Pixivとcomicoにイラストや漫画の著作権侵害を通報したらどうなるか? 警察が捜査に動いたらどうなるか?

小説・創作
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無断転載などの著作権侵害に悩む漫画家さんやイラストレーターさんは決して少なくないと思います。
かような侵害をpixivcomicoで受けて運営に通報したらどうなるか。
さらに著作権者(=被害者)ではなく、警察が捜査に動いたら両サイトはどのような対応をとるか。
私の実体験を紹介します。
きっとクリエイターにとって参考になる記事と思います。

また本件は「小説家になろう」における作者と絵師のトラブルでもあります。
その意味においても参考になるでしょう。

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読む前に、ざっくり知っておきたい基礎的な法律知識

事件には「刑事」と「民事」がある

事件には、刑事事件と民事事件があります

刑事事件は、警察・検察が逮捕起訴して刑法上の罪を問うもの。
例えば、轢き逃げ事故で有罪・無罪を問うのは刑事事件です。

民事事件は、当事者が裁判所に訴えて損害賠償などの権利確定を求めるもの。
例えば、轢き逃げされた遺族が犯人に損害賠償を求めるのは民事事件です。

本稿で扱うのは刑事事件だよ

刑事事件において犯罪になるのはどんなとき?

では、刑事事件において犯罪になるのはどんなときでしょうか?
法律用語では「構成要件に該当したとき」です。

解答者の写真
ある行為が犯罪になるかは、当該行為が刑法上の条文にあてはまるかどうかによって決します。
これを「構成要件に該当する」と言います。
構成要件には主観的構成要件(=故意)と客観的構成要件があります

故意は、罪を行う意思があったこと。
本件であれば、私の著作権を害するのがわかっていたかどうかです。
法律を知らないのは理由になりません。

第三八条
3 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

客観的構成要件は、やったことが刑法に抵触すること。
本件であれば、著作権を侵害した行為そのものです。

私の事案における構成要件該当性

私のケースにおいて、客観的構成要件は充たしていました。
換言すると、

解答者の写真
外形上は明らかに著作権侵害の成立するケースでした

これについては著作権情報センター、警察、検察の全てが認めています。
警察・検察に被害届・告訴するには、一般的には客観的構成要件に該当していれば足ります。

故意は犯人の頭の中の問題だから他人にわからないもんね

アマチュアの創作物であっても著作権がある

本件事案において問題になったのは、

私の小説を原作とする漫画とイラストの無断利用

私はプロではありません。
アマチュアの作品であっても著作権はありますし、著作権法違反が成立します。

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事案

事案を簡単に説明すると、次の通りとなります。

  1. イラストレーターAは私とコンビを組み、「小説家になろう」にアップしていた私の小説を原作として、漫画・イラストを描いていた。
  2. 私とAはコンビを解消した。
  3. 2の際、私とAとは、漫画・イラストにつき、次の取決めをした。
    ①Aのクライアントへのポートフォリオ提出用途に限定し、今後も利用許諾を与える。
    ②comicoで連載していた漫画の最終回を掲載するまで、同サイト掲載の利用許諾を与える。
    ③それ以外の公開した漫画・イラストは速やかに削除する。
  4. コンビ解消の後、私はAから執拗な嫌がらせを受け、警察へ通報した。
    Aは警察から警告が与えられたにもかかわらず、嫌がらせ行為を止めなかった。
  5. 私は4を理由とし、3における利用許諾を取り消した。
  6. Aは、5及び法定除外要件がないにもかかわらず、pixivとcomicoで漫画とイラストの利用を続けた(=削除しなかった)。
  7. PixivとcomicoのアカウントはAのものであり、私はパスワードを知らなかった。
    (=Aが漫画とイラストの管理支配権を排他的に有していた)
  8. 私は、Pixiv・comicoの両運営に削除要請をし、警察に通報し、最終的に検察へ告訴した。

5、6、7をもってAの著作権法違反が成立します。
構造としては「キャンディ・キャンディ事件」と同じです。

キャンディ・キャンディ事件(最高裁平成13年10月25日第一小法廷判決)
著作権に関連する裁判の判例である「キャンディ・キャンディ事件(最高裁平成13年10月25日第一小法廷判決)」をテーマに、著作権専門の弁護士がわかりやすく解説します。著作権法や著作物・版権などに関するこ...

著者がイラストレーターにブチ切れた理由は4の嫌がらせだよ

何が悲しくて自分のキャラを嫌がらせしてくる絵師に使わせないといけないんですか。
これだけで私の気持ちは御理解いただけるものと思います。

運営に求める処分は「作品の削除」ですが、無断転載と同様にお考えいただいて結構です。

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私個人の通報に対する両運営の反応

Pixiv

無断転載におけるpixivへの通報はこちらから行います。

次の画面が開きます。

「著作権に違反している」をクリックして送信します。
詳しい詳細については、自らに著作権がある事実、無断転載の事実(利用許諾を与えていない、法定除外要件がない)などを記します。
(告訴状における告訴事実と同じです)

しかし通報するだけ無駄です。
というのは、

pixiv運営は通報を無視します

私は二回にわたり通報しましたが、運営からは一切の反応がありませんでした。

pixivふざけんな!

comico

pixivと全く対照的な反応を見せたのがcomicoでした。

comicoはこちらから通報します。

https://www.comico.jp/inquiry/entry.nhn

プルダウンメニューから「迷惑行為・規約違反の報告」(「その他」でもいいと思います)に著作権侵害の事実と削除申立ての意向を伝えます。

comicoからはすぐに返答が来ました。

確認に動きます

他の件で問い合わせしたときも感じたのですが、かなり法務部がしっかりしているように思います。
母体のハンゲームにおいて著作権絡みのトラブルが色々あったから懲りたのかもしれませんが、comicoサポートは全般に優秀です。

ただ、私はここで一旦申立てを取り下げました。

なんで被害者の私が手間かけて削除手続を進めないといけないの?
Aが削除するのが筋ってものじゃない?

それに、

もうかなりの嫌がらせを受けているし、司直の手に委ねないと気が済まない!
そこまでしないと、無断で使われている私のキャラ達に申し訳が立たない!

そう考えてAの告訴に動きます。

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警察の捜査に対する両方の運営の対応

著作権法違反はややこしくて所轄署はあてにならないし信頼もできない。
というわけで、広島県警本部へ直接相談しました。
(何かのツテではなく、一般市民としての普通の電話相談です。その上で担当部署へ回されました)
担当の課長補佐はとてもいい人でした。
私の法的構成に誤りがないことを認めてくれ、所轄署へ話を下ろしてくれました。

しかしこうした根回しにもかかわらず、所轄署では担当の刑事が告訴を受理すまいとゴネます。
刑事、私とAのチャットログを読んで、

この人、頭が……アレな人じゃないですか

統合失調症を疑ってしまいました。
もし本当に統合失調症だと、冒頭に述べた「故意」を裁判所に否定される可能性があります。
捜査したのが水泡に帰すので警察は立件嫌がるんです。

散々やりあった結果、刑事とは次の通り話がまとまりました。

・捜査して事実確認の上で著作権法違反容疑が認められるなら、警察がAに対して削除警告を出す。
・もしAが警告に従わなければ告訴を受理する(その時点でAの逮捕に動く)。

警告を行うのは、本来は私の役目。
「故意(=主観的構成要件)をはっきりさせるには警告した方がいい」というのが刑事の主張でした。

じゃあ警告します

やめてください!
警告なんてされたら本当に「事件」になってしまうじゃないですか!

どっちですか!
私は「事件」にしようとして警察に来てるんでしょうが!

刑事の台詞は「私からの警告であれば、Aは無視する」ことがわかりきっているからです。
一方、私が警告するのを承諾したのも同じ理由。
どうせ無視されるんですから、告訴する前に一手間増えるだけです。

散々揉めた末、

例え刺し違えてでもAは社会的に潰します

この私の台詞に、刑事も折れました。

警察が警告します

「警察の警告までも無視するなら、もはや統合失調症だろうと何だろうと立件できますので」と。

その代わり、

警察からの警告をAが受け入れてくれたら、引き下がってください

ふざけるな!
だったら私が警告します!
それでも故意を立証するには十分でしょうが!

あなたのやるべきことはAへの復讐じゃなくて、一刻も早くプロデビューすることです
元キャリア官僚で、アマチュアなのに小説がマスコミ報道されて、お偉い先生から絶賛されて
私から見たらありえませんよ
せっかく恵まれてるんですから、早く未来へ進みましょう

綺麗事を……しかも上げて上げて宥めるってかい……

(マスコミ報道云々は以下のページにまとめています)

キノコ煮込みに秘密のスパイスを
作品情報 あらすじ 流川弥生は情報機関公安調査庁に勤務するスパイ。 その敵は某国とその在日組織、隠語で「マルセ」(北朝鮮と朝鮮総聯を示す隠語)と呼ばれている。 弥生は前途有望な職員だったが、上司と対立...

でも刑事の言い分は正論、しかたないか。

わかりました
Aが自らの手で削除するなら折れましょう

だいたいAは嫌がらせについて、既に警察からの警告を無視しています。
もしかしたら今回も無視しそう。
だったら結局は逮捕になる可能性大きいですし。

……というわけで、警察が捜査に動きました。

Pixiv

しかしPixivはとんでもないことをしでかしてくれました。

刑事による捜査が始まってすぐ、イラストのURLに表示されるメッセージが次のものに変わりました。

該当ユーザーのアカウントは停止されています

いわゆるアカウント停止、事実上の強制削除と同じです。
どのような効果を生むかは以下のページを御参照ください。

アカウント停止
アカウント停止とは、運営元規定の規約違反行為を繰り返すと、そのうち受ける各種アカウント機能の停止処分である。

刑事さん、Pixivに何を言ったんですか?

刑事は呆然。

まだ見込みの段階ですので、事情を説明してAのイラスト利用状況を確認しただけですよ……

つまり、

なんて勝手なことしてくれるのか。

アカウント凍結を言い換えると、運営がイラストを強制的に非公開にするものです。
警察はAの逮捕に向けて容疑を固めている最中。
それなのにそんなことされたら、警察は可罰性がなくなったという理由で逮捕しづらくなる。

いわばpixiv運営はAの犯罪を揉み消したと同じです。

私の申立てで動かないなら警察からの問い合わせでも動くなよ!

しかも警察は運営に削除要請したのではない、問い合わせしたにすぎないのですから。
(世間には誤解されがちですが、警察にイラストを削除させる権限なんてありません)

逆に、これはAからすると不当な権利侵害にあたりかねません。
仮に著作権侵害が認められなかったら、Pixiv運営はAから訴訟を提起されても文句の言えないところ。
その意味でも迂闊な行為です。

comico

一方のcomicoはさすが。
刑事からは次の通り伝えられていました。

ハンゲームとはサイバー犯罪が頻繁に起こる関係でパイプがあるので、スムーズに話が進むと思います

その言葉通り、警察とcomicoで今後の方針についてすぐに話がまとまりました。

・立件の目処が立ち次第、警察がAに削除警告を出してcomicoサポートへ連絡させる。
・comicoサポートは連絡を受け取ったらAに削除手順を教える。

数日経ったおかげで私も頭が冷え、刑事の提案を承諾しました。

Aと手が切れるならそれでいいです

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警察の警告の結果、どうなったか

「ところが」と言うべきか、「やはり」と言うべきか。

著作権法違反の容疑が確認できたのでAに警告したのですが……拒否されました
それどころか「弁護士を立てて争う」と言ってきました……

バカじゃないんですか?
刑事と民事をごちゃまぜにしてるし

「お好きにどうぞ」と答えましたけど……
明らかに罪が成立するから警察が警告してるのに……
彼女、本当に頭がお○しいとしか思えません……

なら仕方ないですね
相当期限と考えうる一週間ほど待ってから告訴状を提出しにいきます

そして一週間が経過。

告訴状出しに行きたいのですが

お願いです! 待ってください!
もう一度!
もう一度、警告させてください!

なんだかな……。
刑事から折り返し電話。

Aは警告に従いました
キャンディ♥キャンディ事件の判例も知ってました
どうやら本当に弁護士に相談に行って説明されたようです

あらまあ

では、約束通り、これで告訴はしないでいただけますね

数日が経過。

Aがcomicoに連絡して削除手続を終えました

ありがとうございます
本当にお世話になりました

いえいえ
ただ「削除したら、私に連絡するように」と伝えてあったのですが、無視されてしまいました……

まさにあてつけ。
いったいどこまで……。

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戦いは終わらない、そして続く

しかも話はこれで終わりませんでした。

嫌がらせに対して私が提起した民事訴訟。
先方から送られてきた陳述書。

天満川鈴は警察を利用して私に嫌がらせをした。
損害賠償を請求する

……は? 警察を利用して?

私が元キャリア官僚だから、そのコネか圧力かなんかで警察を私兵として動かしたってこと?

私って、どこの上級国民?
刑事さんは刑事さんで激怒。

上等です! 訴えてくるならくればいい!
警察は受けて立ちます!

むしろ、Aを護ろうと動いてたのにね……。

以降は、本稿のテーマから離れますので別の機会にて。
もし続きを読みたいリクエストございましたら、そう書いてTwitterで拡散してください。

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まとめ

Pixivの「運営仕事しろ」タグに納得してしまう一件でした。
削除だけでいいのでしたら、自分で交渉するのではなく警察に通報する方が早いです。
著作権侵害は違法の外形な明らかな分、どんな形であるかはともかく動いてくれますので。

そしてcomicoは本当に見直しました。
あの悪名高いハンゲームの系列とはとても思えない。
是非是非これからも頑張ってください。

天満川鈴
この記事を書いた人

慶應義塾大学商学部卒
1997年公安調査庁にキャリアとして入庁
在職時は国際テロ、北朝鮮を担当
特に現場(スパイ工作)で実績を挙げ庁内表彰を受ける
2004年介護のため退官。

ADHD、精神障害者手帳3級所持。

WordPress記事は素人の備忘録です。

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