小説家になろうにて「キモオタでギャルゲー、それって何の罰ゲーム!?」連載中!

スパイの尾行、なぜバレた? ~「キノコ煮込みに秘密のスパイスを」13話より

きのここらむ
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本稿は拙作「キノコ煮込みに秘密のスパイスを 」(略称:キノスパ)で採り上げた謎の一つについて、詳しく説明してみます。

ヒロイン観音の登場シーン。
本作のハイライトです。
同時に主人公弥生の尾行がバレていて、危機に直面したシーンでもあります。

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尾行の実例

以下、本文から、そのシーンを引用します。
「マルタイ」とは「対象者」の隠語。
主人公はスパイ候補者の身辺を洗うため尾行しています。

 終点に到着。
マルタイが降りていく。
俺はゆっくり出口に移動、他の乗客を挟んでから降りる。

マルタイは早足。
歩幅を広げて歩く速さを調節する。
離れない様に、近づきすぎない様に。

地下鉄入口に入る。
改札を通過する。
マルタイは真っ直ぐホームへ向かう。

ホームに着くと人はまばら。
既に次発の電車が待機している。
マルタイが電車に乗り込む。
早めたくなる足を、踏みしめる様にして抑え付ける。
ここまでマルタイが警戒している様子はない。
もし警戒しているなら、後ろを向いたりトイレや売店に寄るはずだ。

よし、乗車口まであと数歩。
もう少しだ。
乗ってしまいさえすれば後は立っ──えっ!?
マルタイが電車からホームに降りた。
しかも俺をじっと見つめている!

うああああああああああああ!
尾行がばれてたあああああああああああああああ!

でも、なぜ???
やばい、どうする???
どうしよう???
ど◇す※ば???

どうするも何もこのまま乗り込むしかない。
しかし俺は足を止めてしまっていた。

まずい、このままだと捕まる。
この状況で詰問されればしらばくれるのも無理だ。
動け、動け、動いてくれ!
でも足は床にべったりと貼りついたまま動かない。

ああ、もうだめ。
天を仰ぎかける。
その時、背後からカッカッカッと早いテンポのヒール音が近づいてきた。
それとともに「待って~」と女性の声。
何事?
俺は反射的に振り返っていた。

視界に入ったのは走ってくる黒スーツの女。
女は手前で止まると膝をかがめ、その反動で飛び上が──うげ!?
激痛が走る。
腹部には女の膝が食い込んでいた。
意識が薄れゆく。
ホームに倒れ込む。
その中で俺は、見知らぬ女から飛び膝蹴りを食らった事を認識した……。

 

実はこれ……ほぼ私の「実体験」
飛び膝蹴り喰らわせる女性が現れなかっただけ。
まったく現場慣れしていない頃の失敗例です。

マルタイが電車から降りたとき、私はびくっとしました。
そしてそのまま固まってしまう。
尾行に気づくだけじゃない、待ち構えていたのが明らかですから。

その後はまさに主人公の心境がごとく。
逃げようにも足が固まって動かない。

マルタイは捕まえようと手を伸ばしてきたわけじゃありません。
ただひたすらに私を見つめていました。

でも、だからこそ動けなくなったんだと思います。
何かアクションをとられれば、それに反応するでしょうから。
そこでドアが閉まりかけ、なんとか飛び乗って逃げたという感じでした。

このマルタイは朝鮮総連大阪府本部の国際部長。
先々の府本部委員長就任が有力視されていた人物。
本流中の本流で、いわゆる大物でした。

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尾行って組織でやるんじゃないの?

尾行って組織でやるものじゃないの?
テレビドラマとかそうじゃん

まずここが一般読者からすればツッコミどころでしょう。

よっぽどの重要人物あるいは必要性があるなら、組織で行うこともあります。
ポイントに人を予め配置しておいて入れ替わるというのが定番でしょうか。

しかしスパイ工作を仕掛ける対象者選定における尾行は基本的に単独作業です

理由はヒトとカネ。
架空ならヒトもカネも無尽蔵に用意できます。
しかし現実はそうもいきません。
官庁の部屋の人員は限られてますし、予算による制約があります。
そんなちょっとした尾行に人員を導入していたら、他の仕事が動かなくなります。

もう一つ理由としてあげられるのが区分の原則
以下、拙作からの引用です。

 これは情報機関において〝区分の原則〟が存在するため。
具体的には「スパイは同僚の仕事を知ってはならないし自分の仕事を同僚に教えてはならない」という原則である。
だから当然その帰結として、スパイ仕事は単独行動が基本となる。

公安庁でも他でも、全ての情報機関における共通基本原則です。
簡単に言えば「同僚にすら何も言えない」。
「誰を工作するか」すら言えません(現実にはもっと緩やかに運用されていますが)。
その結果、尾行も一人でやらざるをえないのです。

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どうしてバレた?

一人で尾行していれば普通バレます。
では主人公弥生の尾行はなぜバレたのか?

 そろそろかな──マルタイ通過を現認。
尾行スタート。

路地を出る。
バス停に目を遣る。
マルタイを確認。
バス停に近づきながら全体を見渡す。
バス待ちは六人か。
これなら俺の存在が目立つ事もないだろう。

これに対する観音の言葉。

「出勤だと毎日ほぼ同じ時間に同じ顔ぶれでバス待ちをする。その中に見た事のない顔があれば、防衛意識の高い人なら警戒するよ。どうせ同じ電車に乗るのだから途中は確認する必要もない。あとはホームでマルタイがやった通りにすればいいだけ」

もう最初からバレてしまっているわけです。
実はこれ、上司がくれた解答そのまま

「経験浅いとありがちなミスだからな。私にすれば見なくともわかるレベルの話だ」

これもまたそのまま
「はあ……」という感じでした。

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観音は弥生をどう尾行したか

ここからはキノスパ本文に書いてない話。

観音は一七一センチの超美人、まして弥生のタイプ。
こんな目立つ女が尾行すれば、弥生だって普通気づくでしょう。

実はこれ、観音は尾行していません。(表面上は曖昧に描いてますが)
正確にはやり方を工夫しています。

以下、「こんな弟クンは欲しくありませんか? 」(略称:こん弟)からの引用。

 が、姉貴は見ていない。
スマホ片手に思考の彼方へ飛び去っていた。
小声で何やら呟いている。

(よりによって朝一番か。と言って、前もって警告したところで、かえって動揺させかねなかったし……この駅なら出入口は一つか……それなら……)

つまり観音がやったのは「絶対に通る場所」で待ち構えて、そこから尾行したのです
定点監視と尾行の組合せ
バレたくない場合はこの手法を用います。
一般人の方でも、この手法は納得いくでしょう。

ただこちらは不確定要素が大きいというデメリットがあります。
失尾したら元も子もないのですから。
「こん弟」では観音がこの後外出してますが、これは現地を直接見ることでリスクを確認したわけです。

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敵の実像

さて上記の例で「敵はどうして主人公を捕まえなかったの?」という疑問が湧くかもしれません。
これについても、小説には書いてませんが、上司が教えてくれました。

あなたは遊ばれたのよ

マルタイは何から何まで私より上手。
だからこそ余裕もあります。
単に見つめてみせることで、私がパニックに陥るのを楽しんでたわけです。
もしこれが血気盛んな若手だったら多分捕まっていたという話でした。
もちろんその際は不祥事に発展してしまう可能性もあります。

何とも口惜しい話ですが、今回は仕方ない。
当時はそう思いつつ唇を嚙んだものでした。

キノコ煮込みに秘密のスパイスを

OBによる公安調査庁のお仕事をリアルに描いたラブコメ&サスペンス。
小説家になろうでは総合ランキングに入ったことのないド底辺のネット小説です。
一方で、
・週刊誌に「日本のスノーデン」呼ばわりでYahoo!ニュースになり。
・偉い作家先生から「乱歩賞獲れたミステリ」と絶賛され。
・出版社では「これを世に出すのは危険」とお蔵入りにされ。
あれこれ曰く付きの小説、あなたも読んでみませんか?
お気に召しましたら拡散していただけると嬉しいです。

この記事を書いた人

広島市内のパチンコホール勤務。
3号機時代からのパチンカス。
ADHD、精神障害者手帳3級所持。
慶應義塾大学商学部卒、専攻はマーケティング(広告・宣伝)
国家一種試験経済職の資格で公安調査庁に入庁。
在職時は国際テロ、北朝鮮を担当。
「小説家になろう」の底辺作者。
WordPress記事は素人の備忘録です。

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