「わが朝鮮総連の罪と罰」(ISBN: 978-4167679415)は、元朝鮮総聯中央本部財政局副部長が朝鮮総聯の裏側を暴露した本です。
いえ、北朝鮮による「正真正銘の」対日工作を暴露した本と言い換えた方が適切かもしれません。
読んだ時は、驚愕しました。
こんな本が世に出される時代になったという意味でも。
著者はよく殺されずにすんでるなという意味でも。
とにかく生々しくて圧巻です。
私には本書に書かれていることが真実かどうか判断できません。
ただ自身の経験を踏まえると、真実だろうとは思います。
往々にして朝鮮人が書き手だと話を盛る傾向があるのですが、それも見受けられない。
聞き手が優れているのか、編集が優れているのか。
こと北朝鮮に限らず、ノンフィクション全体で見ても高水準にある書だと思います。
公安調査庁や警察庁が追っているのは「裏」の「学習組」
著者は朝鮮総聯の非公然組織「学習組」の真なるメンバー。
「真なる」と書いているのは、学習組には「表」と「裏」があるからです。
表の学習組は単なる勉強会。
ある程度仕事に通じた構成員が加盟を認められます。
世間で言われる学習組はこちらではありません。
裏の学習組は日本を害する非公然活動を行う組織。
本国の指揮下にあり、総聯内部ですら誰が属しているか知りません。
組員は極秘に伝えられる「マルスム」に従って行動します。
(マルスム=最高指導者からの御言葉。いわゆる作戦指示)
裏の学習組がどのような活動を行っているか、その一部は本書を御覧あれ。
古い話ながらも読み応えはものすごいです。
公安庁や警察が追っているのは、もちろん裏。
治安当局の求めている情報がどんなものか知る上で大いに参考となるでしょう。
表も追っていないわけじゃありませんが、あくまでも朝鮮総聯の組織活動として。
それ単体で何かの役に立つ情報ではありません。
一部に「学習組なんて誰でも入れる」と吹聴している総聯OBな方々もいらっしゃいます。
でも、それは表の方。
そうした言辞を見るたび、「総聯の力を矮小化して油断させるための情報工作?」などと訝ります。
これだけ情報がオープンになった今、裏の学習組の存在自体を知らないのはありえませんもの。
それどころか公安調査庁は国会答弁で次の通り述べています。
学習組は、朝鮮総聯とその傘下団体等の中に組織された、北朝鮮に絶対の忠誠を尽くす非公然組織であると認識している。
共著者、野村旗守氏について
共著の野村旗守氏は北朝鮮関係で名の知られたジャーナリスト。
本書の前に出した「北朝鮮送金疑惑解明・日朝秘密資金ルート」も、当時はかなりの話題になりました。
野村氏が週刊新潮などで公安調査庁を叩いているのは知っていますが、本記事はそれが主題ではないので触れないことにします。
まとめ
一般には暴露本と銘打たれていても、実際には大したことなかったりするのが世の常。
しかし本書は真なる「暴露本」。
もう古くなってはいますが必読とすら言っていいです。
そして、これ以外の総聯本は読む必要ありません。
肝となっている部分は本書からの引用ですので。
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