が結構亡くなってました……。

短所2 厳しい成果主義

スパイなんて簡単に作れるものではありません。
そもそも候補を見つけるのすら難しく、運の要素がかなり大きいです(運を引き寄せるために努力するのは絶対条件です)。
そのくせ求められるのは成果のみ。
成果をあげられなければ上司から罵倒されまくります。
惨めこの上ありません。

ただし協力者を作り上げた場合は正反対。
どんなに若かろうと、下にも置かない扱いをされます。
その意味では長所でもあります。

長所 ノンキャリア・パラダイスとまで呼ばれる好待遇

詳しくは次章以降のパンフ解説をお読み下さい。