WELQのやらかしたパクリについて法的観点から罪状を考えてみる ~「あなた」を、そしてあなたの「子供」を踏みにじられないために

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2016-11-29社会・時事

はじめに

著者について

私は法科大学院を修了していますが、法曹ではありません。
また知的財産法は履修していません。
その程度の人間が書いた記事ですので、間違いがある場合は指摘していただけたらと存じます(むしろ実務的観点からの意見が欲しい)。

ただ、実際に著作権を侵害されたことがあり、検察に刑事告訴を受理していただいたことがあります
そのくらいには知識があるとも言えます。

記事を書いた動機

結論を先に書いてしまうと、恐らく著作権法違反でDeNAを罪に問うのは無理だと思います。
でも、パクられた一人HALさんの、こちらの記事

そして、一番問題なのは、これが何の問題もないこと。

そう、著作権の侵害はしていません。

なにかの書籍を読み、自分の文章で表現しても、なんの問題もないのです。

つまり、こんなことをされても訴えようがありません(と思います。誰がよい罪状があれば教えてください。私、ずぶの素人です)。

こう考えて当たり前でしょう。
過去に著作権侵害をされた者として、HALさんの気持ちは我が身のようにわかるつもりです。
なので罪状を考えてみました。

幸いHALさんからも、こうおっしゃっていただけました。

結論として、訴えることは可能だと思います。

WELQのパクリ騒動

この記事が出た以上、もう「パクリ」と言い切ってしまっても名誉毀損にはあたらないと思います。

詳しくは元記事を読んで下さい、あまりにすさまじくて一部を採り上げてどうの言える内容ではありません。
ただ一点だけ。

しかし、BuzzFeed Newsの取材に応じた社員やライターは、実態はWELQ編集部、つまりDeNAの事実上の指導のもとに大量の記事が書かれている、と証言した。

さらに著作権侵害を免れるためのテクニックまでマニュアル化しています。
これはもはやDeNAのコンプライアンスが問われるべき問題でしょう。

現在WELQは記事のほとんどを削除したそうですが、謝罪文の類は出していません
恐らく著作権法違反にあたらないと考えているからです。
事前にマニュアル化して著作権法違反を回避したという自信があるでしょうし。
著作権侵害は親告罪、いくらネットでみんなが騒いでも誰かが告訴しない限り罪に当たりませんから。

しかし大企業だからといって、そんな風にタカをくくられるのもムカつきます。ノミにはノミの意地がある。
DeNAに対する社会的制裁への一助となるよう、本記事を書いていきます。

記事の法的検討

著作権法からの検討 ~WELQは本当に著作権法違反を回避したのか?

恐らく警察・検察に持っていっても蹴られるんじゃないでしょうか?

「引用の形式みたしてないじゃん!」
「リライトは翻案なんじゃ? それなら利用許諾得ていないよね!」
きっとこんな反論を受けると思います。

これは著作物の定義からくる保護範囲の問題です。
著作物とは、著作権法において次の通り定義されます。

第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

「思想又は感情」が要件なのですが、HALさんの記事内容は医学界では通説とかその類にあたるでしょう。
そういった内容は著作権法において保護されません。

極論すれば「1+1=2」を「1+1は2」と言い換えているだけですので。

HALさんがちょうどいいツイートを出しているので載せます。

こう言い張れてしまうんです。

ぶっちゃけ引用元を記載してようとしてまいと同じ。
「1+1は2じゃん、それ書いて何が悪いの? あなたのサイトは『参考にした』だけだもん」となるわけです。

悪夢かもしれませんが……著作権法の保護範囲は「内容」ではなく「表現」が基本。
リライトしている以上は著作権法の問題にならないです。
両記事を精査して追い込む可能性もなくはないでしょうが……現実的じゃない気がします。

刑法から考える ~信用毀損罪(233条)

しかしWELQの記事は「1+1=3」のものもあります。
これを突破口にできないか。

加えて、HALさんの次の言辞。

しかし、これが病院名や個人名を冠した記事であれば「○○病院の○○先生がこう書いていた」ととんでもない方向に伝聞され、健康被害が生じた時に「あんたが書いたんじゃないか!」と訴えてくる患者さんが出てくる可能性があるのです。

(引用元:32歳女医、そろそろ子どもが欲しい頃「WELQのリライト記事の危険を医師が訴える」

つまり、「仕事の邪魔になったらどうする!」と言ってるわけで。
だとすれば、ここは刑法に立ち戻り、偽計業務妨害罪(刑法233条後段)でいけないでしょうか?

233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

構成要件の検討

(1)虚偽の風説の流布、又は偽計

偽計とは、「人を欺き,誘惑し,または,人の錯誤・不知を利用すること」をいいます。
WELQの記事は、著作権云々を別として、HALさんの記事のでたらめな要約となっているのは明らかでしょう。
また、「HALさんがこう言っている」という印象を与えます。
つまりWELQの読者を欺く(ないし錯誤)と言い得ます。

(2)業務

業務とは、「職業その他社会生活上の地位にもとづいて継続して行う事務」をいいます。
HALさんは医師としての地位に基づきブログを書いています。
従って業務にあたります。

(3)妨害

ここでの「妨害」は、実際に妨害する必要は無く、その可能性で足ります(抽象的危険犯)。
でたらめ記事の責任を転嫁されるのですから、HALさんの業務を妨害するおそれがあります。
まさにHALさんがぼやいてる通りです。

結論・補足

よって、WELQは偽計業務妨害罪の罪責を負うと考えます。
「信用を毀損し」(233条前段)の方だと信用毀損罪となります。
今回例に挙げた記事だと業務を妨害するおそれがあるとまで言いづらいかもなので前段の方がいいかもしれません。
(信用毀損罪なら「HAL氏の医学知識はでたらめという印象を与える」→「医師としての信用を毀損するおそれがある」)

この論理で妥当なら、DeNAは逃げ道として用意したつもりのサイト記載で墓穴を掘ったことになります。
まさしく「ざまぁ!」です。

もちろん、「無理だよ」とか「机上はともかく実務じゃねえ」という御意見あればお寄せください。
そして新たな罪状を考えていただけたらと存じます。

最後に

私はDeNAに何の恨みもありません。
しかし実際に著作物を踏みにじられた者からすれば、それで平然とふんぞり返る輩が許せないんです。

私の場合は、利用許諾を撤回したにもかかわらず、私の小説を原作とする漫画やイラストを作画者のイラストレーターが使い続けたという事案でした。
(この場合、作画者といえども原作者たる私の利用許諾が必要になります)

利用許諾を撤回した背景には、警察がイラストレーターに対して「私への接触禁止警告」を出したほどの嫌がらせがあります。
どうしてそんな者に、自分のキャラ達を使わせなければいけないんですか。
原作者の私は、漫画やイラスト見るだけで吐くまでの精神状態に追い込まれたのに。

それでも私からは削除しようにもできない状況。
警察が介入してイラストレーターに削除させるまで、まるでキャラ達が暴漢からレイプされた挙げ句に出勤ラッシュの新宿駅前へ放置された思いで見ていました。
(検察へ告訴したのは、その後です)

自分で考えて文章を書く。
その作業をしている者にとって、生みだした文章は自分自身であり子供なんです。
そして著作物を侵害されるということは、自分自身や子供の人権を踏みにじられるも同じなんです。

今回のHALさんみたいに実生活上のリスクまで背負わされる場合だってあります。
読者が読んでどう思うか、それを信じてどう行動するか。
私たちは自分に、そして読者に責任を持って、創作や執筆活動をしているんです。

記事を使うなら使うでいい。
ただそれなら、責任は自分でとる形にしてください。
最低限の敬意くらい払ってください。

WELQやそのライターに、きっと私たちの気持ちなんてわからないでしょう。
でも、せめて。
私たちの読者の方々だけでも心情をおわかりいただけたら。
そう、切に願います。