記事リスト・SNS用のアイキャッチ画像は大阪城の桜。
本来なら満開の桜を愛でる時期ですが。
新型コロナウイルスでそうもいってられません。
早く騒動が収拾してほしいものです。
本記事では、公安調査庁(以下、公安庁)独自の昇進制度「グリーン」について説明します。
公安調査庁におけるノンキャリアの待遇はズバ抜けている
ところで、なぜ大阪城?
2020年度採用パンフレットの、以下の文章をお読みください。
天下統一を成し遂げた豊臣秀吉は、出自にとらわれず能力重視の人材登用を進めたとされています。
引用元:2020年度公安調査庁採用パンフレット
ここは前置きなのでどうでもいいのですが。
続く、以下の文章。
公安調査庁にも採用年次や採用試験の種別に関係なく、誰もが幹部職員を目指せる環境があります。これもまた、大きな魅力の一つです。
(引用:上記同)
キャリアとノンキャリアを隔てる地位上の壁は「指定職になれるか否か」。
指定職とは本省審議官級以上や地方支局の局長。
退職金も一気に増えます。
ざっくり言うと、
キャリアの場合は課長まで昇進が保障され、ほとんどが指定職になります。
指定職の数も限りがありますので、霞が関においてノンキャリアが就くことは希です。
(ただし前例はあちこちにあります)
しかし公安庁の場合、ノンキャリアでも指定職に就くのは割と普通です。
それどころかキャリアを含めたプロパートップになることもあります。
ノンキャリア厚遇の背景
これ程までにノンキャリアが厚遇される理由は三つあります。
公安庁の業務性
公安庁の業務はインテリジェンス。
非常に特殊な業務です。
現場のノンキャリア達によるスパイ工作がなければ情報は入ってきません。
しかも汚れ仕事そのものです。
それゆえ、
となってしまいます。
分析にしても同じ。
あちこちの部署を2~3年で異動していくキャリアが、入庁からその道一筋ウン十年のノンキャリアに敵うわけがありません。
となってしまいます。
いわゆる「ほならね理論」が全力でまかり通る。
それが公安庁という役所です。
キャリアが少なかったため
そもそも論として、昔はキャリアの数が少なかったんです。
そのため、
しかしそれでも足りないのでノンキャリアを登用する必要があったのです。
法務省という官庁の特殊体質
かつての行革でノンキャリアを登用せよという要請が全省庁に向けて下されました。
通常は「ノンキャリアを登用する」イコール「キャリアのポストが減る」だから、どの省庁も抵抗しました。
しかし法務省だけはすんなり受け容れました。
実は種明かしがありまして。
法務省の実質的なキャリアは検事・裁判官。
そのため、
私達は「法曹」であって「事務官」じゃない、つまり「キャリア」じゃないもんね~
詭弁もいいところですが。
グリーン制度とは?
公安庁にはノンキャリアの昇進システムが二つ存在します。
一つは「任用替え」。
ノンキャリアとして入庁した職員が国家総合職試験に合格した場合、キャリアとして採用し直してくれます。
他官庁においては、一見ありそうながら殆ど採用されていないシステムです。
詳しくはこちらを御覧ください。
もう一つは本記事でとりあげる「グリーン」。
パンフレットに従って説明します。
ただし私はキャリア。
ノンキャリア事情については実のところ疎いので、曖昧・不正確な部分もあるかもしれません。
公安調査庁では、勤務成績が特に優秀でマネジメント能力に優れたやる気のある職員を対象に、幹部要員として選抜し、幹部職員への登用に向けて計画的に育成・処遇する独自の制度を設けています。
(引用:上記同)
霞が関では試験区分による絶対的カースト制度がしかれています。
それゆえ、非常に珍しい制度。
まさに「独自」と呼ぶに相応しいです。
選抜は概ね入庁二〇年目くらい?
私の同期が一人グリーンになっているのですが、そのくらいの時期に選抜されていました。
ただ、たまたま同期がその時期だったというだけかもしれません。
現在、情報収集、情報分析等のスペシャリストの中から約200人の職員が選抜されています。
(引用:上記同)
ごめんなさい、本気でびっくりしました。
ここ、全くわかりません。
グリーンの中で競争とかあるのかな……。
選抜された職員は、将来の幹部職員として必要な高い見識と幅広い視野の涵養、企画立案や業務管理の能力等の向上を図るため、多様な職務経験や研修等を通じ、計画的に育成されています。
(引用:上記同)
その人を育てるための人事ローテーション組んでるの、はっきりわかるときがあるわよ
具体例を挙げましょう。
坂井隆元調査第二部長。
この人なくしては公安庁の朝鮮部門は動かないとまで言われた方。
やはりグリーンです。
公安庁を志望するなら、キャリア・ノンキャリア問わず読んでおいた方がいいです。
坂井さんは、私が入庁したときの研修所の教官でした(係長級として)。
次いで、2-3(朝鮮部門)に戻ります。
そのままストレートで管理官まで昇進するものと思われたのですが、東北局へ一旦出されました。
坂井さんって優しくて、いい人じゃあるんです。
私も仲良かったですし。
新世紀エヴァンゲリオン劇場版の試写券もらったりなどしてますし。
好きな職員の一人です。
ただ愚直すぎるくらい生真面目で接しづらい。
坂井さんに怒鳴られた人は数知れず。
人の上に立つのにそれはどうかということで、視野を広げてもらうため現場へ修行に行ってもらったわけです。
東北局から帰った後は、予定通り2-3管理官から調査第二部長のルートを歩みました。
こうした育成の過程において、特に能力・適性があると認められた職員を本庁の課長級ポストのほか、地方における現場調査の指揮官である公安調査局長や公安調査事務所長として登用しています。
(引用:上記同)
グリーンの由来
私は次のように聞いていました。
でも、新幹線にもグリーン車はあるわけで。
多分、会話の方が正解だと思います。
グリーン制度が生まれた理由は諸説あります。
私は「キャリアが少なかったから、それを埋めるため」と聞いています。
しかし友人と話したところ、
そういえば、そんな噂も聞いた気が。
ただ坂井さんの前にも本庁管理官(=課長)→事務所長→局長のルートを辿った人はいたわけで。
例えば、私が横浜事務所にいたときの所長がそうでした。
確かグリーンと呼ばれていたような。
どっちが本当かは謎です。
ただ言えるのは、公安庁ではずっと昔からノンキャリアを登用し続けています。
興味ありましたら、官庁訪問したとき聞いてみてください。
グリーンの昇進スピード
当庁独自の昇進制度により、驚くようなスピードで「情報を取る」立場から「情報マンを育てる」立場に。
(引用:上記同)
一旦選抜されたら、キャリアよりも昇進が速くなります。
(もちろん職員によりますが)
坂井さんが教官時代、キャリアの先輩でお世話になったNさんが2-1(当時は国際テロ部門)の総括課長補佐でした。
Nさんの方がかなり上のポストです。
最終的には二人とも2部長になるのですが。
Nさんは坂井さんの後でした(もちろん定年もNさんの方が後)。
Nさんの後に2部長になったKさんもやっぱりグリーン。
Nさん総括のときに、同じ2-1で係長級。
そこから一気に昇進しています。
おまけ グリーン以外のノンキャリアの待遇
なんといっても公安職ですので。
まとめ
実際問題として、出世に興味ある人がどれだけ公安庁に来るのかな?という気はします。
キャリア然り、ノンキャリア然り。
やはり業務内容に興味を惹かれて入庁する人が多いので。
ただ、
お給料は必要なだけあれば十分ですが、高ければ高いに越したことはないわけで。
ポストが上に行けば行くほどスケールの大きな仕事ができますし、自らの望むように仕事を進められます。
なお、「入るの簡単」は警察庁・内調比較ということで。
(この2つの官庁のノンキャリア採用はかなりの難易度だそうです)
コメント
鈴様
突然の書きこみでお許しください。
公安調査庁から検索してやってきました、しめじと申します。
30代後半のうつ病持の無職カスです。私も(勝手に)自分が発達障害のグレーゾーンと思っていて、ADHDを公表されている鈴さんに共感してしまいました。
小説「キノコ煮込みに秘密のスパイスを」一気読みしました。無職カスのくせにプライドだけが高い今の自分に非常に刺さって、自分を見直してまた頑張ろうと思えました。コラムの文章もとても洗練されていて、きっとご在職中は大変ご活躍だったのだろうと思っています。
大変すみませんがいくつか教えていただけないでしょうか?
最近、公安調査庁の中途採用が目に留まり、「面白そう、やってみたいな…」と軽率にも応募ボタンを押してしまいました…。しかしいくらなんでも軽率すぎたな…と反省しています。今までのキャリアは半導体製造装置関連のエンジニアなのですが、畑違いもいいところですよね?ぶっちゃけ辞退しようと思っています。(発達障害にありがちなきったなーい履歴書を送るのも気が引けますし、第一在職証明を集められない…。)鈴様が見てこられた中で公安調査庁の中途採用者ってどんな方だったですか?やはり何かしらの情報のプロが採用されるところですよね?
次回作楽しみにしています。
コメントありがとうございます。
中途採用者については、情報のプロというよりも当該国のプロですね。商社マンがイメージしやすいでしょう。
ただ、中途採用は書類選考があったはずですし、不適格と判断されればそこで落とされます。もし選考通れば、一般人が滅多に入れるオフィスじゃありませんし、物見遊山で行ってくる程度の感覚でいいのではないでしょうか。わざわざ自分から辞退する必要もないと思います。
あと、氷河期世代対策で公安庁も採用していたはず。そちらの方は全くの未経験でも大丈夫じゃないでしょうか?応募可能かどうかは無職になってからの年数によりますが。興味あるなら詳しくはお調べください。
厳しいことを申し上げますと、発達障害については診断を受けられた方がよいと思います(診断を受けた上で下りないのなら仕方ありませんが)。私はグレーゾーンの方については健常者と捉えておりますし共感もしません。見聞する限り、私と同じ目で見る当事者も多いと推察されます。
ただし、それだけではありません。ADHD傾向の発達障害であれば投薬によって症状を改善できます。診断もらって自立支援制度を利用すれば診察代・薬代ともに無料(広島市の場合)ですので、しめじ様自身のために受けられた方がいいと思います。
なお、私の直筆はとんでもなく字が汚いです。やっぱり汚い履歴書でしたし、公安庁でも「読める字で書け!」としょっちゅう怒られていたことは付言しておきます。