ボクがキミと知り合ってどれくらい経つだろうか
思い出せないくらいに長いつきあいだった
他が湯切り口を改良するなか キミは頑なに伝統を守った
流しにドバっとぶちまけることもしばしばだった
だけどボクにはキミしか考えられなかった
キミは最高のカップ焼きそばだった
麻雀に明け暮れた大学生活
ボクの通っていた雀荘では キミの「目玉入り」が看板商品だった
目玉は生卵
プルプルと震える黄味につぷっと箸を刺す
くぱぁっと開くと 割れ目からとろとろあふれだす
かきまぜる
かきまぜる
突き立て 動かし かきまぜる
もうキミはぐったりと汁まみれ
こうなったら食べ頃
ボクはキミを一気に喰らう
吸い付き 噛みきり 蹂躙する
ああ なんて美味なのだろう
キミと生卵がこんなに相性いいなんて
キミじゃないとダメだった
他のカップ焼きそばではダメだった
ソースの濃さと味が生卵に負けてしまうから
この雀荘にはジンクスがあった
大学に入学したての頃 先輩が教えてくれた
トップを獲ったら目玉入りを食べる
そうすれば次もトップをとれるんだよ って
ボクはそれを信じた
トップを獲る度に目玉入りを注文した
ボクは快進撃を続けた
ある晩は目玉入りを五半荘連続で喰らった
それでも 飽きなかった
キミはまさしく至高の味だった
だけどキミはボクの前から姿を消した
Gと呼ばれる凄腕のスナイパーに殺されたから
Gはたった一人で四万六千人のキミを根絶やしにした
公開された処刑写真はトラウマになりそうな代物だった
キミを愛するボクですら
だけどボクは負けない
それでもキミが好きだ
どんなに汚れようと穢れようとキミが好きだ
そしてこれだけはキミに伝えたい
ボクはキミの帰る日を待ってるよ
いつまでも
いつまでもずっと
きっといつか その日が来ると信じてるから
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