公安調査庁パンフレット解説・官庁訪問対策 ~スパイになりたいあなたへ

この記事は約24分で読めます。

2015-07-29インテリジェンス・治安

平成26年度版 公安調査庁採用パンフレットの女性

公安調査庁は情報機関、業務内容はスパイです。
トップイラストは公安調査庁の平成26年度採用パンフレット
ネットで話題になりました。

ついにスパイまで萌えの時代に入ったか、目立ってはいけない存在のはずなのに。
みたいな感じで。

本記事では、元職員の私が本件採用パンフレットの内容について解説します。
公安調査庁を志望する人、単にスパイに興味のある人、謎の組織の実態が知りたい人。
いずれの需要にも応えさせていただきます。

もくじ

公安調査庁とは?

公共の安全を脅かす可能性がある団体等に対し調査をおこなう法務省の外局

もう少し具体的に言うと、二つの顔を持っています。
一つは情報機関。俗な表現を用いれば、いわゆる「スパイ」を業務内容としています。
一つは規制官庁。オウム真理教への立入検査は、報道でも目にするところでしょう。

何やらすごそうです。
しかし実のところ、霞ヶ関においては無名であり弱小です

でも、だからこその試み。
内部の職員からは、

「とにかく役所の名前を知ってもらう」

純粋にそれだけの理由で実施したものと伝え聞いています。

著者および本記事執筆の動機

本記事は、「公安調査庁・私の小説の読者・官庁訪問する方」という三つの対象を念頭において書いています。

公安調査庁

一時は身をおいた場所、愛着はそれなりにあります。
古巣が存在をアピールしようと頑張るなら、少しでもその応援になれば。
そう思って書きました。

国家にとって大事な仕事をしているはずなのに、名前すら知られていない。
友好国のCIAなんか、あんなに有名なのに。
日本だって警察庁や外務省ばっかり、公安調査庁の名前が出るときときたらオウムか不祥事だけ。
世の中、声の大きい者が勝つ。
公安調査庁の宣伝下手は在職中より頭抱えていた部分ですから。
この点において「とにかく名前を」という今回のパンフ戦略は正解じゃないかと思っています。

ただ、「それなり」にすぎません。
忠義は感じてませんし、ヨイショする義理もありません。
いいことも悪いことも織り交ぜ、書ける範囲で客観的に書かせていただきます。

私の小説の読者

現在の私はプロの小説家を目指す身。詳しくはこちらを。

私を応援してくれる読者の多くは、みんな公安調査庁なんて知らない人達。
そのため、作品世界観を深めるのに役立てていただこうと書いたものです。

官庁訪問を行う方

官庁訪問は真贋織り交ぜ様々な情報が飛び交い、精神がすり減ります。
匿名掲示板のスレなんて覗こうものなら、振り回されっぱなしになりかねません。
私のときでもどれだけ怪情報が乱れ飛んだことか。

本記事の内容は、私が内部で直接見聞したもの
あくまで私の在職時の話ではありますが、出所不明な情報よりは信頼できるものかと思います。
(退職してからかなりの年月経ちますが、聞いている限り大幅に変わっているということはなさそうです)

また上記記事で紹介されている拙作「キノコ煮込みに秘密のスパイスを  」(略称:キノスパ)は、公安調査庁について等身大の姿を描いています。
小説ですので全てが本当というわけではありませんが知る手掛かりにはなるはずです。

公安調査庁をオススメしない点・する点

まず「悪いこと」から述べます。
ただ必要があれば「いいこと」もあわせて書いています。

キャリアの場合

短所1 検事の植民地

公安調査庁は法務省の外局。

実際にトップに立つのは検事であり、いわゆる植民地官庁です。

他官庁みたいにキャリアが尊大に振る舞うことはできないし許されないものとお考え下さい。

当然、出世にも限界があります。
昨年までのプロパートップはナンバー3の総務部長Sさん。
しかしSさんはキャリアの中でもずば抜けた存在で、そもそも次長になることが目されていました。
(次長=他省庁の局長級)
そのSさんが退官した今、総務部長はしばらくプロパーに戻ってこないと噂されています。

ただし検事がいるのは、基本的に課長以上の限られたポスト。
ヒラから検事のいる本省に比べると存在を意識することはないです。

なお、法務省本省については、入国管理局を除き、やめた方がいいです。

キャリアと言えどもノンキャリア同然の扱い、友人の話を聞くと地獄です。

入国管理局は実質的に外務省であり、またプロパーの局長も出ています。
一人は特別優れたと評判の方でしたので例外かもと思ったのですが、その後も続いています。
その一方で競争がないので、仕事にさえ興味持てるなら割とおすすめだったりします。

短所2 ノンキャリアの力が強い

プロパー最高ポストとなる本庁調査第二部長に就くのは、キャリアではなくノンキャリア(2016年現在)。

それほどまでにノンキャリアの力が強い官庁です

これは上に検事がいることもさることながら、公安調査庁が一種の専門職集団であるため
公安調査庁の命は、敵組織に張り巡らせた協力者(=スパイ)網。
そして協力者を作り上げるのはノンキャリアの仕事。
「誰が公安調査庁を支えてると思ってるんだ?」と言われれば反論できませんから。

なお、キャリアで協力者獲得工作に成功したのは過去3人しかいません。
10年以上前の私が最後です(海外担当の調査第二部では唯一、その後も出ていないと聞いてます)。

短所3 天下りがない

何の利権もありませんので。
再就職先は自力で探します。
私の知っている例ですと大学教授とかですかね?

長所1 ある程度までの出世が他官庁より保証されている

出世のペースは他官庁より遅いものの、指定職までほぼ保証されています。

指定職とは審議官級(地方支局だと局長)以上のポスト。
安定という観点からいえば、指定職になれないとキャリアの意味はありません。
他官庁だと保証されているのは課長まで。その前に選別される可能性もあります。
定年まで勤めたキャリアで指定職になれなかったのは、私の知る限り一人だけです。
割り切れるなら、それなりにはキャリア気分を味わえます。

以前は「次長をもらえることはあっても総務部長をもらえることはない」と言われていました。
(総務部長が実質的にヒトとカネを握っているため)。
その総務部長が一旦ながらもキャリアの手に渡ったわけで。
昔は検事ポストだった関東局長も現在はプロパーポスト。
全ては本省(検事)の御機嫌一つという弱さはありますが、話を聞く限りだと風向き自体は決して悪くないと思います。

今から入庁する方なら、さほど悲観的になることもないかも知れません。

長所2 仕事が楽で、いい人が多い

キャリアが定時に退庁できる官庁は、霞ヶ関の中でも公安調査庁くらいではないでしょうか。
他官庁みたいに変な雑用で使われることも、残業に付き合わされることもありません。

また、誰もが指定職になれる一方で出世にも上限があることからキャリア間の競争がありません。
課長以上で本庁勤務を続けられるか地方回りをするかの選別は行われていますが、退職金の関係からいえば大差ありません。
(むしろ地方の方が検事いない分、気楽という人もいます)

加えて、もともと野心のない人が多いため、他官庁みたいにキャリア同士でギスギスすることもありません。
まったりほっこり働きたい方には向いていると思います。

ノンキャリアの場合

短所1 業務のメンタルに掛かる負担

まず、業務の厳しさが挙げられます。

人事院の調査によると、

公安調査庁職員の平均寿命は他官庁より10年短い。

とんでもない話ですが、本当です。
これにつき、人事課の職員は次の通り説明していました。

退職すると在職中にかかっていた強大なストレスから解放され、気が抜けてぽっくりいくのだろう

そのくらい精神的にきついです。

なお本庁に転勤できれば、この問題は発生しません
基本的にシンクタンクと変わらない仕事ですので。

聞いたところ、本庁も知った人が結構亡くなってました……。

短所2 厳しい成果主義

スパイなんて簡単に作れるものではありません。
そもそも候補を見つけるのすら難しく、運の要素がかなり大きいです(運を引き寄せるために努力するのは絶対条件です)。
そのくせ求められるのは成果のみ。
成果をあげられなければ上司から罵倒されまくります。
惨めこの上ありません。

ただし協力者を作り上げた場合は正反対。
どんなに若かろうと、下にも置かない扱いをされます。
その意味では長所でもあります。

長所 ノンキャリア・パラダイスとまで呼ばれる好待遇

詳しくは次項以降のパンフ解説をお読み下さい。

公安調査庁職員採用パンフレット解説

本ページでは職員採用パンフレットの内容につき、具体的な解説を行います。
パンフレットはこちら(平成27年度)。

(null)

p9 職場紹介 ~ある日のわたし~ person1(キャリア・本庁)

本庁の残業

本庁で強制残業はありません。

自分の仕事さえ終わっていれば帰れます、それどころか「帰れ」と怒られます。
ノンキャリアはもちろん、キャリアであってもです。
霞ヶ関でこんな官庁はありません。

これは個人主義が徹底しているため。

情報機関には「区分の原則」というのがあります。

区分の原則とは、他人の仕事を知ってはいけないし知ろうとしてもいけない原則。

この帰結として、自分の仕事は自分で片付けないといけませんし他人の仕事を手伝うこともありません。
もっともそれ以前に、多くの人が役所に人生捧げるような愛社精神なぞ持ち合わせていません。

キャリアにはなりたいけど過労死や自殺をしたくないという方。
仕事に人生捧げたくない、または趣味も存分に楽しみたい方。
これらの方にはオススメできる官庁です。

報告書チェック

一日はこれに始まりこれに終わると言っていいくらい。

何か事件が起きれば増えますし、そうでなければ減りますし。
その合間を見ながら分析書を作る感じになります。

目からウロコ

 出来上がった資料をこの道10年の上司に見てもらったところ「僕ならこう分析する」と言われる。

(パンフより抜粋)

 

いや、上司。出来上がる前に見てやれよ。
上席も資料を作る前に、根回しなり確認なりしなさいよ。
そうツッコミを入れたいところですが、おいときましょう。

この経験、私もしたことがあることは強調しておきます
その方はこの道20年でしたが、「この情報が、こんな風にピースになるの?」と驚かされました。

右からも左からもディスられ、実力を過小評価されがちな公安調査庁。
しかし少なくとも朝鮮関係の分析については、紛れもなくインテリジェンスと呼ぶに相応しい仕事をしています。

総論

本庁も現場次第なので、日によって仕事がまるで違います。
特に忙しい日や部署なら、全体としてのイメージはこんなものではないでしょうか。

p10 職場紹介 ~ある日のわたし~ person2(ノンキャリア・現場)

登庁時間

本庁と同じです。ただし出先に直行することもざらです。

報告

「もうちょい早く頼むわ」

(パンフより抜粋)

昨夕の連絡。朝報告したという状況からは、客(情報源)と連絡して直帰。
それで朝11時の決裁でこんな台詞言われたらブチ切れます(これが普通)。
本当に急ぎの情報なら朝8時には登庁して、上司が来たら即決裁に上げます。
ノンキャリアの主任でその判断つかない人はいません。

それ以前に、情報とってきた部下に対して、こんな無神経な事を言う上司もいません。
きつい仕事なのはわかってるので。
真っ先に出るのは「お疲れさん」という労いの言葉。
まずありえない光景です。
いったい誰が原稿書いたのか、非常に問い質したい。

いや……実際なくはありません。
その場合、当該上司は裏で「クズ」だの「本庁へのゴマスリ野郎」だの陰口を叩かれていることでしょう。

帰庁時間

現場職員にとって本庁の調査指示は何よりも優先されます
この日に関しては仕方ないでしょう。

総論

現場は基本定時、何もなければ残業はまずありません。
それどころかここだけの話、

割り切っちゃえばサボリ放題です。

しかし客と連絡する場合だけは事情が違います。
夜中や明け方までなんてザラ。
急ぎの情報なら完徹で出勤して始業すぐさま報告書提出。
極端な例だとそういう日もあったりします。

ただ急ぎの情報じゃなければ、暗黙の了解で午後出勤を許してもらえます。
体以上に心の壊れやすい仕事。
自分の管理は自分でやれ」と口を酸っぱくして言われます。

これは自己責任ではなく、文字通り「無理をするな」という意味。

自分のことは自分が一番わかるはずです。
上司達も明らかにわかるなら、休むように声を掛けてきます。
でも細かいところまで目を配れませんし、わかりませんので。

p11~12 チャンスがいっぱい

海外勤務のチャンスが豊富

外務省を除けば霞ヶ関随一です。

キャリアであればほぼ確実に在外公館へ出向します
ノンキャリアのポストも多いです。

ただし、

本人の希望や適性を考慮して決められます
(パンフより抜粋)

ノンキャリアはそうです。
適性の例でいうと、本庁で若くして北朝鮮分析に携われば高確率で韓国大使館に出向します。

が、キャリアは違います。
ワシントンを除いては人事ローテションで空いた人から行かされます。
どこに当たるかは運です。

語学力向上を積極サポート

書かれている通り。
特に現場ですと、パンフレットに書かれた内容以外にも、局長や所長の計らいで語学学校に通わせてもらえることがあります(あるいは学費補助)。

一方、人事院の制度については期待しないように。
選抜がかなり厳しいので。

現場調査ではあなたが主役!

ちょこっとホント、あとはウソです。

「あなたが主役」、これは本当です。
特に主任以上になれば、完全に自分で仕事を組み立て、自分で動きます。

しかし後の部分はウソです
研修面でも実務面でも調査を教えるという制度なんてありません。
OJTという名のもとに放置されます。

詳しくは拙作「キノコ煮込みに秘密のスパイスを 」をお読みください。
この辺りのことを問題点としてストーリーに組み込んでいますので。

一般職職員を幹部に積極登用!

事実……どころか、ノンキャリアの待遇は霞ヶ関随一と言っていいです。

確実に、という点であれば警察庁や内調の方が上です。
警察庁のノンキャリア(国家一般職組)は他省庁のキャリア並の待遇。
内調にしても、ほぼ全員が本省課長級まであがります。
(ただし内調は公安調査庁から多数の職員が移籍したため、現在は不明)

しかし、

公安調査庁の場合、その上の指定職まで出世するのもざらです。

パンフに書かれた地方局長どころか、2016年現在、調査第二部長としてプロパートップに上り詰めた例すらあります。ています。
現二部長は中国分析の専門家。
こちらの記事で紹介されています。

過去に二部長となったノンキャリアはもう一人います。
この方なくしては公安調査庁が動かなくなるとまで言われた北朝鮮分析の第一人者。

(インタビュー)北朝鮮と向き合う 元公安調査庁調査第2部長・坂井隆さん:朝日新聞デジタル

見た目通りの超真面目な堅物さんですけど、パスケースにこっそり綾波レイのカードを忍ばせてたりします。
実にギャップ萌えさせてくれる おっさん 好人物です。
研修所の風呂場では「風呂桶にNervみたくPSIAのロゴ入れたいねえ」と語り合っていました。
もし私が小説家デビューできることがあれば、その印税で寄贈したいと思います(笑)

また全般的にも、他官庁と比較して圧倒的に昇進が早いです。
これは級別定数に恵まれているため
言い換えれば、課長補佐級のポストが非常に多いのです。
(危険な仕事扱いのため優遇されている)
ノンキャリアでも出世を目指すなら、公安調査庁はおすすめです。

女性職員

二人とも実在の人物です(※平成26年度パンフ、27年度ではPerson4が差し替えられています)。

Person3にはかなりかわいがっていただきました。
甘やかしてくれるだけじゃなく、必要とあらば忠告や苦言もしてくれた方。
私にとって良き姉貴分という感じの先輩でした。
出向していた内調で評価されて、本庁でも今後主流を歩むのではないかという話。
真面目に頑張り続けてきた人だからこそ成功してほしいな、と思っています。

Person4は「多分この人かな?」という程度です。
いい人なのは間違いないのですが、経歴よく覚えていなくて……。

私が採用された頃のパンフですと職員は全員架空でした(書かれてる内容も架空)。
法務省本省職員用の入庁体験談すら、人事課と相談しながら大嘘でっちあげてました。
「そんな人事ルート、公安庁にないよね!」というものまで。
もちろん秘密保全の関係からですが……時代は変わったものです。

さて本題。

女性には絶対すすめません。

具体的には書きませんが、それくらいに職場環境が悪かったと思って下さい。

ただ現在は安倍政権の女性登用政策も相まって事情が変わってきた様で。
「これからは女性にもすすめられるんじゃない?」という話を聞いてます。
だったら回ってみる価値はあるかもしれません。
御自身の目で確認してください。

14P 休日や仕事の過ごし方

私生活に制限あるんでしょ?→夢を壊すのが忍びなくて……

本庁なら、ある程度までは一般人と変わりません。

でも当事者がそれを口にするのはどうなの?と。
もっと私生活を規制すべき、というのが私の意見です。

現場は……「困るのは自分だよ?」とだけ。
右翼担当と総務については本庁と同じです。身分隠す必要がないので。

15P 育児関連

その通りじゃないかなと。

もともと家庭面について、かなり配慮してくれる官庁。

この点では明らかにおすすめできます。
人数が少ない分アットホームであり、きめ細やかな人事が可能ですので。

16~17p 先輩からのメッセージ

基本、建前論と思って下さい。
特に

口下手、あがり症も関係ない。

半分ホントで半分ウソです。

こうした人材は大抵本庁か総務に回されます。
その意味では本当です。
しかし仮に現場へ配置された場合は地獄を見ます。

志望するなら人並程度のコミュ力必須

そのくらいにお考え下さい。
(なくても他のプラス材料があれば採用はされます)

P18~19 Q&A

どのような人物を求めていますか?

キャリア・ノンキャリアとも、形を設けていないのはその通りです。

あえて言うなら「普通の人」を求めています。

普通という枠の中で色んなタイプを採り、全体のバランスをとっています。

重視されるのはキャリア・ノンキャリアともにコミュ力

コミュ力というのは決して「饒舌」という意味ではありません。
朴訥で言葉少なながらも誠実な印象を与える。
これもまた一つのコミュ力、千差万別です。
自分の個性に合ったコミュ力を鍛え上げて下さい。

学歴については、こちらの記事を御参照ください。

学歴以外の採用における特記事項

キャリアの場合、年齢は若いほど有利です(霞ヶ関全般に言えます)
しかし公安調査庁は高年齢でも採ってくれます。
採ってくれるだけでなく、高年齢の入庁者に対して非常に優しい官庁。
課長までは入庁年次が優先しますが、それ以降は年齢の高い人ほど早く昇進します。
(最終的に指定職にさせるため)

親族に調査対象団体関係者がいる場合は入庁を諦めて下さい。
これはキャリア、ノンキャリア問わずです。

任用替え

パンフには書いていませんが、特記事項として記しておきます。
ノンキャリアが総合職試験に合格した場合、その時点でキャリアとして採用し直してくれます。
興味ある方は、こちらの記事へ。

昇進について

キャリアは概ねパンフ通り。
正確には8年目辺りで他官庁・大使館に出向させることで補佐級ポストをあてがうことが多いです(本省の目があるので、昇進を早めるには外に出すしかない)。

課長になるのは他官庁とほぼ同じくらいです。
私が入庁した頃は他官庁と同じくらい、数年後からかなり遅くなりました。
しかし他官庁も上のポストが詰まったせいで遅くなり、再び並ぶこととなりました。

定年まで働け、ほぼ指定職になれます。
これは、先に記した通りです。

ノンキャリアは、13PのPerson4(平成26年度パンフ)を見て下さい。
まさにその通りの昇進スピードです。
また関東局・近畿局が遅く、北海道局・東北局が早い傾向にあります。
(後者は本庁に出向する人が多く、局のポストが空く。そのため昇進が早くなる)

調査の危険

一切信用しないでください。
自分の身は自分で守って下さい。

ただ、殉職者はいません。

「KGBの二重スパイが発覚し、自殺を装って殺された」と言われている事件はあります。

しかし私の聞いている限りでは本当に自殺です。
理由は、

KGBからの二重スパイ報酬が断たれたことで、抱えていた借金が返済できなくなったから

周辺事情や他の根拠も聞いていますが割愛します。

というか、どうして今頃こんな大昔の事件が。
現役職員でも若手だと知らないと思います……。

なお、この事件のせいというわけではありませんが。

急な入り用ができた場合、お金を貸してくれます。

理由は聞かれませんし、人事でマイナスにされることもありません。
借金は敵につけこまれる弱みになりますので。
役所のために貸すのです。
事実、私も一回借りたことがあります。

返済は毎月の給料から天引き。
入庁してお金に困っても、サラ金には手を出さないように。
その前に総務へ駆け込んで下さい。

私生活の制限

パンフを言い換えれば「自分の身は自分で守れ」ということです。

研修

庁内の研修については語学研修と実務担当者研修以外、交流の場程度に考えて下さい。

語学研修は文字通り語学の勉強ですのできっちりやらされます。

実務担当者研修は現場で優秀な成績をあげた者が呼ばれる研修。
高度情報が開示され、各調査官に個別具体的な調査指示がなされます。
これに呼ばれれば、名実ともに一人前の調査官といえます。

庁外研修ですと、総務省の経済統計分析研修を募集していたりします(今は知らない)。
私はこれに参加しました。
あとは人事院絡みの研修、これは他省庁に準じます。

給与

書いてある通りです。

ただし公安調査庁には超過勤務手当の予算枠があまりありません。
そのため残業代はほとんど出ません。
本庁で8時間程度、局・事務所だと3時間程度。
みんな残業せずすぐさま帰るのは、この理由も大きいです。

面接対策

本項では面接対策について記します。
キャリアもノンキャリアも共通。
あまり堅苦しく構えず、気楽にお読み下さい。

INTELLIGENCE SKILLS CHALLENGE

公安調査庁が出しているゲーム。

実はこのゲームが公安調査庁の面接対策の鍵となります。

Mission1は、公安調査庁が求めている能力そのまま。面接でもこれらの点を重視しています。自分にあてはまった箇所を強調する形でPRを組み立てるといいです。
Mission2は、どうでもいいです。

志望動機

基本的に霞ヶ関全体が志望動機は重要視していません。

大事なのは「マイナス点」を喰らわないことです。

具体的には、できるだけ素朴な所から組み立てるといいでしょう。
例えば

ISILの処刑画像を見て痛ましいと思った
国民が二度とあんな目に遭わないように働きたいと思った

とかでいいです。

基本的に志望動機で突っ込まれることはありません。
ただ、常識的に反論がかえってきそうな部分は答えを用意しておくこと。
上の例なら「自己責任論ってあるよね?」とか。
もちろん話のタネになるような志望動機が思いつければベストです。

恐らく問われるであろう質問は、

どうして警察庁じゃなくて公安調査庁なの?

これも

警察庁はポリスで、公安調査庁はインテリジェンス

とか適当にもっともらしく答えられればいいです。
見ているのは内容ではなく答え方
下の段階であれば、いっそ「わからないので教えて下さい」と聞いちゃうのも手です。

注意すべき点として、極右的表現や発言は絶対に慎んで下さい。
現政権の路線を基準に賛否を考えるといいです。
ヘイトとされる差別的用語も当然ダメです。
社会常識の範囲でお考え下さい。

極右も公安調査庁の調査対象。
過度の保守思想は思想面に難ありとみなされます。
人事課曰く

むしろ左くらいでちょうどいい

入庁したら右傾化するからです。
特に分析では中立的・客観的な視点が必要ですから。

趣味・特技

趣味・特技は最重要項目です。

当たり障りなく一番会話をはずませやすい項目なので。
面接本ですと、うまく自己PRに繋げることがセオリーとされます。
もちろんそれでもいいのですが……。

面接官を楽しませることを第一に考えてください。

その方が上手くいくと思います。
面接官が見ているのは内容よりも会話能力の方ですので。
ウケを取れとかネタに走れという意味ではありませんので、念のため。

ただ、常識の範囲で考えて下さい。
基本ギャンブル類や軽薄に見られそうな物は避けて下さい。
どんなに柔らかく見えても、あくまで役所ですから。

業務内容についての知識は必要か?

ぶっちゃけて言えばゼロでも構いません。
私は採用時、中核や革マルという言葉すら知りませんでした。

下手に知っているよりは知らない方がマシです。
新聞報道程度の知識はあった方がいいと思いますが、それ以上は必要ありません。
市販の治安関連本に書いてそうなことをそのまま答えようものなら、間違いなくネチネチ突っ込まれます。
学生レベルで自然と持ち合わせた知識を噛み砕き、活きたものにできるかが鍵です。
もちろん市販本を参考にすること自体は構いません。
でも論点については自分の考え・自分の言葉で述べる様にしてください。

格好つける必要はありません。
知らないなら質問して職員から教えてもらう、これも面接をスムーズに進めるテクです。
話をどう聞き出すかが公安調査官のお仕事。
そして一般人は公安調査庁や調査対象のことを知らなくて当たり前なのですから。

やりたい仕事について

一部か二部か(さらにどの分野か)、分析か工作か。
特にやりたいことがある場合は正直に答えて下さい。

どう答えたところで有利に働くことはありません。
一方で、仮に採用された場合は後々まで影響します。
(人事はできる限り本人の希望を叶えようとするため)

その他

公安調査庁の人事は伝統的に志望者本位の採用活動を心掛けています。

一番大きな理由は「人に会う仕事だから」。
今回のパンフもそうですが、選ぶ側であると同時に選ばれる側であるという意識を常に持っています。
圧迫面接などはまずないはず。
学生がリラックスして自分を出せる様に配慮してくれます。

しかし一方でそれは罠でもあります。
見てない様で逐一観察してますし、話したことは覚えてます。
後の面接でそれについて聞かれることもあります。
くれぐれも気を抜かない様に。

拙作「こんな弟クンはほしくありませんか?」に記した採用関係の小ネタ

あくまで小説。
ホントの部分もウソの部分もあります。
信じるも信じないも御自由に。

ただし、ここの部分はホントであることを明言します。

「特にキャリアに限れば、人事はミリオタを嫌う。これは公安調査庁に限らず警察庁も防衛省も基本的なスタンスは一緒、いかにもミリオタが好みそうな官庁な」

人事課採用担当職員の言辞です。
ただし現実に警察庁や防衛省がそうした方針であるかについては、同官庁の職員でない以上わかりません。

「軍事知識とか役に立つんじゃないの?」

「立たないよ。専門的な知識が必要だったら防衛研究所に回すし、ハンパな知識は先入観につながるからむしろ使えない」

人事課採用担当職員の言辞です。

実際にはミリオタのキャリアも採用されています。
それどころか、極右としか思えない方もいます。

ただそれはまだ希望者の少なかった頃の話。
今の課長世代以下は、驚くほど普通の人達。
その点は心して下さい。

公安調査庁を志望するにあたっての、その他注意事項

本項目ではその他の注意事項を記します。
本記事は、志望者や興味ある方から多数のメールやコメントをいただいております。
その中で私が考えたことです。

御質問されるのは構いません。
話せる範囲とはなりますが、答えるのもやぶさかではありません。

ただ、一言だけ。

あまり考えすぎないように

不安点やわからないことは、率直に役所へ聞いてみる

まず不安という意味で考えすぎる場合

不安なのはわかります。
でも受ける前から考えすぎてもムダです。
ここに書かれていることも「天満川鈴」が言っていることにすぎないのですから。
特に身辺調査。
心配するよりも、身辺調査されても平気な生活を心掛けてください。

特に公安調査庁の人事はストレートに聞いても、基本的に大丈夫です。

わからないことは、私よりも役所に直接聞く方が確実です。
聞きづらい気持ちは理解できますけど、それができないなら公安調査官は務まりません。
情報を聞き出すのが仕事なのですから。
答えられないことは「答えられない」と返されるか、「さあ?」ととぼけてくれます。
もっと気楽に!

入る前から現実を考えすぎる必要は無い

期待という意味でも同じです。
「入ったらこうなのかなあ?」とか「ああなのかなあ?」とか。
夢を張り巡らせたくなる気持ちはわかります。

私もそうでした。
入庁前に同期のキャリアから勧められたのが麻生幾「情報、官邸に達せず」。

「公安調査庁って、思ったよりすごいところ?」、もうワクテカ状態で読みふけりました。
内定した後に読んでどうする、って感じですけど。

入庁後は、現実を見て色々と幻滅します。
でも夢見るのは志望者の特権、入るまでは存分に妄想しちゃってください。

なお本著は今だと内容が古くなっています。
それでも治安系官庁を目指すなら読んでいただきたい本です。

ちなみに、この本に出てくるイスラエルから情報を送り続けた人は、私の初めての上司。
詳しくはこちらの記事をお読みください。

採用されたいなら暴露本は読まないこと

最後に注意事項を記しておきます。
これはどこの官庁についても言えることです。

暴露本──特に悪意をもって書かれたものは、採用されたいなら読まないでください。

内定前ですと、要らぬ事を面接で口走ってしまう可能性があります。
入庁前ですと、真偽を確かめようがないので思い切り幻滅してしまいます。
入庁後ですと、いつの間にかゴシップ話は全部知っちゃってますから読むまでもありません。

まとめ

色々書きましたが、一言でまとめさせていただきます。

「気に入られれば勝ち!」

皆様の健闘を祈ります。

【注意 2017.7.7付記】問い合わせ・質問メールについて

官庁訪問その他にまつわる問い合わせ・質問は、原則としてコメント欄にお願い致します。
もしくは公安調査庁ないし人事院に直接お問い合わせください。
詳しくは、こちらのお知らせをお読みください。

 


Author:天満川 鈴

社会の底辺に住まうパチプロ、ADHD(精神障害3級)
元公安調査庁職員。
国家一種経済職→入庁。イスラム過激派などの国際テロ、北朝鮮を担当。
朝鮮総聯へのスパイ工作を描いた小説「キノコ煮込みに秘密のスパイスを は週刊誌で紹介され、さらに推理・歴史作家の鈴木輝一郎先生から「江戸川乱歩賞獲れた」と絶賛。素人の小説としては異例の反響を呼びました。
無料公開してますので是非読んでみてください!