「めがねお~」万引き犯人画像公開問題は何がいけないのか ~マスコミは名誉毀損が「親告罪」であることを忘れてないか?

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2017-02-13社会・時事

本記事は、万引き被害を受けた店舗が犯人写真の画像を公開することに関する私見を述べたものです。
私は法律の専門家じゃありません、その旨を御承知いただいた上でお読みいただければと思います。
また本記事をめぐって生じた事態につき何らの責任を負いません、自己の責任において御判断ください。

「めがねお~」万引犯人画像公開とは?

簡単には、次のような事件です。

眼鏡販売店「めがねお~」が20数万円の商品を万引(窃盗)された。
防犯カメラは商品がなくなる現場、犯人と思しき人物を捉えていた。
眼鏡買取り店に同じ商品が持ち込まれた。

  • 買取店に持ち込まれた日付と犯行日は同じだった。
  • 持ち込んだ人物はカメラに映っていたのと同じだった。

モザイクをかけた上で、ネットに以下の通告文を掲載

画像・映像をモザイクなしでSNS、youtubeで拡散させてもらいます。(中略)絶対に逃しません。返却も購入することも今なら出来ます(同社HPより引用)

詳しい経緯は、同社HPと産経新聞記事にて。

マスコミ・ネットにおける主張

賛成の立場

私は記事のタイトル通り賛成の立場。
ツイートを眺めていても、概ね賛同する人が多いように思います。

相手が全面的かつ一方的に悪い。
状況からみて犯人に間違いない。
店舗にとって21万円という額は深刻。

やられて、やり返して何が悪いんですか?
しかも店は「モザイクをかけ」、「3/1まで」と猶予を設定していますし。

さらに日本テレビの「スッキリ!!」によると、店主は警察から次の通り言われたそうです。

監視カメラは、商品がなくなる現場しか撮影していない。
店を出るまでを撮影したわけじゃないから、立件は難しい。

こんなの言われれば絶望しますよ。
だったら自分で解決するしかないって思いますよ。

被害者にしてみれば、こう言われたも同然ですもの。

立件が難しい=捜査する気が無い

どんな事件でも、個人の持ちうる証拠だけで立証できない方が普通。
足りない証拠を埋めるため、警察には捜査権が認められているのですから。
被害者にしてみれば「今後も資料を揃える気が無い」と言われたようなものですもの。

もちろん警察としては一般論として語っただけのことでしょう。
でも、まず発せられるのはこれじゃないか。

解答者の写真
立件できるように頑張ります!
 

犯罪被害者がどんな思いで警察に駆け込み、すがりついてるか、わかっているのか。
この一言があったなら、被害者店主も警察に任せたままだったんじゃないかなあと思います。

否定の立場

一言でまとめると、これにつきます。

被害者にも人権がある。

「ふざけるな!」と思うかもしれませんが、これは絶対正義と言いうるものです。

それゆえ、公開した場合、次の問題が生じます。

①私刑にあたる
②犯罪にあたる

「私刑にあたる」に対する反論

私はこう言いたい。

解答者の写真
私刑されるような行為する方が悪いと思います
 

万引はれっきとした刑法上の窃盗罪(刑法235条)です。
刑法もまた絶対正義、それを破ったことに対する非難はないんですか?
今回の件を私刑と批判する方は、万引が犯罪であるという視点が抜け落ちているように思います。

もちろん、これはケースバイケースです。

一つには冤罪の場合があります。
でも本件では、なくなったのを同じ品を同じ人物が買取り店へ売りに来ている。
状況的にはほぼ間違いなく犯人でしょう。
どこに庇う余地があるのか。
遠慮無くやればいいと思います。

一つには相当性の問題があります。
具体的に被害額をいくら超えたら公開が許されるかは議論があるでしょう。
私としては21万円という額は公開に相当すると思います。
中小企業にしてみれば大損害。
1回の万引における被害額としては結構な高額ですし。

犯人を公開する行為は何が悪いの?

刑法は自救行為を禁じている

から、犯人を公開する(そして自力で盗品を取り戻す)行為は「悪い」とされます。

自救行為とは、司法を介さず自らの手で侵害を回復すること。
例えば指輪を盗まれたとして、たまたま見つけたので盗んで取り戻した。これは自分が窃盗罪で捕まります。

この前提に立つと、本件公開行為は名誉毀損罪と脅迫罪に該当する可能性があります。
詳しくはこちらの記事が、実によくまとまっています。

「犯罪にあたる」に対する反論

起訴されなければ犯罪じゃない

ここで名誉毀損罪と脅迫罪にあたるとして、本件公開行為を批判する理由になるか。
私は否と考えます。

まず名誉毀損罪
これは親告罪、つまり、

万引き犯人が「名誉毀損だ!」と警察or検察に告訴しない限り罪となりません。

万引きして、晒されて、逆に店主を訴える。
こんなことしたら、どれだけ炎上します?
告訴が非難されるのはもちろん、同時に自らの犯罪(窃盗罪)も拡散することになります。
よほど開き直った人じゃないと告訴なんてしないでしょう。

あと230条の2によって免責される可能性はあります
名誉毀損の免責要件は公共性、真実性、公益性。
犯罪事実にかかわることですので公共性はみたされる。
真実性もみたされる。
公益性がどうかといったところです

公益性はマスコミじゃないと認められづらいという実情があります。
また、この点からすると、感情的に煽った文章はマイナスです。
もっぱら公益を図ることのみから出た行為でなくとも主たる目的が公益を図ることにあれば認められます。
しかし私の印象として、本件公開が犯人に攻撃する趣旨から出ているものとして読めてしまうのは否めないので。

次いで脅迫罪
こちらは親告罪ではないので、逮捕・送検のおそれはあります。

しかし、警察も検察も世論を気にします。
もし脅迫罪として逮捕したら世論から非難囂々なのはわかってるでしょう。
しかも万引きを助長するとすら受け取られかねません。
仮に送検したとしても、検察は情状酌量の余地があるとして起訴猶予にするのがオチだと思います。

もっとも脅迫罪による立件可能性を踏まえると、文言は変えた方がいいのかなと思います。
脅迫になるのは

「画像・映像をモザイクなしでSNS、youtubeで拡散させてもらいます」

という部分。

「○月○日までに返して下さい」

だけでいいと思います。
これは民事上の催告にあたります(先方は不法に占有を行っているので)。
従って脅迫・強要とはされません。
そして返さなければ何かするであろうことは、普通の人なら察しつきますので。

根本的な原因:動きたがらない警察

そもそも賛否両論出るのがおかしいんです。
本来なら「警察に任せるべき」という否定一択のはずです。

解答者の写真
みんな警察を信用してないから賛成するんです。
 

店主だって警察を信用してないから本件公開に及んでいる。
賛成の意見がこんなに大きいことを、警察はもっと真摯に受け止めるべきです。

警察は大きい事件、マスコミに騒がれた事件、立証が簡単な事件じゃないと動きたがりません。
(換言すれば点数の稼ぎやすい事件)
個人が被害届出しても、何のかんのと理由つけて受け取ろうとしません。
被害届受け取っても放置します。

いい例がこちらです。

この事件では出したはずの告訴状すら改竄されてなかったことにされています。
極端な例ではありますが、ストーカーなどで警察に相談行くと本当にわかります。
警察がどれくらい触りたくないと思っているか、よくわかりますから。

まとめ

私は法曹ではありません。
本記事はあくまで一般人の私的な見解であり内容に責任を持つものではありません。

ただ恐らくですが、弁護士に相談すれば普通この程度まで踏み込みます。

名誉毀損罪にはあてはまるが、親告罪なので告訴される可能性は少ない
脅迫罪にあてはまる、起訴される見込みは(高いor低い)

そこまで突っ込まず、ただ「犯罪になるおそれがあります」と述べるだけに止めるのは、マスコミが公平の体裁をとって犯人の人権を強調したいからです。

本来ならそれで正論です。
でも問題の背景には「信頼されていない警察」があります
公的な抑止力たる警察が機能していないから、被害者は刑法で禁じられる自力救済へ動くんです。
第三者にしても、警察を信頼しているなら「警察に任せるべき」という声一色になるはずでしょう。
その点を無視して犯人の人権を強調するような報道を行うのは決して公平ではない。
特に「名誉毀損罪」の成立可能性しか報じていないメディアは、現実には万引き犯が告訴する見込みは低いわけですから印象操作扱いされても仕方ないのではないでしょうか。

警察も信頼されていない現状を真摯に受け止めるべきと思います。
一方で忙しいのも間違いない。
人手足りないのが根本のさらに根本の問題。
もっと犯罪に対して人員を割けるよう定員を増やすべきだとは思います。
上から目線だの何だのはおいといて、現場の刑事さん達が頑張ってるのは事実。
それでも追いつかないのが実情なのですから。

2017/2/13 23:53追記

犯人らしき人物が逮捕された模様です。

眼鏡店万引き容疑で逮捕の男 公開画像との関連も捜査へ | NHKニュース(リンク切れ)

もし同一人物であれば、別の眼鏡店で万引きしたのを逮捕されたとのことです。
その場合は、めがねお~様の犯人見つかって本当によかった。

そして、思います。
公開されてもなお犯行繰り返す人間の人権に配慮する必要なんてありますかね?