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毎日新聞の防衛省システム不備報道を見て西山事件を思い出した

雑記
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毎日新聞、AERA(朝日新聞出版)、日経クロステック(日経BP社)の3社が報じた、防衛省・自衛隊のワクチン大規模接種東京センター予約システム欠陥問題。
昨日からTwitterのTLを賑わせています。

三社の報道については、こちらのリンクを御覧ください。

大規模接種ウェブ予約 架空の数字で登録可 券番号も、年齢も | 毎日新聞
東京23区と大阪市の住民を対象に17日始まった新型コロナウイルスワクチンの高齢者向け大規模集団接種のウェブ予約で、実際の接種券に記載されていない架空の数字を入力...
【独自】「誰でも何度でも予約可能」ワクチン大規模接種東京センターの予約システムに重大欠陥 | AERA dot. (アエラドット)
菅義偉首相の肝いりで5月24日、東京都千代田区大手町に開設予定の新型コロナウイルスワクチン大規模接種センター。
大規模接種予約サイトが架空番号でも予約可能に、対象期間外に予約できる不具合も
防衛省が2021年5月17日に開設した新型コロナウイルスワクチンの大規模接種会場向けの予約サイトが、「0000000000」といった架空の接種券番号で予約を受け...

岸防衛大臣は「極めて悪質な行為」と激怒。

さらに安倍元首相は「愉快犯」とツイート。

防衛省は毎日新聞社・朝日新聞出版社の両社へ抗議文を送付しました。

架空情報で入力取材 防衛省が朝日新聞出版と毎日新聞に抗議…両社は「現時点でコメントしない」「公益性高い」:東京新聞 TOKYO Web
岸信夫防衛相は18日の記者会見で、自衛隊が運営する高齢者向け新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターに関し、架空情報を使っての予...

これらの動きに対して各方面から反発が巻き起こり、ネット界隈はなかなかにカオスな状況です。

そんな中、私は「毎日新聞」の名前を見て「西山事件」を思い出しました。
そこで私は法曹ではありませんが、本件と同事件の関係について調べてみました。

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西山事件(外務省機密漏洩事件)とは?

西山事件は、またの名を外務省機密漏洩事件と言います。
ざっくり言うと、

毎日新聞の西山記者が肉体関係によって女性外務省職員に国家機密を盗み出させた事件

具体的な事実関係につき、最高裁判決から引用します。
(最高裁判決は京都産業大学サイト掲載のものをお借りします)

昭和46年5月18日頃、従前それほど親交のあつたわけでもなく、また愛情を寄せていたものでない前記甲野をはじめて誘つて一夕の酒食を共にしたうえ、かなり強引に同女と肉体関係をもち、さらに、同月22日原判示「ホテル山王」に誘つて再び肉体関係をもつた直後に、前記のように秘密文書の持出しを依頼して懇願し、同女の一応の受諾を得、さらに、電話でその決断を促し、その後も同女との関係を継続して、同女が被告人との右関係のため、その依頼を拒み難い心理状態になつたのに乗じ、以後十数回にわたり秘密文書の持出しをさせていたもので、本件そそのかし行為もその一環としてなされたものである

さらに、

もはや取材の必要がなくなり、同月28日被告人が渡米して8月上旬帰国した後は、同女に対する態度を急変して他人行儀となり、同女との関係も立消えとなり、

しかも関係切ったにとどまらない。

被告人は、本件第1034号電信文案については、その情報源が外務省内部の特定の者にあることが容易に判明するようなその写を国会議員に交付していることなどが認められる。

交付された国会議員は政府を追及。
政府批判の世論が盛り上がるなか、西山記者と女性は国家公務員法違反で逮捕されました。

Wikipediaからの引用です。

毎日新聞はこの時点で両者の関係を把握していたとされる。

(中略)

西山の逮捕を受けた社会部会において「西山記者の逮捕は言論の自由に対する国家権力の不当な介入だ。断固として反権力キャンペーンを展開すべきだ」との意見が大勢を占め、慎重論は押し切られることとなった。このようにして毎日新聞は西山逮捕後から大規模な「知る権利キャンペーン」を展開した。

しかし週刊新潮が先述の事実関係をスクープ報道。
世論の矛先は政府から毎日新聞へ動きます。
毎日新聞は謝罪したものの経営の窮地に陥り、新旧分離方式での再建をやむなくされました。

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本件報道と西山事件の共通点

両方とも公益性の認められる報道事実

本件報道と西山事件における沖縄変換をめぐる日米の密約。
両方とも公益性の認められる報道事実であることです。

沖縄返還をめぐる日米の密約については述べるまでもないでしょう。
本件はどうか。

毎日新聞自らが経緯を説明した記事には「公益性あると判断」とあります。
防衛相、架空入力に抗議 本社「公益性あると判断」 | 毎日新聞
岸信夫防衛相は18日午前の記者会見で、大規模接種センターのインターネット予約をめぐる毎日新聞と朝日新聞出版のニュースサイト「アエラドット」の報道の取材手法につい...

この点において、私は認めます。

本件については異論のある方もおありと思います。
しかし政府のシステムが杜撰だったこと自体は明らかに問題があります。
家中の鍵を開けて窓も扉も開けっ放しにしたような常識を疑うレベル。
ましてやセキュリティ完壁でなければならないはずの防衛省・自衛隊です。

少なくとも私は、この事実について政府を庇う気は毛頭ありません。
政府が批判・批判されるべき事実であるのは間違いないと考えます。
毎日新聞の主張通りでしょう。

また、毎日新聞の報道においては、次のようにも述べています。

同省人事教育局の担当者は「入力する人の善意に頼ったシンプルな予約システム。いたずらで予約されては本来必要な人の予約が取れず、ワクチン接種ができなくなる。絶対にやめてほしい」と呼び掛けている。

引用:毎日新聞「大規模接種ウェブ予約 架空の数字で登録可 券番号も、年齢も」(リンクは前掲)

いたずら防止への配慮もなされていると言えます。
実効的であるかはともかく、触れてすらいないAERAの記事よりよほどマシです。

両方とも情報入手手段に刑罰法令に触れる行為にあたるおそれ

問題なのは、

両方とも情報入手手段に刑罰法令に触れる行為にあたるおそれがあります。

換言すると、次の争点が生じます。

報道の自由においては違法行為も許されるのか

この点につき、西山事件最高裁判決は次の通り述べています。

報道機関の国政に関する取材行為は、国家秘密の探知という点で公務員の守秘義務と対立拮抗するものであり、時としては誘導・唆誘的性質を伴うものであるから、報道機関が取材の目的で公務員に対し秘密を漏示するようにそそのかしたからといつて、そのことだけで、直ちに当該行為の違法性が推定されるものと解するのは相当ではなく、報道機関が公務員に対し根気強く執拗に説得ないし要請を続けることは、それが真に報道の目的からでたものであり、その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、実質的に違法性を欠き正当な業務行為というべきである。しかしながら、報道機関といえども、取材に関し他人の権利・自由を不当に侵害することのできる特権を有するものでないことはいうまでもなく、取材の手段・方法が贈賄、脅迫、強要等の一般の刑罰法令に触れる行為を伴う場合は勿論、その手段・方法が一般の刑罰法令に触れないものであつても、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躪する等法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認することのできない態様のものである場合にも、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びるものといわなければならない。

有罪の判断がくだっている通りです。

本件も業務妨害罪成立の可能性を弁護士が指摘しています。

時事ドットコム

反対意見も記されていますのでどうぞ。

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本件報道と西山事件の違い

おそれはおそれにすぎない

ここで「毎日新聞は西山事件を忘れていなかった」と締めれば気持ち良い記事になるでしょう。
私もそう締めた方が拡散されると思うのですが、残念ながら違います。

西山事件は誰が見ても不道徳と言いうる行為です。
一方当事者の女性も否認せず西山記者を追い込んだくらい。
有罪にされて当たり前でしょう。

一方で、本件は誰の目から見ても違法といえるかというと違うと思います。

私の見解

以降は法的素人の個人的見解ですが。

行為の外形としては、

虚偽の情報をもってシステムを誤作動させ予約した

少なくとも電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)の構成要件に該当するように見えます。
つまり傍から見れば不正に見えるということです。

しかし刑法には正当業務行為という概念があります。
違法行為が常に犯罪となるわけではありません。
例えばボクシングの試合。
ボクサーがリングで相手を殴り殺しても殺人罪に問われません。

つまり、

今回の不正に予約をとったことは正当業務行為として違法性を阻却しうるのか。

そういう話になるのではないでしょうか?
すぐに消したことやいたずら抑止の注意併記は、その評価として用いられるのではないでしょうか?
報道においては裏を取らなければならない以上、これら事情を踏まえると、必ずしも法秩序に反するものとまでは言い切れないと考えます。

現時点においては毎日新聞側の主張も理がある。
これが私の結論です。
(他2社については、ここでは検討してないのでノーコメントにします)

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毎日新聞が批判されるのも、また当然

ただ、正当業務行為いかんは、私を含めて一般人の判断できるものではありません。
裁判所の判断することです。

外形的には不正行為に見えます。
架空予約は7万件中2件しかなかったとはいえ、業務を妨害する危険性はあったわけです。
危険性の大小はともかく公益を害する可能性があったこと自体は認めるべきでしょう。

本件をこんな風に思ってる人は多いんじゃないでしょうか?

鍵も扉も全開の家があって「空き巣に入られるよ」と家主に注意したけど無視された。
そこで実際に空き巣に入って財布を盗んだ。
あとで家主に「ほら、空き巣に入られたでしょ」と財布を返した。

正当業務行為と認められなければ、上例と同じ論理をとりえます。
毎日新聞社が批判されるのもまた当然と考えます。

一般人のみならず同じマスコミですら。
FNNは朝日・毎日を批判している通りです。

朝日と毎日は妨害愉快犯? 記者のワクチン不正予約は悪質行為なのか、それとも公益性が高いのか|FNNプライムオンライン
朝日新聞出版の「AERA dot.」と毎日新聞の記者がワクチンの不正予約をしたとして、岸信夫防衛相は「本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い...

結局のところ、素人の範疇であればどちらの見解もとりえます。
ですからTwitter上では意見が割れて燃えあがるわけです。

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それはそれ、これはこれ

ここからは毎日新聞・AERA双方への見解となります。

西山事件との共通点で示しましたが、本件の論点は二つあります。
報道内容の公益性と取材行為の正当性です。

両者の関係は完全補完・完全排他な関係ではにありません。

完全補完:Aが真ならBは真 →両方揃ってしか真になりえない
完全排他:Aが真ならBは偽 →どちらか一方しか真になりえない

一言でいえば「それはそれ、これはこれ」です。

取材行為の正当性はその態様をもって判断されます。
いくら公益性を叫んだところで、情報入手手段が悪質なら違法になりえます。
逆に公益性もまた情報入手手段いかんによって左右されません。

「防衛省の逆ギレ」という声もありますが、怒って当然でしょう。
擁護派・批判派、どっちの論理も通るのですから。
論点のすり替えではありません。

両方とも論じられなければならない問題なんです。

それなのにレッテル貼りして政府攻撃に掛かるのはどうなのか。
先程の例えで言えば「空き巣に入ってやったんだから感謝しろ」と同じなのに。
私には毎日新聞・AERAの擁護派が報道の自由をかさにきた上から目線に見えてしまいます。

安倍元総理や岸大臣の「極めて悪質」はどうなんだ?
言葉尻を捉えて騒ぐのは、かえって政府側の思うツボじゃないでしょうか。
問題の本質から目を逸らすことができますから。

野卑な人間達と罵ってみたところで、支持してる側にしてみれば、だからどうしたとしか思いません。
そうではなく、マスコミには殴られたら本当に痛い部分を殴り続けてほしいところです。

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まとめ

文中でも述べましたが、システムの欠陥については一切擁護するつもりありません。
マスコミはとことんまで政府を攻撃すればいいです。

しかし架空予約をとった件については別。
正直なところ、仮に正当な取材行為として認められるにしても。
イリーガルな手段で情報を入手したという思いが拭えません。
防衛省にはしっかり事件化に向けて動いてほしいところです。

どうぞ政府とマスコミでとことんまで殴り合ってください。
その意味において私は両者を応援します。
文中で述べてきた通り、それぞれの論点においてそれぞれを応援するのは矛盾しませんので。

この記事を書いた人

広島市内のパチンコホール勤務。
3号機時代からのパチンカス。
ADHD、精神障害者手帳3級所持。
慶應義塾大学商学部卒、専攻はマーケティング(広告・宣伝)
国家一種試験経済職の資格で公安調査庁に入庁。
在職時は国際テロ、北朝鮮を担当。
「小説家になろう」の底辺作者。
WordPress記事は素人の備忘録です。

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