国家公務員志望の皆様、いかがお過ごしでしょうか?
総合職であれば追い込み、一般職であればスタートを切り始める頃だと思います。
本記事は私の国家公務員一種採用試験(現総合職)失敗体験記、具体的には人事院面接失敗記となります。
(知らない方へ。国家一種試験とはキャリア官僚になるための資格試験です)
人事院面接は現総合職試験の「人物試験」のことです。
本サイトの訪問者は官庁志望の学生が多いので記してみました。
ただし、私みたいなケースはまずないと思います。
また現在では制度も違いますし、時代も違います。
事実ではありますが、ネタとして読み流していただければ。
公安庁上層部の間では国家一種トップ合格したことになっていた
私は国家一種経済職。
合格順位はちょうど真ん中くらいです。
しかし私の勤めていた公安調査庁(以下、公安庁)上層部の間では、なぜかトップで合格したことになっていました。
在職当時、私を一番かわいがってくれた幹部が泥酔して言った台詞。
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お前が国家一種トップ合格だとか、そんなのどうでもいい。
俺は人としてお前がかわいいんだ!
泣けてくるほど嬉しい言葉でした。
しかし、一方で思う。
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本当にそういうことになってたんだ……
どういうことでしょうか?
前項の真相
ざっくり言うと、
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著者の採用された国家一種資格は「前年度合格」のものなんだよ
私は合格年次、情報の無さから官庁訪問を失敗してしまいました。
仕方なく翌年、再チャレンジします。
当時は現在と異なり、一次試験合格発表後に内定が出されていました。
トップというのは一次試験終了時点での順位です。
本当にトップだったかは知りません。
ただ採用時点で人事課からもトップを伝えられていました(トップクラスという意味かもしれませんが)。
また私自身も自己採点から確信していましたし、多分そうなんじゃないでしょうか?
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というよりトップ合格を確信していたからこそ「霞が関の盲腸」と呼ばれていた公安庁を選んだんだもん
霞が関って官庁序列によるマウント鬱陶しいから、順位良ければ「好きで選んだ」って胸張って言えるもん
それくらいに自信満々だったわけですが……まさかの最終不合格。
幸いに内定は取り消されず、前年の資格で採用してもらえました。
(真偽は定かではありませんが、官庁によっては内定を取り消されたという噂を聞いたことがあります)
このとき人事課から告げられます。
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お願い!
幹部達の前では今年落ちたことを言わないで!
もう既に、幹部達に「国家一種トップ合格者が来る」と広めてしまっていたので。
これが「公安庁幹部の間ではトップ合格」の真相です。
当時の試験システムだと「一次試験の順位≓最終順位」。
私が二次落ちすることはまずありえない事態でした。
それなのにどうして落ちたか?
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人事院面接で最低評価つけられたからだよ!
この場合、どんなに筆記がよくても問答無用で国家一種ごと不合格にされます(当時)。
当時の人事院面接 ~基本的に落とされることのない試験
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当時の人事院面接は、基本的に落とされることのない試験でした
質問も当たり前の質問を当たり前に返せばいいだけ。
落ちるケースとされていたのは、
- 人前で一言も話せないコミュ障
(それですら合格しています) - 「私は神である」などと一目でわかるくらいの問題発言する人
(口にするキャリア自体はいますが、さすがに人事院面接では言わないと思います)
現在の人物試験よりは落とされる人数も評価も甘いです。
そもそも、
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著者は前年度合格しています
つまり人事院面接も一度はパスしています
それなのにどうして落ちてしまったのか?
以下に、面接を再現します。
人事院面接再現
入室すると面接官は3人、全員各省庁の人事課長です。
私 「(国民に尽くすとか、いかにもありがちな答え)」
型どおりの質問を終えます。
こちらも答えを用意しているので、この辺りはお約束。
昨年パスしているし流れは知ってる。
あとは適当に雑談して終わり……と思いきや、意外な質問が。
人事院面接でこんなこと聞くんだ。
どっかの経済官庁かな?
こういうときは慌てないように、まず間を置くことにしてます。
面接官B「どうぞ」
受け答えして稼いだ時間で3つ思い浮かべ、「問題点」と「理由」に整理してから再び口を開きます。
面接官B「続けて」
私 「ミクロ的な観点からは……(略)……です。これは……という理由から、構造上解決しえない問題と考えます。マクロ的な観点からは……(略)……です。これは……という理由から、構造上解決しえない問題と考えます──」
まさか、こんな場で本当に経済の問答をしたいわけじゃあるまい。
念のため面接官に確認します。
面接官B「いや、もういい。君が非常に優秀なエコノミストであることはわかった」
私 「恐れ入ります」
と口にはしつつも、経済なんて欠片も興味ありません。
経済職は出題のほとんどが計算問題で実質的に数学職。
数学得意な私にとっては暗記が要らず、一番楽に合格できるから選んだだけですので。
当時の人事院面接では、内々定の決まっている官庁を第一志望に記すのが倣わしでした。
私 「そうです」
面接官B「どうして経済官庁に行かないんだ? 通産省(=現経産省)とか……経済企画庁(=現内閣府)とか」
咄嗟に出てきたのは通産省、その後にとってつけたように経済企画庁。
この時点で面接官Bがどちらか……というより、ほぼ通産省の課長と悟ります。
それにしても「行く」ってどういうこと?
人事院面接は内定解禁日前。
民間企業と就職協定を結んでいる建前上、「官庁に採用された」という前提で面接してはいけないことになっていました。
つまりルール違反にあたります。
ま、いいや。
単に「希望」ということで聞いているかもですし。
私 「治安系の仕事に就きたいと考えましたから」
面接官B「私は、君が経済官庁に行くべきと言ってるんだ。もったいないじゃないか」
なんて暴論。
経済の才能あったら経済の仕事就かないといけないの?
褒め殺しではなく本当に褒めてくれているのはわかるし、そこは嬉しい。
だけどあなたに私の進路決められるいわれはない!
悪意は感じないし、褒め殺しとは思えない。
しかしそんなこと言われても公安庁の内定もらっている身としては難癖でしかない。
どう返すべきか……。
面接官B「(声を荒げて)君は日本経済を担う仕事が治安よりも劣るというのか」
私 「そうは言っていません。分野が違いすぎるのですから比較のしようがないと考えます。それに近年は治安分野でも経済安全保障、これに伴うエコノミック・インテリジェンスの重要性が高まってきています。エコノミストの活躍しうる場は十分にあるものと考えます」
面接官B「もうはっきり言おう──」
続いたのは、耳を疑う大暴言でした。
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固まりました。
内定前提で話してはいけない人事院面接で、さらに内定官庁を侮辱するなんて。
頭の中は戸惑いと怒りが錯綜していました。
面接官Bの大暴言はさらに続きます。
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君ならどこの官庁だって行けるじゃないか
私は通産省……か経済企画庁みたいな君の能力に相応しい官庁へ行けと言ってるんだ
そこまで言うなら、本当に私を買ってくれたのだろう。
私のためを思って言ってくれているつもりなのだろう。
でも内定した官庁侮辱するような人事課長のいる官庁なんて行きたくないよ!
経済がどうとかそれ以前の問題で!
だけど、この場は躱さないといけない。
声を荒げないように歯を食い縛る。
私 「そこまで私を認めていただけることは嬉しく思います。しかし、それは分に過ぎた評価です」
面接官B「そんなことはない」
私 「優秀な学生が大勢集まる霞ヶ関において自らを優秀と称するなど烏滸がましいにも程があります。私は自らが通産省や経済企画庁といった一流官庁に相応しい人材であるとは考えていません」
面接官が重苦しい声で憤怒を露わにする。
面接官B「君、そこまで言うからには一度くらい通産省……か経済企画庁回ったんだろうな?」
私 「いいえ、一度も回ってません」
——あっ。
面接官B「もういい、終わりだ」
迎えた合格発表日、合格発表掲示板に私の番号はありませんでした。
人事院から説明を聞かされた公安庁人事課の採用担当係長は電話を切って一言。
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隣で見ていた友人によると、まさに茫然自失だったそうです。
トップの座は棒に振ったけど、反省も後悔もしない
最後は「回ったのですが、感触がよくなかったので止めました」くらいの嘘でかわすべき場面。
発達障害のせいか、咄嗟の嘘が苦手なんですよね。
ただ後悔はしていません。
そう思っていますので。
大蔵省(現財務省)に決まった友人も同室だったのですが「日本経済の問題点3つ」を答えたところ、
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鼻で笑われたそうです。
こんな面接官に当たった時点で運が悪かったとしか言いようがありません。
内定者にとって採用してくれた官庁は結婚した妻も同然。
それをバカにされて嫌味言い返して落とされるなら上等です。
結局は辞めちゃったわけですが、これも恋愛や結婚と同じ。
後で愛想尽かしたとしても、付き合った時の気持ちまで変わるものじゃありませんから。
私が通産省(経産省)を回らなかった理由
実のところ、私は周囲全員から「通産省受けろ」と言われていました。
順位もですが、それ以上に典型的な通産省タイプに見えたそうです。
今回の課長が通産省だったのなら、この評価にダメ押ししたこととなるでしょう。
でも……
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だからこそ回らなかったんです!
経済企画庁は本当に経済に興味なかったの一点ですが。
通産省は、こちらがメインの理由です。
私だって自分の欠点は自覚しています。
悪く言えば面倒くさいし、疲れるやつです。
私みたいなのが通産省に集まってるなら。
どうしてそんな地獄にわざわざ自分から飛び込まないといけないんですか。
実際、通産省・経産省OBとして活躍されている方々を見ると。
やっぱり自分の嫌な面を鏡で見せられてる気分になることが多いです。
まとめ
ややもすれば一部の記述は自慢に映るかもしれませんが、あくまでも落ちた話です。
ありえないというネタであり、あくまで昔の話です。
ただ皆様は、こんな失敗しないように御注意ください。
私は前年の合格資格があったから泣かずに済んだだけ。
どんな面接官と出会おうと流せるだけの口の利き方とコミュ力を身につけて下さい。
皆様の健闘を祈ります。
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