国家公務員総合職官庁訪問の面接で忖度は必要か? ~公安調査庁の場合

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2017-07-23インテリジェンス・治安

今年前半、世間を賑わせたキーワード「忖度」。
もはや霞ヶ関で生きる者、特にキャリアにとっては必須とも言いうる技術扱いをされています。

しかし官庁訪問(採用面接)においても忖度することは要求されるのでしょうか?
本記事では私個人の考えについて記してみたいと思います。

ただ、前提として「公安調査庁(公安庁)に限る」ものとさせていただきます。
面接する側される側の両方から書けますし、自分の所属していた官庁以外については責任持てません。
何より、このサイトを訪問する多くの方が公安庁志望者だと思いますので。

公安庁の採用面接において忖度は必要ない

私は、公安庁の採用面接において忖度は必要ないと考えています。
この理由は、次の点にあります。

何を答えれば正解になるかが曖昧だから

公安庁の面接は、原課訪問及び幹部面接はキャリア。
しかし窓口となる人事課はそうと限りません。
ヒラ、係長、補佐といて、私の代は三人ともノンキャリアでした。
他の年でも三人全員がキャリアなんて稀です。
年によっては総括補佐もノンキャリアです(私の採用翌年がそう)。

そして公安庁においてはキャリアとノンキャリアで、スタンスにかなり温度差があります。
それどころか同じキャリア同士でも異なります。
言ってみれば、忖度するだけ無駄なんです。

具体例を考えてみる ~私が採用された時の事例

公安調査庁が共産党を調査する必要はあるか?

例えば「公安調査庁が共産党を調査する必要はあるか?」という質問を考えてみましょう。
一見してデリケートな触れてはならない話題にも見えます。
公安調査庁不要論にもつながりかねない話ですから。
しかしこれは、私が実際に当時の人事課総括補佐(後の本庁総務部長)から受けた質問だったりします。

公安調査庁の立場に立った解答

まず公安調査庁の立場に立った模範解答を記してみます。
無難であり、公安庁について勉強しているというアピールになるでしょう。

調査する必要があります。
まず公安調査庁が公表している通り、共産党は「敵の出方論」に基づき暴力革命路線を堅持しています。
つまり危険性は未だ存在しているものと言い得ます。
また仮に共産党が平和革命路線を真に訴えていたとしても、今年の「内外情勢の回顧と展望」で報告された通り、中国などの海外勢力と結託して反政府工作を展開する危険性があります。
かような活動は決して容認できるものではなく、今後も継続して共産党の調査を行っていくべきです。

参考となるページはこちら。
なお回展の中では共産党と書いてませんが、どこかで述べたようです(どこで見たかは忘れましたが)。

公安調査庁の見解

日本共産党の見解

私の採用面接における解答

しかし、私は面接において、全く正反対と言いうる解答をしています。

共産党の調査は止めるべきです。
イデオロギーが支配する冷戦時代においては共産党を調査する意義があったと考えますし、公安調査庁はその役割を果たしてきたと思います。
しかし時代は変わりました。
いまだなお共産党が暴力革命を行うと本気で考える人がどれだけいましょうか。
人員も予算も限られているのですから、共産党や過激派など国内左派の調査は警察庁に任せてしまえばいい。
その分を北朝鮮や国際テロなど海外動向の調査に割り当てるべきです。
いっそ破防法ごと警察庁にくれてやればいい、あるいは廃止してしまえばいい。
逆にそうすることによって海外動向調査が公安調査庁の管轄であることを他官庁へアピールできましょう。

私の解答に対する論評

実はこれはこれで当時の正解だったりします。
当該人事課総括補佐などのキャリア主流派は、こうした考えでした。
共産党の調査を止めるべきというのは、調査の必要性云々より、どうすれば公安庁が生き延びられるかという観点に立つものです(形はなくなっても組織として生存を図れるかという意味)。
ひいてはキャリアが検事支配から脱却し主導権を握るという話に結びつきます。

しかし一方で検事を支持し、検事の庇護の元で、そこそこ出世しながら定年まで過ごすを良しとする考えの人達もいました。
そうした人達は生活するために公安庁で働いているにすぎません。
給料さえもらえれば仕事は何でもいいから共産党を調査しようとするまいとどうでもいい。
そこは検事が考えることであり検事に従う、という結論になります。

官僚としての生き方を優先するか、私人としての生き方を優先するかでスタンスはまるで違います。
組織内にすら正解が存在しないのですから忖度するだけ無駄です。

その上で、

現在では後者の立場の方が主流です。
何もせずとも検事がポストをプロパーに譲り渡し、世の流れも公安庁に向いている。
だったら口を開けて果実が落ちてくるのを待っていようという感じですね。
賢明な選択だと思います。
私の主義ではありませんが、仮に在籍していたら同じ態度をとることでしょう。

模範解答はその辺りのことも考えて作成してあります。
主義主張の無い方は、そのまま使えばいいと思います。
これで特に突っ込まれることはないでしょう。

なお共産党については、別の機会に改めて記します。

私自身はどう判断していたか ~面接する側の立場から

私自身はどうだったかと言いますと、内容は特に気にしていませんでした。
上の例であれば、共産党を調査することにつき賛成でも反対でも構わない。
ただ、その理由付けと構成は見ていました。

もし、どこかの本の受け売り丸暗記で答えようものならマイナス評価にしていました。
逆にどんなに拙くとも、自分の頭で考えたとわかる学生はプラス評価にしていました。
不思議なもので、そういう言葉って自然と心打たれるんですよね。

ただ色んな職員がいますし、色んなスタンスで面接に臨みます。
これはあくまで「私がそうだった」というだけの話。
原課訪問なんて、結局は運ですので悪しからず。

忖度以前に話してはいけないこと

今年の官庁訪問だと、間違いなく触れてはいけない話題があります。

元関東公安調査局国際テロ部門専門官の暴露が掲載されています。

こちらで記した人ですが、退職したらしく。
どうも想定外の悪い方向へ行っちゃったみたいですね……。
普段なら「暴露は読まない方がいい」という私ですが、あまりに直近。
目を通しておいた方がいいと思います。
「書いてあることには、自分から絶対に話題として触れない」という方向で。
忖度というより、官庁訪問におけるタブーみたいなものですから。

まとめ

自分の思った通り話せばいいです。
いささか乱暴ではありますが……無理を押して演じるくらいなら、どのみち入ってからも務まりません。
最悪一年で辞めるのがオチです。

元々、公安庁の場合は「何を話すか」より「どう話すか」。
あまり深く考えず、気楽に受けてきて下さい。

皆様の健闘を祈ります。