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情報取扱における「WHO」の重要性を、コロナ禍におけるトイレットペーパー不足デマを題材にして元インテリジェンス関係者が語ってみる

きのここらむ
この記事は約10分で読めます。

マスク不足で大勢がパニックした2020年3月。
今度はトイレットペーパーがドラッグストアやスーパーの陳列棚から消えました。
買えなくなるというデマが広がったためです。

その後、デマを拡散したとされる人物が晒されてネットリンチを受けました。
そして本日、米子医療生協がトイレットペーパーデマをめぐり、「投稿者の1人が当組合職員と判明しました」と謝罪しました。

実はこの状況、インテリジェンスの見地からすると、大いに問題があります。
本稿では、本件デマを題材にとして情報取扱における「WHO」の重要性を語ってみます。

私は名も無きパチンカスでありパチンコホールのヒラ店員。
しかしかつては政府機関・公安調査庁で情報収集・分析に携わっていました。
その立場から、なるべくわかりやすく伝わるように記せればと思います。

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トイレットペーパーのデマを流したとされる者へのネットリンチに対する検討

前置き

トイレットペーパーデマを流したとされる者がTwitterで晒されました。
私が流れてきたツイートを一瞥して思ったのは、

  • 「どうして信じるの?」
  • 「本当にこの人(がデマの起点)なの?」

この2点について説明します。

ツイートの内容とそれをめぐる詳しい状況については、以下の記事を御覧ください。
それ以外についても是非お読みいただきたい内容です。

「トイレットペーパー不足デマの発信元はこの人!」→というデマが流れて個人叩きに(篠原修司) - エキスパート - Yahoo!ニュース
「コロナウイルスの影響でトイレットペーパーが不足するというデマを流した人物はこの人だ!」として、ネット上で特定の個人を叩く状況が起きています。でも、それもデマな...

どうして信じるの?

情報を評価するのに大事な要素「WHO」

まず「どうして信じるの?」について。

インテリジェンスにおいて情報を評価するにあたり、大事なことの1つが「WHO」です

「WHO」は「どんな人が話したか」。
具体的には(本件の場合ですと)「情報を知りうる『身分』であるか」。

身分は「立場」などと言い換えても構いません。
本来なら「その人が嘘吐きであるか」など様々な属性を考慮しますが、ここでは割愛します。

例えば私がこんなことを吹聴したとしましょう。

北川景子がDAIGOと離婚するんだって!

誰か信じる人いますか?

「離婚する」というのは話者の予測ですから、根拠となる情報が必要です。
つきつめると「北川景子が離婚する」の評価は「離婚すると判断した根拠情報」の評価となります。

現実味のある根拠として挙げられるのは、例えばこんなところでしょう。

  • 北川景子さん本人から「離婚するつもりだ」と本人から直接、あるいは人伝の話として間接的に聞く。
  • 「夫婦生活がないの……」など離婚につながりそうな不満を漏らしていたことを直接・間接的に聞く
    (本人が見ることないでしょうが、こんな例にして申し訳ありません)。

いずれにしたところで、自身が直接北川景子さんと交流があるか、あるいは近しい人物と交流があるか。
さらにそんな話が聞けるくらいに深い関係であるかが必須条件です。

しかし私は北川景子さんの友人・知人でもなければ芸能関係者でもありません。
離婚の相談を受けた弁護士でもありません。
ただのパチンカスです。
情報入手の可能性がないのですから、ただの妄言なのは検証するまでもなく明らかでしょう。

「トイレットペーパーが不足する」という話を信じるに値する身分

ここで「トイレットペーパーが不足する」というのは、換言すると「経済」とりわけ「流通」にまつわる予測。
やはり根拠となる情報の評価が必要となります。

どんな人間からの情報であれば信じるに足るでしょうか?
抽象的な理論を並べるよりも具体的な話に落とした方がわかりやすいと思います。
ざっくり列挙してみましょう。

  • トイレットペーパーを作る製紙業界の企業関係者
  • 流通業界を司る経済産業省関係者
  • 国民生活・ライフスタイルを専門とするシンクタンク関係者やジャーナリスト
  • 関連した専門分野を有する国会議員

などなど。
直観的にわかるかと思います。

本件においてデマを流したとされる者の身分

A氏は判断の根拠として「製造元が中国であり、生産元が(略)生産をそもそもしてない」としています。
しかし、A氏のTwitterプロフィールを見る限り、前項のいずれの例(あるいは類似例)にも該当しないように見受けられます。
ただの凡百な一般人です。
これを根拠に「トイレットペーパーが不足する」と言ってみたところで信用に足るだけの立場も身分も持ち合わせていません。

つまり、

真偽を判断する以前に、耳を貸してはいけない情報です。

パチンカスな私が「北川景子が離婚する」と言うのと同じレベルで。

ここで仮に、根拠が一般論あるいは専門家の述べたものであるならば説得力を有する場合もあります。
論文やレポートを引っ張ってくるとか。
「『○○という論文やレポートがある』のを見た(読んだ)」という間接情報ですので。

言い換えますと、

A氏発の情報ではなく、専門家発の情報と同じです

A氏がねじ曲げて引用していない限り、今度は引用元の情報を確認して信憑性を問うことになります。
しかし本件にはそういった事情も見受けられません。

一般人が「トイレットペーパーが不足する」予測に説得力を与える根拠があるとするなら。
例えば「Twitterでオイルショックを思い出してトイレットペーパー不足を危惧する声が挙がり始めている」など、一般人でも直接見聞しうるものに限られるでしょう。
換言すると「情報入手が容易なもの」ということです。

WHOが軽視されがちな現況

もしかしたら、ここまで読んで「老害」と思われるかもしれません。
今は誰でも発信者になれる時代ですから。
マスメディアすらツイートを素材にしてニュースを作る昨今。
アナクロめいて聞こえるであろうことは承知しています。

しかし「誰でも発信者になれること」と「発信者の情報が真実であること」は別の問題。
そのことは理解していただけたらと思います。

本当にこの人(がデマの起点)なの?

次に「本当にこの人(がデマの起点)なの?」について。
ここで評価する情報は、「A氏がデマの起点」です。
なぜ「起点」を強調するか。
もしA氏のツイートからデマの拡散が始まったのでなければ、個人情報までばらまかれるネットリンチを受けるいわれはないでしょう。

そもそも論として、A氏の当該ツイートのリツイート数を考えると社会現象の「起点」と評するには無理があると思いますが……そこは置いときましょう。

Twitterを「ある特定の日よりも前」で条件検索する

A氏がデマの起点かどうかは、論理的に「A氏より前に『トイレットペーパーが不足する』とツイートした人間がいる」事実を摘示すれば足ります。

ですから調べてみましょう
誰でも簡単に調べられます

インテリジェンスにおいては「現認」と呼ばれる行為。
自分の目で直接見た事実が一番信じられる情報であるのは言うまでもないでしょう。

A氏のツイートは2月27日。
2月26日以前に同様のツイートが存在すればいいわけです。

というわけで、「2月26日より前」の条件をつけてTwitter検索をしてみます。
「ある特定の日より前」の条件は「until:2020-02-26」をつけます。
検索結果はこちら。

https://twitter.com/search?q=until%3A2020-02-26%E3%80%80%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%80%80%E4%B8%8D%E8%B6%B3&src=typed_query&f=live

A氏と同レベルのツイートはいくつか散見されます。
再掲しますが、先述した記事の通りです。

「トイレットペーパー不足デマの発信元はこの人!」→というデマが流れて個人叩きに(篠原修司) - エキスパート - Yahoo!ニュース
「コロナウイルスの影響でトイレットペーパーが不足するというデマを流した人物はこの人だ!」として、ネット上で特定の個人を叩く状況が起きています。でも、それもデマな...

「A氏がデマを流した1人には違いないから叩かれても仕方ない」とする主張について

起点云々の話は前項で終わりました。
Twitterを眺めていると、ちゃんと状況を把握していて「A氏が起点ではない」と説明する人もいます。

一方で「A氏もデマを流した一人であるに違いない」と言っている人もいます。
そうすればA氏叩きに正当性が与えられますから(あくまで「叩いてる人達にとって」ですが)
この反駁は妥当なのでしょうか?

ここで「どうして信じるの?」という話に戻ります。
もともと耳を貸してはいけないツイート。
それなのに「デマを流した」とするのはおかしいというのが私の考えです。

A氏のツイートは、言い換えれば「単なる一般人の意見の表明」にすぎません。
あえて悪意ある表現を使うなら「たわごと」です。
拡散希望と書かれているわけでもない。
「ちょっと意識高い系の知識人ぶった発言してみたかったぜ」程度ではないでしょうか?

加えましょう。
芸能人などのインフルエンサーであるならば発言に慎重であるべきです。

しかしA氏は、

拡散してもらいたくてもしてもらえない存在なんです……

まさしくチラ裏と呼ぶのが相応しい。
それを暴き出して攻撃する必要があるのか疑問です。

中には、

魔女狩りでもいい

とツイートしていた人もいました。
(あえてスクリーンショットは晒しませんが)
結局は、これがネットリンチしている人達の本音なのかもと思います。

おまけ 私が考える「デマ拡散の起点」

客観的に分析したわけじゃありません。
あくまで私の主観です。

先述したツイートの検索結果を眺めていて思ったことがあります。
こちらのニュースがきっかけなんじゃないでしょうか?

動画:トイレットペーパー不足のうわさ拡散、香港で買い占め騒動
【2月6日 AFP】香港で、新型コロナウイルス流行の影響でトイレットペーパーや米が不足するとのうわさがインターネット上で広まり、人々がスーパーマーケットに殺到し...

香港では現実にトイレットペーパー買い占めによる不足が生じている。
このニュースに対し「日本でも……」みたいなツイートは見かけました。
もしもの事態に備えて予め買っておくのは無理からぬこと。
オイルショックのトイレットペーパー騒動を体験している層なら尚更です。
誰が起点というより、自然発生的な防衛本能に基づく人間の摂理だったのかもしれません。

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トイレットペーパーデマで米子医療生協が謝罪した件に対する検討

「生協職員=A氏」であるかのツイート

トイレットペーパーデマが加速するなか、米子医療生協が「職員がデマを流した一人だった」として謝罪しました。

トイレットペーパーデマ「投稿者の1人が当組合職員と判明しました」米子医療生協が謝罪 - スポーツ報知
米子医療生活協同組合は3日、同組合の職員が「トイレットペーパーが品薄になる」というデマの投稿者の1人だったとして公式サイトで謝罪した。

米子医療生協のホームページはパンクしていました。
恐らくアクセス殺到したのでしょう。

謝罪そのものについては組織の判断すること。
私の口出しするところではありません。

問題は、この謝罪に対する反応です。

米子医療生協は、謝罪において、職員の個人情報を出していません。
それなのに「生協職員=A氏」であるかのツイートが流れています。

A氏のプロフィールには「米子」とあります。
そして件の団体も「米子」。
同一人物としたくなるのは道理でしょう。

同一人物と断じるには裏取りが必要

しかし、ここでインテリジェンスの見地から話をします。

もしこれが公安調査庁であれば「A氏=生協職員」であるかは、裏取りをする必要があります。
生協から個人情報を確認する、A氏に聞く、勤務先の記載された書類をどこかで確認する、など。
誰が見ても同じで間違いないと断じきれるだけの根拠が必要です。
こうした裏取り作業を「人定」と言います。

同一人物に見えても、人定が終わるまでは真実として扱ってはなりません

情報機関における基本です。
警察・検察などの捜査機関であっても同じでしょう。

「私は情報機関の人間じゃなく一般人だ!」
そうおっしゃられるかもしれません。
しかしそれくらい慎重でないと、仮に別人だった場合は刑事罰のリスクを負います。
そんなの御免被りませんか?
仮に真実だったとしても。
自らには何のメリットももたらさない行為なのですから。

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まとめ

もし「魔女狩りでも構わない」とまで思っていらっしゃるなら、私から申し上げる言葉はありません。
しかし、そうでないというなら。
少しでも耳を傾けていただけたら嬉しいです。

長々と書いてきましたが。
情報消費時代とも言われる昨今。
「間違うな」、「鵜呑みにするな」というのも無理でしょう。

私はある程度の信頼性のあるメディアの記事しか拡散しないことにしています。
しかしそれですら「しまった!」ということはあります。
ただのリツイートだと尚更で気軽に押しがち。
デマを真実と勘違いするのは、かつて情報を扱うプロだった私も同じです。
人間である以上、誰だってミスはします。

ただ、ツイートボタンを押す前に、RTボタンを押す前に。
一息おいてみませんか?
「この情報は本当に正しいのか」と。
そして確認してみませんか?
もし自分自身でソースを目にすることができるのなら。

そして「うっかり」も誰にでもあります。
「間違えた!」と気づいたら削除しましょう。
迷惑を掛けた相手がいるなら謝りましょう。
まだ取り返しのつく内に。

キノコ煮込みに秘密のスパイスを

OBによる公安調査庁のお仕事をリアルに描いたラブコメ&サスペンス。
小説家になろうでは総合ランキングに入ったことのないド底辺のネット小説です。
一方で、
・週刊誌に「日本のスノーデン」呼ばわりでYahoo!ニュースになり。
・偉い作家先生から「乱歩賞獲れたミステリ」と絶賛され。
・出版社では「これを世に出すのは危険」とお蔵入りにされ。
あれこれ曰く付きの小説、あなたも読んでみませんか?
お気に召しましたら拡散していただけると嬉しいです。

この記事を書いた人

広島市内のパチンコホール勤務。
3号機時代からのパチンカス。
ADHD、精神障害者手帳3級所持。
慶應義塾大学商学部卒、専攻はマーケティング(広告・宣伝)
国家一種試験経済職の資格で公安調査庁に入庁。
在職時は国際テロ、北朝鮮を担当。
「小説家になろう」の底辺作者。
WordPress記事は素人の備忘録です。

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