実録・北の三叉路(安宿緑)【書評】

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2017-03-21インテリジェンス・治安

実録・北の三叉路(ISBN: 978-4575309683)は元朝鮮総聯勤務員の女性ライター安宿緑氏が書いた本。
暴露という意味では大した事書いていません。
しかし逆にそれゆえ、一読の価値があります。

等身大の在日朝鮮人の姿

本書を読むと、若手在日朝鮮人の総聯離れが実感できます。
もっとも、若者に限らずこんなものです。
朝銀問題発覚からそうした傾向はありましたが、そこにきての日朝首脳会談がとどめ。
日本全国でバッシングの嵐が吹き荒れるなか、本書にある通り多くの総聯関係者は呆然としてました。

(だって、こっちも聞いてないし!)

(本書より引用)

当時は「裏切られた……」と涙ながらに愚痴を聞かされる調査官も少なくありませんでした。

その上で。
本書は嘘を吐いているのではなく黙っている感じ。
「わが朝鮮総連の罪と罰」みたいな非公然活動に従事していたとは思いませんが、著者の引き出しはもっと深いと思います。
そのくらい本書に描かれた内容は表層的です。
好意的にとれば「一般人向けの商品」であることを意識してでしょう。
朝鮮総聯の詳しい内情に興味あるのは限られた層ですから。

本書で私が眉を潜めた箇所

「朝鮮総聯の構成員だって普通の人なんだ!」みたいなセールス方針はわかります。
でも、これはさすがに言い過ぎかなと。

日本に仇なす反日組織と思っている方も多いのかもしれない。しかし内実は異なる。

それは単なる日常の一側面でしょうに。
ここまで主張されるのはさすがに抵抗をおぼえます。
A集団にB要素があるからといって、A集団全てがB要素という理屈は成り立ちませんので。

大部分は本音で書かれていると思う

ただまあ、本音では書かれてるんだろうなと。
パスポート取得のくだりなんかは素で吹き出します。
文章も程よい固さを保ちつつ、こなれています。
残念なところは「腐女子」という宣伝文句が釣りなくらい。
(三浦しをん氏の著書みたいな妄想爆裂を期待したのですが違ってました)

まとめ

暴露本ではなく、良くも悪くもあくまでエッセイ。
「こういう人もいる」くらいの感覚で、肩の力を抜いて気楽にページをめくってください。
変に偏った本よりは、これくらい簡単に書かれた方が参考になると思います。