キャリア官僚になったアタシ。。。でも、挫折しました(>_<)―24歳女子が見た官僚と刑務所の世界【書評】

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2017-07-23書評

「キャリア官僚になったアタシ。。。でも、挫折しました(>_<)―24歳女子が見た官僚と刑務所の世界」(ISBN-13: 978-4844135616)は、文字通り、24歳女子がキャリア官僚になって5か月で辞めてしまうまでの経緯を記した本です。

結論から先に言います。

「これはひどい」

私がこの本を読んだのは「法務省矯正局キャリア」という点。
(ただし事務系でなく技官、ここはかなり重要です)

私は元公安調査庁(公安庁)キャリア、同時に法務省キャリアでもあります。
(公安庁は法務省の外局ですので。良くも悪くも本省とは一線を画してますが)
当然、技官にも友人がいます。
だからどんなこと書いてあるのかなあと。

私が以下に記す評は手厳しいです。
もし本著が普通に書かれた本だったら、きっと書評そのものを記さなかったでしょう。
しかし表紙からは、はっきり「釣り」を狙ってるのが明らか。
批判は承知の上なはずですので。

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文体について

えーと……これ、著者が書いた元の文章を誰かがリライトしたのではないでしょうか?
前半と後半が別人と思うほど文章が違います。
前半部分の筆致は、一言「痛い」。
一方で、法務省入省後の部分は割と固めの筆致で記されています。
素で書き分けているのなら、それはもう皮肉ではなく才能だと思います。

前半部分は文章のみならず、中身も痛い。

世の中ミラクルって起きるんです。
だって私4か月で受かっちゃったんですもん。
うわぁイヤみぃって思われること覚悟でいいますと、ほんとにそんなんでよく受かったね!って感じの受験生でした。

大学入学したてのホヤホヤ新入生なら、まだこういう慇懃無礼な自慢する人もいますが。
大卒や大学院修了の24歳女子が書く文章とは思えません。
どんなに崩して書こうと、もっと知性を感じます。

こんな調子で第6章まで続きます。
合格前から研修終了までで四分の三って構成はどうなのでしょうか?
(確かに読み所は、後述するとおり、この箇所なのですが)

この本、いったい誰をターゲットに書いたのでしょう?
帯には「公務員をめざす人必読」とありますが全くそうは思えない。
かと言って一般人には需要ゼロな気がしますし。

わけがわからないよ!

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もうQB師匠ばりに叫ばせていただきます。

著者について

まず技官女子は、キャリアと言っても、世間一般基準で「普通」の子が多いです。
「普通」というのは「官僚くさくない」というプラスの意味で用いています。
法務省の人間科学系の技官キャリア女子も、私の知る人は全員そう。
幹部候補生というより単に専門職として就職する感覚が強いからでしょう。

だったら変に誇張せず「普通」に書けば、それだけでセールスポイントになるはずなんですけどね。
同著は狙いすぎて「痛い」です。
知人・友人の技官女子が同著を読んだら、きっと激怒すると思います。
「一緒にするな!」とか「何をイメージ下げてくれてるんだ!」とか。

ただ狙って書いているものに目くじら立てても仕方ありません。
著者と出版社の思うツボです。

問題なのは、真面目に書かれている7章以降を見ても「普通」とは言いがたいところ。
著者は矯正局幹部との面談で次のように言われています。

矯正の世界に入るということは、犯罪者と向き合うことになるのは当然だろう。犯罪が起きるにはそれなりの理由がある。ちょっと考えれば分かるのに、どうして衝撃を受けているのか分からない。入省する前に分かっていたことだろ?

衝撃を受けているのが分からないとまでは言いません。
予め想定していても、越えてしまうことは多々あります。

でも衝撃を受けることもまた予想の範疇にあるべき。
その点において理解できないのは、私もまた矯正局幹部と同じ感覚です。
もしかしたらこれが現在の24歳女子(当時)の「普通」なのかも知れませんが。

著者が5か月で辞めたことは正解だと思います。
勤め続けたところで、この先何かが変わるとも思えませんので。
仕事が続かないと定評あるADHD(発達障害)の私すら呆れるというのは、なかなかにすごいものがあります。

内容の誤り

本文のエッセイ部分は本人の主観に負うものが大きいので構いませんが、知識を提供するミニコラムは正しく書いて欲しいところ。

例えば、

局別採用なので矯正局に採用になったらずっと矯正局です。民事局や刑事局に行くことはほぼありません。

矯正局から刑事局に行く人事はあります(私の友人がそうでした)。
「ほぼありません」という程ではありません。
研修除いて3~4か月しか役所にいなかったわけですから、仕方ありませんが。

同著の読みどころ

官庁訪問の部分です。
特に技官の場合は情報が少なく、イメージも湧きづらいでしょう。
仮に漫画化したら楽しく読めそうな話です。

次に、入省するまでの内定者交流と初任者研修。
婚活&合コンラッシュが軽く書かれてますが、まあそんな感じ。
技官の場合、私の周囲はみんな彼氏がいたのでピンと来ないものがありますが。

初任者研修の部分は割と詳しく書かれています。
総合職に内定の決まった人が入省前の暇潰し程度に参考として読むにはいいかもしれません。
ただし著者の主観が相当に強いです(そこが売りの本だとは思うのですが)。

まとめ

珍しい本なのは間違いありません。
どのように読むとしても木戸銭払う価値はあると思います。
ただしあくまでも自己責任、私は一切責任持ちませんので悪しからず。


Author:天満川 鈴

社会の底辺に住まうパチンカス、ADHD(精神障害3級)
元公安調査庁職員。
国家一種経済職→入庁。イスラム過激派などの国際テロ、北朝鮮を担当。
朝鮮総聯へのスパイ工作を描いた小説「キノコ煮込みに秘密のスパイスを は週刊誌で紹介され、さらに推理・歴史作家の鈴木輝一郎先生から「江戸川乱歩賞獲れた」と絶賛。素人の小説としては異例の反響を呼びました。
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