本稿では公安調査庁(以下、公安庁)の採用・採用後の処遇と学歴について記します。
私は別記事にて公安調査庁の採用パンフレットの説明をしているのですが、その関係で公安庁を志望する学生さんから質問を受けたりします。
その中でも学歴にまつわる質問が、本当に多いので。
あくまで私の知る範囲の話となります。
ただ聞いている限りでは変わっていないでしょう。
何より公安庁公式ページに「人物本位の採用」と謳ってますし。
もし変わっていたら、私でなく公安調査庁の方を恨んで下さい。
なお、当然ながら、
私も小説の宣伝として、話せる範囲のことを紹介しているだけです。
公安庁の関心が高まるなり名が知れるなりすれば、その分小説が広まりやすくなるので。
その点は予め御承知置き下さい。
学歴で採用後の処遇は変わるか?
あえて言うなら、東大だと僅かに優遇してもらえます。
いいポストにつけてもらえたり、いい国に行かせてもらえたり。
ただキャリアは実績を作りづらいですから、僅かの差であっても大きいとは言えるかもしれません。
しかし、総括課長補佐になる辺りから変わってきます。
ここで評価されれば主流ルートに乗れますし、そうでなければ脱落します。
もう学歴は関係なく、自らの培ってきた実務能力で決まります。
特に現場は能力と実績が全てです。
東大でも情報獲れないと能無し扱いされます。
高卒でも情報獲ってくれば英雄扱いされます。
実例として私の同期。
専門学校から国家二種経由で公安庁に入りましたが、2年目で協力者(=スパイ)獲得しました。
その実績をもって本庁へ。
様々なキャリアを積み、現在は押しも押されもせぬ北朝鮮の第一人者として扱われています。
私が退職してからも評判が伝わってくるくらい。
ノンキャリアの場合は「それ以外の要素」もないとは言いません。
ただし「それ以外の要素」を持っていても、ダメな人はやはりダメなので。
学歴が関係ないのは、ここ最近の調査第二部長の学歴でもはっきりわかります。
これらの学校の方々には申し訳ありませんが、学歴重視に見えますか?
(現在の二部長の学歴は忘れました、東大でないことは確かです)
総務仕事は交渉能力や根回しなどの人格面
現場の工作仕事はセンス
各分野で名をあげていた職員と学歴は全く比例していません
以下はどこの組織でも、あるいはどんな世界でも同じと思いますが……
- 公安庁では実績がないと耳を貸しませんし相手にしません。
逆に学歴に自信ある方は、その点を心して志望してください。 - 入ってから学歴の話をすることなんて、ほとんどありません。
採用において学歴フィルターはあるか
学歴フィルターとは、採用試験において一定レベル以下の大学の学生を対象にしないというもの。
履歴書やエントリーシートの時点で、問答無用で落とされます。
総合職でも一般職でも同じ。
あえて言えば公務員採用試験に合格できたことがフィルターとなります。
実際に面接官をしたこともある私が断言します(原課訪問としてですが評価はつけている)。
採用において有名大卒は有利か
学歴フィルターは受けることができる大学の最低ライン、つまり「不利にならないかどうか」。
有名大卒の方が「有利かどうか」は別問題です。
総合職について
最近は東大法学部卒の採用が増えていると聞いています。
ただこれは東大法学部卒の公安庁志望者が増えたため。
母数が増えれば採用者が増えるのは当たり前なので、この数字をもって有利とはいえません。
実際に有利かどうかについて。
東大法学部であれば、ある程度有利です。
私の頃はどんなにひどくても原課で落とされることはありませんでした。
これは、
一般の方から見ればそう思われるかもですが。
びっくりするほど小さい人多いですよ。
だからこそキャリア官僚という権威を得ようとするとも言えますし。
そういう事情があって、逆恨みを避けるために「受験生のプライドを満たしつつ落とす」わけです。
東大法学部ですと、どこかに採用される可能性が高いですから。
しかし、その程度にすぎません。
引っ張られる分、時間を無駄にする点では不利とも言えます。
それでも巻き返せるチャンスがある分、やはり有利です。
下に嫌われても幹部に好かれれば内定もらえますので。
詳細は割愛しますが、私自身が実例。
今でも伝説として庁内で語り継がれてるんじゃないですかね?
人物本位の採用をする理由
公安調査庁は弱小官庁。
真に優秀と言える東大法のトップクラスはなかなか来てくれません。
だったら受験勉強で頭を使い果たした東大より、遊んできて余力のあるFラン大の方がいいという考えです。
一般職について
旧帝大クラスは明らかに有利でした。
私の頃ですと、それだけで内定出していたのではないかと思うくらい。
(そう言いたくなるような人がいた)
私の頃の世間の風潮は、
それですら帝大クラスが優遇されていました。
世間も国立回帰した現在は当然ながら有利ではないかと思います。
一方で早慶は当時ですら高学歴扱いされませんでした。
つまり今も昔も有利には働いていません。
ただし早稲田については別の意味でわずかに有利だとは言われています(次項で説明)。
多い大学・少ない大学
公安庁に多い大学
もう石を投げれば当たる、そのレベルで。
検事、キャリア、ノンキャリアの全てにわたって。
面接ではこれら大学出身者と当たる可能性が大。
同じ大学である分会話を弾ませやすいですし、OBも上に上げたくなるのが人情。
その分、
ノンキャリアに限定すると、東海大学や近畿大学などが目立ちます。
これはハングル語学科。当然、採用にも有利です(学歴というよりも特技という点で)。
公安庁に少ない大学(あくまで過去形)
私は慶應ですが、上にはキャリアで一人。
ノンキャリアは見たことありません。
「いるにはいるよ」くらいは聞いてますが、本当にそのレベルでした。
学校のカラーが保守の中の保守でブルジョワ。
左翼や反体制と縁がないからでしょうけど。
ミッション系の学校も極端に少なかったです。
例えば上智、青学、立教など。
これは単に志望者がいなかったため。
いずれも慶應と共通するものがありますから。
ただ今と昔は時代が違います。
今は北朝鮮やテロの脅威もメジャーな問題意識となりました。
当時よりは慶應やミッション系大学の出身者も増えていると思います。
あえてミッション系に触れたのは、次の質問を受けたから。
公安庁の職務の特性上、ミッション系の大学はあまり好まれないというようなことはあるのでしょうか。
まったくありません。ご安心ください。
まとめ
以上記した通り、特定の大学で不利になることは皆無です。
一方で有利になることも僅か。
本当に面接で決まります。
特に総合職について。
公安庁に限らず他官庁含めて、必ずしも有名大でないのに採用された人全員に共通する特徴があります。
それは、
総合職採用は管理職になる人間を選ぶわけですから、卑屈なのはそれだけでマイナスとなります。
「○○大だから」云々、そんなこと言ってる時点でアウトです。
失敗しても失うものはありません。
開き直ってチャレンジしてみてください。
コメント
初めまして。いつもブログを楽しく読ませていただいております。
以前から気になっていたのですが、公安庁は官僚の中では仕事時間が短く、各職員趣味に費やす時間が取れると以前見た記憶があるのですが、中には働きながら司法試験・予備試験を狙って勉強されてる方もいらっしゃるのでしょうか。
また、もし公安庁キャリアが在職中に司法試験に合格すれば、その後は省の中で、年次・昇進等、検事と同格として扱われるのでしょうか。
初めまして
>中には働きながら司法試験・予備試験を狙って勉強されてる方もいらっしゃるのでしょうか。
過去、在職中に合格した人がいますから、探せばいるんじゃないですかね?(その方は退職して弁護士になったとか)
その方については、よりによって元の出向先が司法試験委員会。
ちょっとした問題になり、「今度は司法試験を絶対に受けない人を送ってくれ」と注意された逸話があります。
まあ、やろうと思えば間違いなく可能です。
>また、もし公安庁キャリアが在職中に司法試験に合格すれば、その後は省の中で、年次・昇進等、検事と同格として扱われるのでしょうか。
かつては検事任官もありえたと思いますが(その場合でも公安庁所属とはならない)、今は無理でしょう。
むしろ新司法試験合格した人が公安庁のキャリアとして入庁している時代ですので。
初めまして。いつもブログを楽しく読ませていただいております。以前から気になっていたのですが、公安庁は官僚の中では仕事時間が短く、各職員趣味に費やす時間が取れると以前見た記憶があるのですが、中には働きながら司法試験・予備試験を狙って勉強されてる方もいらっしゃるのでしょうか。
また、もし公安庁キャリアが在職中に司法試験に合格すれば、その後は省の中で、年次・昇進等、検事と同格として扱われるのでしょうか。
初めまして
>中には働きながら司法試験・予備試験を狙って勉強されてる方もいらっしゃるのでしょうか。
過去、在職中に合格した人がいますから、探せばいるんじゃないですかね?(その方は退職して弁護士になったとか)
その方については、よりによって元の出向先が司法試験委員会。
ちょっとした問題になり、「今度は司法試験を絶対に受けない人を送ってくれ」と注意された逸話があります。
まあ、やろうと思えば間違いなく可能です。
>また、もし公安庁キャリアが在職中に司法試験に合格すれば、その後は省の中で、年次・昇進等、検事と同格として扱われるのでしょうか。
かつては検事任官もありえたと思いますが(その場合でも公安庁所属とはならない)、今は無理でしょう。
むしろ新司法試験合格した人が公安庁のキャリアとして入庁している時代ですので。
こんにちは。公安調査庁を受けようと思っている者です。大変参考になる記事でありがたいです。
2点質問があるですが、まず身辺調査について、
実は私の祖父が過去に市役所で働いていたのですが、横領で捕まったことがあります。これが原因で落とされるということはありますか?以前近所の大学で説明会があって身辺調査で身内を調べたりするのかと職員さんに聞いてみたらそんなことはないときっぱり言われましたがなんだか微妙なところです。
また、個人的に趣味で仏教の勉強をしているのですが、あまり面接で言うと偏った人物だとみなされますか?別に信仰しているという訳でもないし決してカルト系の危ないものでもないのですが
初めまして。
1点目。
正直なところわかりませんが……以下、個人的な見解として。
捕まったというのは逮捕されただけでしょうか?それとも起訴されて有罪判決を受けたのでしょうか?世間では誤解されがちですが捕まっただけでは有罪ではありません。判決が出て初めて有罪です。前者であれば問題ないのではないでしょうか?後者であれば……治安機関はアウトじゃないかと思います。本人については犯歴照会を行いますが、祖父くらいの関係だと恐らく調査が及ぶものと思われますので。
身内まで調べるかどうかは何とも言えません。基本的には「本人」が対象ですので、当該職員の述べた通りとなります。例えば両親の勤務先を訪ねて「両親」の素行を調べるなどといったことはしていないと思います。しかし本人を調べる過程で親族に問題があれば出てくるでしょうし、採用に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
2点目。
どうして趣味で仏教なのか。それが言えるかが鍵じゃないでしょうか。こうした質問をされるあたり、言えば引かれる趣味というのは自覚してらっしゃるはず。ただ、だからこそ、うまく説明できるのであればオリジナリティあるアピールに繋げられるものと思います。個人的にはリスク高いと感じますので、私なら黙りますが……。
なお趣味が仏教研究ということ自体は問題ありません。あくまで印象の話です。