皆様は鍋料理と来たら、何を思い浮かべますか?
アンケートをとったらキムチ鍋が1位でネトウヨ大発狂、炎上したこともあったとか。
キムチ鍋の美味しさを否定するわけではありません。
ただ私としては、どうしてこれが1位じゃないんだ?
そう思うくらいに「すき焼き」が大好きです。
しかし、我が愛する「すき焼き」に全力でケンカを売ってくれた漫画がありました。
本記事は、それを小説のネタに入れてみましたという話です。
なお本記事は拙作「キモオタでギャルゲー、それって何の罰ゲーム!? 」の読者を対象にしたコラムです。
ただ、一般の方でも読めるように心掛けて書いています。
拙作からの引用
小説の引用から入ります。
EP27
「これは何だ!」
「すき焼きに決まってんじゃん」
二葉が涼しい顔をしながら鍋に箸をのばし、肉をつまむ。
……鶏肉を。
「すき焼きってのは牛肉で作るものだろうが!」
「『すき焼きは牛肉を一番まずく食べる方法』って、とあるグルメマンガで陶芸家さんが言ってたよ」
知ってるよ。
あの話を読んだ時はどれだけむかついたか。
人が好きで食べてるのに大きなお世話だ。
全国のすき焼き屋は、よくぞクレームを入れなかったものだ。二葉が知ってるということは、その話は二〇年前よりさらに前なのだろう。
この時点で何巻まで出ているのか気になるが、今はそれどころじゃない。
EP58
「アニキ。固まっちゃってどうしたの? 早く食べないと全部あたしが食べちゃうよ」
生のまま薄く切られた牛肉。
その横には、白菜、長ネギ、シイタケ、エノキなどのすぐに火が通りそうな具材。そして、目の前にある真ん中に円筒がついた特殊な形状の鍋。
俺の目の前にある料理。
それは紛う事なきしゃぶしゃぶだった。「ごめん。俺、しゃぶしゃぶだけは食べられないんだ」
二葉が目を見張る。
「ええっ! いったいどうして?」
叫んだ後の二葉こそ固まってしまっている。
それこそ意外すぎてだろう。
とうの俺ですら、自分でそう思うもの。「まあ色々と」
「まさか、どこかの陶芸家さんみたいに『しゃぶしゃぶは牛肉を一番不味く食べる方法』だなんて言わないでしょうね」
「言うか! そのネタどこまで引っ張る!
「だって『すき焼きこそ王道、しゃぶしゃぶは邪道』って人はまだ見るけど、『食べられない』とまで言う人は見たことないもの」
牛肉を一番まずく食べる方法
問題の漫画はこちら。
マンガを読まない方でも、「美味しんぼ」のタイトルを知らない方はいないと思います。
連載開始は本作の舞台よりも更に10年以上前の1983年。
拙作の舞台となる1994年12月1日の時点で48巻が発売。
(士郎とゆう子が結婚した辺りとなります)
グルメ漫画の始祖であると同時に、バブル期のグルメブームを作り上げた立役者と言っていいでしょう。
本文中の「陶芸家さん」は主人公の父親かつ至高の美食家「海原雄山」を指してます。
美味しんぼはアニメにもドラマにもなっています。
ドラマはスペシャルみたいな感じで1994年に放映。
唐沢寿明の山岡士郎ってハマってるなあ、と思いながら観てました。
さて、美味しんぼの某話。
海原雄山は、すき焼きとしゃぶしゃぶを次のように評しました。
牛肉を一番まずく食べる方法
私を含めた大多数の日本人を煽っているとしか思えない台詞。
現在でもネットのあちこちでネタにされています。
以降でそれぞれについて見ていきましょう。
すきやき
(引用元:雁屋哲・花咲アキラ「美味しんぼ」5巻 131ページ 小学館)
本話を読んだ時、素で叫びました。
人が美味しいと思って食べてるんだからどうでもいいだろうが、と。
私は小説内に自分の主張を入れるのを極力避けます。
主人公は主人公、私は私。
そう割り切らないと、エンタメ作品としてその部分だけ浮いてしまうと思うので。
それでもここは入れました。
話の流れからもそれが自然ですし。
逆にEP59の
すき焼きが王道。
そんな台詞、すき焼き好きとしてはにわかだ。
関東風もあれば関西風もあるし、その家庭によって味付けが違う。
あえて言うなら「自宅のすき焼きこそ王道」。
それを否定できるヤツはまずいまい。
職場の後輩が「カノジョと食べるすき焼きこそ王道」と言った時はぶん殴ってやりたいと思ったが、理屈的にはそれもありだろう。
これは完全に主人公としての意見。
むしろ「カノジョと食べるすき焼きこそ王道」というのが私の立場です。
親友でも家族でもいいんですけど。
だって義理や仕事で食べる食事なんて味がしませんもの。
そういう意味では美食と縁遠い人間じゃあるのですが。
また、そう思うからこそ「雄山って心ないよなあ」と呆れてしまうわけで。
(実際にはこのすき焼きの話回のラストをはじめ、器大きく思慮深い面も描かれてますが)
ただ……純粋に美食という観点からは、雄山の台詞を否定できないのも本音です。
(仲居が肉の扱いを知らないとか、そんなことまでは思いませんが)
安い牛肉でお腹を満たすならベストの方法と思います。
風味のなさを割り下と生卵で誤魔化せますから。
でも良い牛肉を使ってもそれなりだったり。
かえって肉の風味が力強くなる分、卵のパワーとかち合ってしまう感はあります。
例えば焼肉ですと、その辺の食べ放題と大使館御用達クラスの高級店では雲泥の差です。
高級店だと、舌の上でとろけ、思わず目を瞑り、ずっと口の中に含んでいたくなる。
それくらいの感動があります。
しかしすき焼きだと、老舗や高級と言われてる店でもそこまでの感動はありません。
美味しいのは美味しいんですけどね。
肉の質が同じなら、やっぱり焼いて食べた方がいいとは思います。
それでも
声を大にして叫びたい。
実際に調理法として合っていようと間違っていようと、そんなの知ったことじゃない。
自分はすき焼きが食べたいから食べる。
結局これに尽きちゃうんですけどね。
しゃぶしゃぶ
(引用元:雁屋哲・花咲アキラ「美味しんぼ」5巻 132ページ 小学館)
一方でしゃぶしゃぶはどうか。
実は私、しゃぶしゃぶをあまり食べません。
付き合いで店に行く場合のみで、自分から食べることはほとんどないです。
キライではないのですが、独りで外食に行くなら他の料理を選びます。
家でなら鳥か豚の水炊きにしちゃいます。
牛ならそれこそすき焼きですね。
しゃぶしゃぶにはポン酢かゴマだれ。
でも私、これについては本話の雄山に同意します。
ポン酢が特に牛肉の味を引き立てるとは思わないし、ゴマだれはきつすぎます。
まずいとは思いません、むしろ美味しいと思います(もちろんお肉次第ですが)。
でもどこか「もったいない」と思うのは否定できない。
私が自発的にしゃぶしゃぶを選ばない理由です。
シャブスキー(魯山人風すき焼き改)
美味しんぼのこの話回では「シャブスキー」なるものが最後に登場します。
海原雄山が唸るほどの代物、是非食べてみたいものです。
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