任用替えは霞ヶ関のオトクな制度 ~でも公安調査庁志望の場合はキャリアの勤務内容を知ってからにしてください

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2016-11-30インテリジェンス・治安

世界各国を飛び回るビジネスマン

コメント欄に、こんな質問をいただきました。

初めまして。年次は伏せますが、将来、国家公務員試験受験予定のものです。
昔からの憧れで、どうしても公安庁のキャリア官僚になりたいんですが、総合職採用数は少なく、マッチングの問題から官庁訪問で確実に採用される、というのは難しいと聞きました。防衛省、厚労省等他の省庁も考えていますが、公安庁には任用替え制度があるというのをこのサイトで知りました。
これは国家一般職試験で、例えば東北公安調査局に採用になったとして、採用1年目の7月に総合職試験を再び最終合格した場合、いきなり東北から本庁へ移されて、翌年入省のキャリアとして扱われるということでしょうか。
もう一点、最初から任用替え前提で一般職で地方公安局の面接に行くのはよろしくないでしょうか。

長くなりましたが、教えて頂けると幸いです。

他記事でも書きましたが、聞かれて答えるのはやぶさかではありません。

というわけで、せこせこと回答を書いていたのですが、やたら長くなる。
だったら、いっそ記事にしてしまえと思い立った次第です。

任用替えについて

任用替えとは

ノンキャリアが総合職試験に合格した場合、キャリアとして採用し直してくれる制度のこと

公安調査庁(以下、公安庁)は、この制度を採用している数少ない官庁です。

あと、事務区分に限ります(各職の間に差はありません)。
今年から数学職での募集も始めたらしいですが、それはどうなのかわかりません。

任用替えを狙う前に ~公安調査庁キャリアの勤務内容

しかし任用替えの説明に入る前に、まず公安庁キャリアの勤務内容について記そうと思います。

どうしてか? それは、

なまじキャリアで採用されると、インテリジェンスに携わる機会が減るからです。

キャリアでわざわざ(弱小官庁の)公安庁に入りたいというくらい。
それは「インテリジェンスがやりたい」に他ならないでしょう。
(警察庁・防衛省・外務省の保険かもしれませんが、選択肢を広く持つことは大事です)

他官庁だと、ノンキャリアですらインテリジェンスに携われるとは限りません。

しかし公安庁であれば高確率でインテリジェンスに携われます。
例え総務に回されても、希望を続けていればその内調査部門に回してもらえます。

それはキャリアも同じ、しかしノンキャリアとは事情を少々異にします。
公安庁キャリアの人事ルートは、概ね次の形に分類されます。

総務畑・一部(国内)畑・二部(海外)畑

時の本庁総務部長ないし人事課長の方針で変動はありますが、大きな傾向は変わりません。

総務畑は、本当に総務ばかりの人事ルート。
総括課長補佐(いわゆる筆頭補佐)クラスになるまで調査部にほとんど行かない人もいます。

一部畑、二部畑は調査部を中心とする人事ルート。
と言っても、筆頭の調査第一部一課か調査第二部第一課が基本となります。
筆頭両課の業務内容は調査部門の総務に近く、分析業務はやりません。
評価を得た一定レベル以上の報告書は大量に見ますから気分は味わえますし、目も養われはしますが。

これは調査各部門で働くにあたって高度の専門性を要するため。
何十年も同じ部署で働いているノンキャリアに、ぽっと来たキャリアが敵うわけありません。
知識量もさることながら、情報への感覚がまるで違います。
筆頭課以外に行っても大抵は腰掛け同然、下から上がってくる報告書にハンコをつくだけとなります。
一部と比べれば、まだ二部は出る幕あるかなって感じですが。

あと、どのルートでもですが、キャリアは出向が多いです。
出向ポストは「どうしてこんなところに公安庁が行くの?」というのもあります。
現在なくなったポストだと、内閣府の男女共同参画局。
大使館でも「なんでやねん」とツッコミ入れたくなるポストが。
当然それだけインテリジェンスから離れます。
(最近は公安庁の業務に関係ないポストは返上する傾向にあると聞いてますが)

全体として、間接的にインテリジェンスに携わっていくという感じ。

真の意味で「調査部畑」を歩むキャリアは少ないです。

キャリアに要求されるのは分析能力でなくマネジメント能力。
キャリアシステムの問題ゆえ、ここで述べたことは現在でも変わらないはずです。
(幹部は当時、「このままじゃ公安庁知らないキャリアばかりになる」と危惧してました)

勤務内容からみた任用替えのメリット

以上の観点から見た場合、任用替えのキャリアにはメリットがあります。
それは、

調査部畑になりやすいこと。

ノンキャリアとして数年働いた場合は、その分野にある程度精通しているでしょう。
任用替えでキャリアになった場合、本庁でも担当していた部門にそのまま配属された例が多かったと思います。
その後も基本的に調査部中心のルートを歩んでます。

要は専門性を持てるかどうか。
それは任用替えだろうとそうでなかろうと同じ。
入る前に目指したい分野の本を読み漁ることは勧めませんが、入庁した後であれば推奨します。
気分や真似事でなく、本当に面白い仕事ができるかどうかは各人の努力次第。
どうか頑張って下さいませ。

公安庁の任用替えの状況

まず国家総合職試験に合格したら、本庁人事課に「任用替えしてほしい」と報告します。
そして、本庁人事課に赴き、面接を受けます(旅費は当然自腹です)。

と言っても殆ど形だけですが。

実際には人間性や受け答えを判断していますし、「本当は落としたい」という本音を聞いたりもしてます。
それでも私の知る限り、落ちた例はありません。落ちた例あるそうです。

任用替えの後は、他のストレートに入ったキャリアと全く同じです。
任用替えだからと不当に差別を受けることはありません。
私が公安庁で一、二の仲良い職員は任用替えですが、普通にキャリア同士って感覚でした。

採用1年目の7月に総合職試験を再び最終合格した場合、いきなり東北から本庁へ移されて

本庁への異動は、私の覚えている例だと10月。
ただ「10月がいいか翌年4月がいいか聞かれた」と本人から聞いた気がします(うろ覚えでごめんなさい)。

翌年入省のキャリアとして扱われるということでしょうか。

待遇は翌年4月に入庁したキャリアと同等、つまり1年目からのやり直しとなります。
ただしノンキャリアとしての勤続年数は号俸に反映されます(社会人採用と同じ扱い)。
仕事において新人扱いされることもありません。

また1年目からやり直しと言っても、最終ポストはノンキャリアとしての入庁年次のキャリアと同じになります。
これは公安庁が年齢に配慮した人事をしてくれるため。
定年間際で一気に昇進させてくれます。

最初から任用替え前提で一般職で地方公安局の面接に行くのはよろしくないでしょうか。

まず「行く」ことは自由です。
黙ってればいいだけの話ですので。

以降、場合わけして答えます

総合職に合格して、その上で一般職として面接に行った場合

自分から聞かなくとも、面接で人事から念を押されます。

今年の合格資格で、キャリアとしての採用はできないからね

それができるなら、総合職で全滅した人が公安庁に殺到しますので。

そして恐らく一般職としては採用されるでしょう。
総合職合格している人を落とす道理はありませんので。
頑張って、もう一度合格し直して下さい。

総合職落ちて、一般職として面接に行った場合

自ら口にしたらマイナスになるんじゃないですかね……。
「入った後、総合職に合格できなければ辞めます」とも受け取れますから。
(地方上級などを受け直して辞める人がいるので、その予備軍と見られかねない)
せめて一次は突破していてほしいところです。

他官庁の任用替え

任用替え

現在は知りません。
ただ私が霞ヶ関にいた頃ですと、多くの官庁が実施していませんでした。
普通に考えて当然でしょう。
キャリアとして五大官庁に採用してもらうより、ノンキャリアとして五大官庁に採用してもらう方が簡単なのは自明です。
そして総合職試験に合格すること自体は、そんなに難しくありません(こんなこと言っちゃうと顰蹙買うかもですが)。
だったらノンキャリアとして採用されて総合職を合格し直せばいいということになります。

そのため、こんな話を聞いたことがあります。

職員:国家一種(現:総合職)合格しました!
人事:おめでとう。じゃあ我が省は退職してね、キャリアになりたいのならさ

採用する気ゼロ。
噂話というより、霞ヶ関の常識といった感じです。

ただしやっていた官庁はあります。
間違いないのは防衛省。
某汚職事件で出てきた幹部が任用替えでした。
「へえ、防衛省もやってたんだ」という、本題と全く関係ないところに関心持ちつつニュースを眺めてました。
ただ、それこそ超のつく大昔の話ですので念のため。

まとめ

以上の説明の通り、任用替えはキャリアになることを諦めきれない方にとってオトクな制度です。
しかし本格的にインテリジェンスに携われるかは、任用替えであろうとなかろうと自分次第です。

最後に、もう一度。
現在も行っているかどうかは、皆様の方で御確認くださいませ。

皆様の幸運を祈ります。