キミが好き

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2014-04-30短編

ボクがキミと知り合ってどれくらい経つだろうか
思い出せないくらいに長いつきあいだった

他が湯切り口を改良するなか キミは頑なに伝統を守った
流しにドバっとぶちまけることもしばしばだった
だけどボクにはキミしか考えられなかった
キミは最高のカップ焼きそばだった

麻雀に明け暮れた大学生活
ボクの通っていた雀荘では キミの「目玉入り」が看板商品だった

目玉は生卵
プルプルと震える黄味につぷっと箸を刺す
くぱぁっと開くと 割れ目からとろとろあふれだす
かきまぜる
かきまぜる
突き立て 動かし かきまぜる
もうキミはぐったりと汁まみれ
こうなったら食べ頃
ボクはキミを一気に喰らう
吸い付き 噛みきり 蹂躙する

ああ なんて美味なのだろう
キミと生卵がこんなに相性いいなんて
キミじゃないとダメだった
他のカップ焼きそばではダメだった
ソースの濃さと味が生卵に負けてしまうから

この雀荘にはジンクスがあった
大学に入学したての頃 先輩が教えてくれた
トップを獲ったら目玉入りを食べる
そうすれば次もトップをとれるんだよ って
ボクはそれを信じた
トップを獲る度に目玉入りを注文した
ボクは快進撃を続けた
ある晩は目玉入りを五半荘連続で喰らった
それでも 飽きなかった
キミはまさしく至高の味だった

だけどキミはボクの前から姿を消した
Gと呼ばれる凄腕のスナイパーに殺されたから
Gはたった一人で四万六千人のキミを根絶やしにした
公開された処刑写真はトラウマになりそうな代物だった
キミを愛するボクですら

だけどボクは負けない
それでもキミが好きだ
どんなに汚れようと穢れようとキミが好きだ

そしてこれだけはキミに伝えたい

ボクはキミの帰る日を待ってるよ
いつまでも
いつまでもずっと
きっといつか その日が来ると信じてるから


Author:天満川 鈴

小説家になりたい駄文書き、元公安調査庁職員。
国家一種経済職→入庁。イスラム過激派などの国際テロ、北朝鮮を担当。
朝鮮総聯へのスパイ工作を描いた小説「キノコ煮込みに秘密のスパイスを は週刊誌で紹介され、さらに推理・歴史作家の鈴木輝一郎先生から「江戸川乱歩賞獲れた」と絶賛。素人の小説としては異例の反響を呼びました。
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