公安調査庁における虚礼廃止、そしてバレンタインデー・ホワイトデーの義理チョコとお返しをめぐるシステム

きのここらむ
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先日、Twitterで義理チョコをめぐるトピックがトレンドに上がりました。
元ネタの記事はこちら。

消えゆく「義理チョコ」 女性の8割が職場で「あげたくない」 | 毎日新聞
「女性の8割が職場での義理チョコをあげたくないと思っている」「男性も6割がもらってうれしくない」――。調査会社「インテージ」は、14日のバレンタインデーを前に行ったこのような意識調査結果を明らかにした...

消えゆく「義理チョコ」 女性の8割が職場で「あげたくない」

内容が一目でわかる見出し。
なかなかに衝撃的です。
一方で男性の側も、

男性でも、義理チョコを「もらってうれしくない」という回答が全体で61・4%と過半数だった。

引用:毎日新聞 消えゆく「義理チョコ」 女性の8割が職場で「あげたくない」

昔から義理チョコ要らない派な私としては、

やっと時代が私に追いついたか

などと気取ってしまいたくなります。

ただ、そもそもの話なんですけど、

霞が関って虚礼廃止じゃなかったっけ?
バレンタインデーの義理チョコは虚礼に入らないの?

という疑問が、霞が関離れて20年以上経った現在ふつふつと湧いてきたり。
当時の記憶を繙いて整理することにしてみました。

本稿では公安調査庁における虚礼廃止とバレンタインデーについて記してみたいと思います。
私が在職当時の話ですので、現在にあてはまるかは不明です……が。

予め結論を書いておきます。

当時と同じならもちろんのこと
仮に当時と変わっていたとしても、女性職員がバレンタインで頭を悩ませることはないんじゃないかしら?

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虚礼廃止とは?

そもそも虚礼廃止という言葉を御存知ない方もいらっしゃるでしょう。
少なくとも私は役所に入るまで聞いたことありませんでした。
なので、まずワードの説明から入ります。

虚礼廃止
読み方:きょれいはいし

形だけで心のこもっていない、意味のない儀礼はやめる、という意味の表現。年賀状や、贈賄に繋がる政治家への中元などについて言う場合が多い。

引用:Weblio 辞書 実用日本語表現辞典「虚礼廃止」

年賀状、お歳暮、お中元などが代表例です。

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公安調査庁の虚礼廃止

公安庁は基本的に虚礼廃止

まず、はじめに。

公安庁は基本的に虚礼廃止だよ

といいますか、霞が関全体が虚礼廃止のはずです

いつからかは知りません。
私の入庁した1997年時点では既に虚礼廃止でした。

「基本的」というのは「何が虚礼にあたるのか」という問題があるからです。
世間で虚礼とされていても公安庁では違うということもあります。
以下、個別に記します。

お中元とお歳暮

お中元とお歳暮は役所内外を問わず厳禁。
虚礼どころか贈収賄の温床なので当然です。

年賀状

年賀状については、まだまだ世間では出すのが当たり前とされていた時代。
入庁一年目の年末、人事課からは、

虚礼にあたるから出さなくていいわ
どうしても出したいなら止めないけどね

と言われたので出さなかったのですが、迎えた元旦。

年賀状が山ほど!

ほとんどは現場の同期。
話を聞いてみると地方支局では虚礼廃止が徹底されてなかった様子でした。

二年目以降はまったく来なくなりました。
私が返事を出さなかったせいか、虚礼廃止が浸透したのか。
どちらなのかはわかりませんけど。

お土産(帰省土産・旅行土産・出張土産)

お土産は虚礼扱いされていませんでした。
と言いますか、今回の記事を書くにあたって調べて初めて、

お土産って虚礼だったんだ!?

と知ったくらいです。

帰省土産については、何も考えず当然のように買ってました。

もみじまんじゅうは広島の自慢だもん♪
ぜひともみんなに食べてもらわないとね♪

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むしろ布教感覚でした。
私としても各地の名産品はもらって嬉しいですし。
買ってくる人の方が多数派だったと思います。

萩の月とか。

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白い恋人とか。

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旅行土産は少なくとも「買わなくていけない」という空気はありませんでした。
人それぞれって感じです。

出張土産も基本的になかった気がします。
海外出張だとあったかも?くらい。
CIA(米国中央情報局)のキーホルダーが家のどこかに転がってるはずなのでもらったことはあるんですけど。
「どこか」とか「はず」というくらい使わない代物もらってもしかたないというのが本音。
むしろ「CIAにはお土産コーナーがある」という話の方がよっぽどの土産でした。

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公安調査庁のバレンタインデーとホワイトデー

ではバレンタインデーはどんな扱いだったか?

バレンタインデーは「虚礼」扱いされてなかったよ

ただし義理チョコは役所の側で完全にシステム化されていました。
具体的には、

課の女性職員でお金を集める(500円だか1000円だか)。

バレンタインデー前日、代表者が課の男性職員数分のチョコを買い出し。

当日、女性職員が課の男性職員に100円~200円程度のチョコを配る。
チョコは女性職員全員から1個という扱い。

課の男性職員でお金を集める(女性職員が出したお金と同額)

ホワイトデー前日、代表者が女性職員数分のお返しを買い出し。

当日、女性に御礼が渡される(恐らく庶務から)

買い出しに行くのは基本的に庶務係。
いなければ職員が勤務時間中に抜けて有楽町・銀座まで。

私が女性職員達から聞いてた限りでは、

面倒くさくなくて助かる!

というのが多数でした。

庶務がいれば買い出しは庶務がやってくれますし。
ここまで事務的なら誤解される可能性はゼロですし。
職員の男女比の関係で自然と数倍返しになりますから金銭的な損はありませんし。
手間は始業してから手分けしてチョコを配るだけ。
それくらいなら、まあ……といった感じでした。

一方の男性の側も。
義理チョコなんていらないのに押しつけられて3倍返しなんてめんどくさい。
選ぶのも買いに行くのもめんどくさい。
1000円払って済むならそれでいい……といった感じでした。

ただ、男性も女性も望んでない人の方が多いのは間違いない。
だったら止めればいいのにと思いませんか?

庶務に聞いた話。

どうして止めないんですか?

各人任せにしてあれこれ気を使うよりこの方が楽でしょう

ポイントは、

虚礼廃止はあくまで「廃止」であって「禁止」じゃない。

お中元やお歳暮は法律違反にあたる可能性がありますので禁じることができます。
しかし年賀状やバレンタインは各人の自由の範疇。
「やめよう」とは言えても「禁止」までは強制できません。

虚礼とされた年賀状についても「出したければ止めない」としている通り。
バレンタインデーは民間企業の生み出したイベントにすぎませんから虚礼扱いすらされていない。
義理チョコシステムを止めてしまうと、職員は無用なプレッシャーに晒されかねません。

言ってみれば、

役所の側でバレンタインデー・ホワイトデーの義理チョコを形骸化して骨抜きにしてしまっているわけです

中にはあげたい人だっています。
最初に載せたアンケートでも「あげたくない」と答えた女性は8割強にとどまります。
全員ではありません。
あげたい側の女性が抜け駆けして配ればあげたくない側の女性もそういうわけにいかなくなります。
逆に役所の側で手配するなら、そこに加えて個人で義理チョコは配りづらくなるでしょう。

一方の男性にしても同じ。
やはり義理チョコでももらいたいという男性だっています。
だったら事務的に処理してしまった方がカドを立てなくてすみます。

うまく考えたものだね

なお、以上は本庁の話。
かつ、総務部と調査第二部(国外担当)の話です。
調査第一部はわかりません(部長が警察庁からの出向なせいか、文化や風習が異なる)。

現場だと個人任せだったかもしれません。
ある年に義理の板チョコもらった記憶はあるのですが、それは確か個人としてでしたし。
毎年もらってたかまでは残念ながら覚えていません。

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まとめ

あくまで私のいた頃の話であり、当時の時代背景もあります。
今もこういうシステムをとってるのか、それとも完全に廃止してるかは知りません。
ただ、いずれにしたところで、

「義理チョコどうしよう」と心を煩わせることはないんじゃないかな?

システム残っていれば役所任せで形式的事務的に終わらせられるし
なくなっていればシステムをとる必要なく「義理チョコはなし」の風土が根づいたということだから

もっとも本件システムについて、見方を変えれば、

庶務は業務時間内にチョコを買いに行っている。
また、女性職員達がチョコを配るのも業務時間内。
虚礼廃止と言いつつ、業務の一環として義理チョコを配っている

とも言えます。

税金を払う国民への背信だ!

と批判することも理屈としては可能でしょう。

私にしてみれば曲解もいいところですけど、あえて反論するなら。
いらない事に気をとらわれずにすんで、かえって仕事に専念できました。
まだまだ義理チョコとお返しが当たり前とされていた時代でしたから尚更のことです。

虚礼廃止を唱えるなら「止めろ」というだけでは足りないのかも
なくすための努力が必要なのかもしれません

当時を振り返ると、そう思ったりもします。

キノコ煮込みに秘密のスパイスを

OBによる公安調査庁のお仕事をリアルに描いたラブコメ&サスペンス。
小説家になろうでは総合ランキングに入ったことのないド底辺のネット小説です。
一方で、
・週刊誌に「日本のスノーデン」呼ばわりでYahoo!ニュースになり。
・偉い作家先生から「乱歩賞獲れたミステリ」と絶賛され。
・出版社では「これを世に出すのは危険」とお蔵入りにされ。
あれこれ曰く付きの小説、あなたも読んでみませんか?
お気に召しましたら拡散していただけると嬉しいです。

天満川鈴
この記事を書いた人

慶應義塾大学商学部卒
1997年公安調査庁にキャリアとして入庁
在職時は国際テロ、北朝鮮を担当
特に現場(スパイ工作)で実績を挙げ庁内表彰を受ける
2004年介護のため退官。

ADHD、精神障害者手帳3級所持。

WordPress記事は素人の備忘録です。

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