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公安調査庁における海外勤務について色々と語ってみる

きのここらむ
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公安調査庁(以下、公安庁)の採用パンフレットでは「自身を磨き、ワールドワイドに活躍」と海外勤務できることをアピールポイントとして掲げています。
就職を希望する側にとってもまた魅力の一つとなりうるでしょう。

本稿では公安庁の海外勤務および付随する語学研修について記します。
下記事から切り離し、加筆補正したものとなります。

公安調査庁パンフレット解説・官庁訪問対策 ~スパイになりたいあなたへ【2021年度版アップデート】
公安調査庁は情報機関、働く人はインテリジェンス・オフィサーと呼ばれるスパイです。同庁の採用パンフレットと官庁訪問対策を元職員が解説します。謎の実態を知りたい方、ちょっと立ち寄ってみませんか?

なお、私が退職して既に20年近く経っています。
大きくは変わってはいないと思いますが、私が聞いているだけでも在職当時とは色々と事情が異なっています。
正確なところは官庁訪問の際に確認してください。

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公安調査庁採用パンフレットにおける海外勤務についての記載

まずはお約束として、パンフレットの記載全体を引用します。
論を進める中で必要に応じて適宜説明します。

米を磨いて造られる日本酒は今、ワインやウイスキーと並び、世界中でその人気が高まっています。業務や研修を通じて語学力や情報センス、国際感覚を謄いた公安調査官もまた、世界を舞台に、諸外国の情報のプロフェッショナルと渡り合っているのです。
公安調査庁は、世界20か国以上の在外公館に2-3年のサイクルで職員を派遣しています。派遣された職員は、情報収集ー分析業務の経験を活かしつつ、外交官として我が国の重要施策の推進に貢献しています。
また、職員を海外に派遣し、諸外国の情報機関と情報交換するなど、海外の闘係機関との連携強化も行っており、学生時代に修得した語学力を活かして外国に凶わる仕事をしたいというあなたの思いを叶えるチャンスがあります。
公安調査庁では英語を始め、中国語、韓国語、ロシア語、アラビア語など様々な言語の語学研修を実施L、海外勤務だけでなく、現場調査や情報分析において語学力を活かして活蹴する職員を育成しています。

引用:2021年度公安調査庁採用パンフレット

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公安調査庁は在外公館で勤務する機会に恵まれている

公安庁は(恐らくですが)他官庁と比較して在外公館(大使館・領事館)へ出向する機会に恵まれています。
職員数の割に海外ポストが多いためです。

公安調査庁は、世界20か国以上の在外公館に2-3年のサイクルで職員を派遣しています。

20か国かどうかは知りませんけど、とにかく多い。
もっとなかったっけ?と思うくらいに。
任期は2~3年とありますが、基本3年です。

公安庁に在外公館ポストが多い理由は、

在外公館ポストしかもらえないためです

霞が関のしきたりとして、官庁における出向ポストはバーターでなされます。
A省があるポストをB省に渡す、B省はそれに応じたポストを渡す、といった感じです。

しかし公安庁は何もかもが機密のため、他官庁の人間を受け入れることができません。
従ってポストの交換ができません。
官邸を除くと、他官庁への出向ポストは極めて少ないです。

しかし在外公館についてはバーターでなくてもポストをもらうことができます。

一言で言うと「抱き合わせ」

人気ある国のポストをもらう代わりに、危険だったりして不人気な国のポストも受け入れるわけです。

前者はキャリア、後者はノンキャリアが基本的に行きます。

ノンキャリアに押しつけやがって!

と思われるかもしれませんし、その通りの面は確かにあります。
しかし公安調査官としての知識や経験が活かされるのも後者のポストとなります。
実務ではノンキャリアの方がキャリアより優りますので、単なるヒエラルキーの問題ではありません。

また、キャリアだからといって安全な国というわけでもありません。
たとえばNATO空爆下のユーゴスラビア(国名当時)へ行かされた人もいます。
かつてはシリアもキャリアポストでした(現在はノンキャリア)。
結構、情勢と運次第というところがあったりします。

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在外公館における勤務内容

パンフには次の通りあります。

情報収集ー分析業務の経験を活かしつつ

「活かしつつ」であって「活かしてる」じゃないから嘘じゃないよね

公安調査庁の出向者だからといってあんまり関係無いです。
ノンキャリアの場合は在外公館警備対策官(俗称:警備)で行くケースが多いですから「活かしつつ」と言えるかもですが、キャリアの場合はその他一般的な分野の担当することがほとんどです。
現地で本格的な諜報活動に携わることはありません。
せいぜいが赴任先の諜報機関と情報を交換するくらい。
言葉尻捕らえたようなツッコミではありますが念のため付しておきます。

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在外公館以外にも海外勤務の機会がある

公安庁の場合、在外公館以外にも海外勤務の機会があります。

また、職員を海外に派遣し、諸外国の情報機関と情報交換するなど、海外の関係機関との連携強化も行っており

海外情報機関への派遣については、出張で赴く場合と留学生として赴く場合があります

出張で赴くケースは、どこの組織でもあるありふれたものです。
相手が情報機関という点では特殊ですけど。

留学生として赴く場合は長期に渡り現地へ滞在します。
私の在職当時はドイツ(キャリア)とイスラエル(ノンキャリア)がありました。
ドイツは今もあるかわかりせんけど、イスラエルはあると思います(重要ポストなので)。

イスラエルについては、こちらをお読みください。

麻生幾氏の「評論」と裏側の「現実」の比較 ~公安調査庁における実例より
本記事では、ある事実が記し方などによって印象の変わる例を紹介します。 具体的には麻生幾氏の評論「情報、官邸に達せず」の一文につき、その裏側にある現実を説明します...

また、総合職(キャリア)と一般職(ノンキャリア)では当然ながら事情が異なります。
以下、場合分けして記します。

……と言いますか、ほとんどキャリアのことになります。
申し訳ありませんが、ノンキャリアの事情には疎いので。

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総合職(キャリア)の海外勤務にまつわる諸事情

キャリアのほとんどが在外公館勤務を経験する

キャリアだと、ほぼ一度は在外公館に出向するよ

恐らくですが、他官庁より確実に海外勤務できます。
外交官を一度やってみたいという方にはおすすめできます。

理由は、

幹部になるまでに最低2回は他省庁出向を経験しないといけない霞が関の取決めがあるためです

(今もあるのかは知りません)

一方で、先述した通り、公安庁には他官庁の出向先が多くありません。
出向先の多くが在外公館となるため必然的に行くことになるわけです。

公安調査庁から出向する国

公安庁から在外公館への出向が始まった黎明期は旧共産主義圏ばかりでした。
ロシアのあちこち、東ドイツ(後にドイツ)、チェコ、ユーゴ。
なんといっても冷戦時代。
いかにも公安庁が行きそうな国ばかりです。

ある国歌一種合格者の友人が人事院面接を受けたときのこと。
人事院面接の面接官は各省庁の人事課長なのですが……。

東欧が好きで旅行してるって言ったらやたら食いつかれちゃった
チェコの話とか特に
すんごいにこやかで腰低そうで優しげな人だった

それ、間違いなく、うちの人事課長……

チェコスロバキアへの赴任経験ありますので。

ただ、私が入庁した頃から徐々に増え始めました。
アメリカとかEUとかトルコとかブラジルとかミャンマーとか。
最近ですとサウジアラビアとか聞いてます。

希望した国に行ける?

行けないよ
人事ローテーションで空いた順に埋められるだけ

私の同期だとトルコとEUです。

例外はアメリカ。
ここだけはエースとしての活躍を期待されるキャリアがあてられます。

逆に言うと、

アメリカ以外、どこの国に行ったとしても人事上の処遇の差はないわ

むしろマイナー国の方が喜ばれるまであります。
在外勤務手当が割増しされて、お給料増えるので。
先輩や友人の話を聞いてると3年で2000万円くらいは貯金できる感じです。

海外赴任希望しないことはできる? 断れる?

人によっては逆に海外赴任したくない人もいるかもしれません。
少数派ですが、海外赴任していないキャリアもいます。
そもそも今の人事課長がそうですから、希望しないなら行かないですむかもしれません。

断れるかどうかは何とも言えないところです……

例えばあるキャリアの先輩。
当時の本庁2-2課長から、こんなこと言われました。

辞表を出すか、行くかを選べ

まあ行きましたけど。
いま表沙汰になったら、なかなかとんでもない台詞です。

ただ断れると言えば断れますし、断った人もいます。
恐らくですけど、断ったところで人事上の影響もないと思います。

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一般職(ノンキャリア)の海外勤務にまつわる諸事情

ノンキャリアの在外公館勤務については2つのルートがあります。
1つは(比較的若い内に)本庁の海外情報分析部門に配属された場合。
1つは希望して行く場合。

前者ですと、韓国・中国・ロシアの担当ならかなりの高確率で行きます。
もちろんそれぞれの担当国です。
専門家を育てるための過程として行かされます。

後者ですと、本庁・地方支局を問いません。
国はバラバラですが、抱き合わせの悪い方なので先進国はまずありません。
例えばアフガニスタンなどの政情不安だったり治安が悪かったりする国です。
希望している職員へ打診しますが、国際テロ部門にいると話を振られやすいかも?
行きたい人はいくらでもいるので断っても構いません。

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語学研修について

公安調査庁では英語を始め、中国語、韓国語、ロシア語、アラビア語など様々な言語の語学研修を実施し、海外勤務だけでなく、現場調査や情報分析において語学力を活かして活躍する職員を育成しています。

ここはまったくその通り。
語学学校に行かせるケースもあれば、本庁で研修を行うケースもあります。
庁として正式の制度以外にも、局で独自に行かせたり費用補助してくれたりするケースがあります。
独習したい方には総務課で英語の学習教材を貸しだしてくれます。

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以前に存在したCIA研修について

かつて公安庁ではCIAへ研修に行かせてました。
結構な大人数でアメリカへ行って、1か月だったかの長期にわたって。

だけど、今はないよ

「なくなったのは大人の事情」とだけ申し上げておきます。

ただCIA研修と行っても、諜報機関員を対象とするものではありません。
民間企業からも参加するインテリジェンス初歩のコースです。
(CIAで行う研修には色んなコースがある)

庁内ですら「税金使った観光旅行」と揶揄する人もいたくらい。
私も本音ではそう眺めていた一人ですので、個人的にはなくなってよかったと思っています。
選抜した少人数をガチのコースに行かせるならまだしもなんですけどね。

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まとめ

外交官になりたいわけじゃないけど、一度くらいは経験してみたいってあるよね?

そんな方には公安庁は間違いなく向いています

キノコ煮込みに秘密のスパイスを

OBによる公安調査庁のお仕事をリアルに描いたラブコメ&サスペンス。
小説家になろうでは総合ランキングに入ったことのないド底辺のネット小説です。
一方で、
・週刊誌に「日本のスノーデン」呼ばわりでYahoo!ニュースになり。
・偉い作家先生から「乱歩賞獲れたミステリ」と絶賛され。
・出版社では「これを世に出すのは危険」とお蔵入りにされ。
あれこれ曰く付きの小説、あなたも読んでみませんか?
お気に召しましたら拡散していただけると嬉しいです。

この記事を書いた人

広島市内のパチンコホール勤務。
3号機時代からのパチンカス。
ADHD、精神障害者手帳3級所持。
慶應義塾大学商学部卒、専攻はマーケティング(広告・宣伝)
国家一種試験経済職の資格で公安調査庁に入庁。
在職時は国際テロ、北朝鮮を担当。
「小説家になろう」の底辺作者。
WordPress記事は素人の備忘録です。

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