パチンコ店経営者の国籍別割合における「数字の違い」を公安調査実務の観点から説明してみる

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パチンコパチスロ

パチンコ店経営者の国籍別割合については諸説あります。
「韓国3:日本3:北朝鮮(朝鮮)3」とか「韓国5:北朝鮮3~4:日本・中国など1」とか「韓国5:日本3:北朝鮮1:中国など1」とか。
どうしてこのような違いが生まれてしまっているのでしょうか?
そして、どれが正しいのでしょうか?

私は「パチンカス」(パチプロの蔑称)であり、広島市内パチンコ店の店員。
しかし以前は公安調査庁というお役所に勤務し、朝鮮総聯・北朝鮮調査実務にも携わっていました。
その関係で、たまたまこれらの数字について説明するだけの知識があります。
特に、1つの数字については根拠も示せます。
そこを足掛かりに、本件トピックに関する問題点の提示を試みます。

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韓国5:北朝鮮3~4:日本・中国など1

数字のソース

Wikipediaに書かれている数字の一つ。
恐らくですが、この数字が一番メジャーなものとして知れ渡っているのではないでしょうか?
ソースはAERAとなっています。

全国にある約一万七千店のオーナーは、朝鮮籍の人が30~40%、韓国籍の人が50%、あとは日本国籍、華僑系が各5%という。

引用元:AERA 2006年2月13日号「偽1万円札出回り事情 パチンコ業界人が語る店の裏側」(朝日新聞出版)

しかしAERAがどこからこの数字を持ってきたのは記されてません。
前後の文章のつながりから「パチンコメーカー幹部」が発言主体と読めなくもありませんし、そう読めるよう誤魔化しているのでしょうが。

実は、この数字は「公安調査庁調べ」です。
(人によっては6:3:1と答えたりしますが、その辺は整数化するために生じる表現のアヤです)
記者が別途公安調査庁関係者に尋ねた結果を差し込んだものだと思います。
そもそも記事の作成された2006年時点でホール数は15000件割ってますので、17000件とされた上記データの時期がずれているのは瞭然です。

もちろん「たまたま調査結果の一致した他機関の数字」という可能性もありえます。
ですが公安調査庁内に本件数字が存在することには変わりませんので、「いずれにせよ」で片付けてしまいます。
このまま先を読み進めてください。

公安調査庁とは?

検索などで本記事を御覧になっている方ですと、そもそも「公安調査庁」という役所について御存知ないかもしれません。
名前は知っていても「公安だろ?警察の?」と誤解されているかもしれません。
「公安」の概念に関して正確に把握している方は存外に少ないのが実情です。

ここでは、次のことを理解していただければ結構です。

  1. 公安調査庁と警察(警察庁・都道府県警)は別組織。
  2. 公安調査庁は朝鮮総聯や北朝鮮の調査を行っている。

つまり本件数字は「警察とは別の役所によって」「朝鮮総聯の(具体的には商工会の)活動実態を把握する目的で」算出されたものです。

数字の算出方法について

本件数字は、公安調査庁が作成した「国籍別パチンコ店経営者一覧」(※資料名は正確ではありません)によるものです。
作成したのは90年代前半だったと思います。

具体的には、調査当時における日本国内全てのパチンコ店をリストアップ。
経営者の国籍を基準として、韓国籍、朝鮮籍、日本・中国・その他籍の順に分類しています。
(※「朝鮮籍」は便宜上「北朝鮮籍」の理解で構いません。厳密には違います)

基本的な手法としては、各ホールの経営者を調べ、国籍を調べ、統計をとったもの。
一番原始的かつ確実な方法であり、私も直接目を通してますが、調査当時においては信頼のおける数字です(下線部の意味は後述)。

また公安調査庁は自らが政策を立てることなく調査と分析のみに業務が特化した情報官庁。
省庁としての利害やしがらみに左右されることがないため、一時話題になっていた数字改竄もありません。

なお、チェーンについて、一店と数えたのか複数店と数えたのかは覚えていません。
全体の件数を出していることから恐らく複数店だとは思いますが。

推測が多くて申し訳ありません。
なんせ私の入庁以前に作成された古い資料ですので、その点は御容赦いただきたく願います。

ソースが明かされない事情

公安調査庁の名前が出ない事情として思いつくのは、以下の通りです。

  • 公安調査庁がソースの場合は名前を出さないことがマスコミにおいて慣習となっている。
  • 公安調査庁については悪口しか広めたくない団体・一派が多い。
  • 本件資料(数字)の存在は公安調査庁が個人情報を把握していることを示すに他ならないから、それによって叩かれかねない。
  • 再伝聞(伝聞の伝聞)だったりして、そもそも公安調査庁がソースなのを知らない。

特に、本件資料は部外秘扱いとなってます。
当時の公安調査庁は分析資料を官邸・関係機関にすら提供していませんでした。
そのため公安調査庁が本件のような調査をしていたこと、資料を作成していたこと、数字を持っていたことは、政府内ですら知られていません。

韓国3:日本3:北朝鮮(朝鮮)3

数字のソース

本件数字は、平成元年10月17日衆議院予算委員会において、浜田幸一議員の質疑に対する、森廣英一警察庁刑事局保安部長の回答に基づくものです。
以下、議事録より、やりとりを抜粋します。
具体的には、黄色いマーカーで強調した部分です。

○浜田(幸)委員 まず北朝鮮系、韓国系、台湾系、日本系と四つに色分けをされていると聞いているのでありますが、その具体的な実態の内容についてお伺いをいたしたいと思います。
 警察庁にお伺いをいたしますが、この実態はどのようになっているかお答えをいただきたいと思います。

○森廣政府委員 今申されましたような、いろいろな国籍別にどのぐらいの方がいるかという調査はいたしたことはございませんが、御指摘のような民族の方がたくさんいらっしゃることは事実でございます。実態でございます。

○浜田(幸)委員 たくさんということは、分類をしても分類し切れないということでございますか、それとも、約で結構でございますが、例えば日本人の経営者がどの程度で、韓国人の方々がどの程度で、北朝鮮の方々がどの程度で、台湾の方々がどの程度、その程度はお教えいただけますか。

○森廣政府委員 今仰せのような民族の方がそれぞれどれぐらいいるかということが報道されている事実は知っておりますけれども、警察独自の調査でそういうものを自信を持って裏づけするものがございませんので、警察庁からどのぐらいいるかということは言えないということでございます。

○浜田(幸)委員 実際問題として、再度お伺いをさせていただきたいと思いますが、そのウエートは七〇対三〇か六〇対四〇か、やはり四つの国の人たちがやっているわけですけれども、それを全体的に支配しているというよりも、その中の主なものを支配しているものは何ですか。それを教えてくれますか。

○森廣政府委員 おおむねでございますが、北朝鮮系、韓国系、日本系、それぞれまあ三割ぐらいではないか、あとその他が一割ぐらいではないかというふうに巷間言われております。

○浜田(幸)委員 ありがとうございました。
 なかなか苦しい答弁で申しわけありませんが、大体三、三、三、一と割り切れるようになっていますね。笑いながら聞いているわけでありますけれども、実際問題としてこの数字はやはり間違っているのじゃないですか。一番多いのは北朝鮮系ではないのですか。お答えだけしてください。

○森廣政府委員 概略今言われたようなことが巷間言われておりまして、それは大きな違いはないだろうと思いますが、先ほど申し上げましたように正確な調査などをしたわけでございませんので、間違いであるとか正しいという裏づけまでちょっと申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。

ただし警察庁は、次の通り、調査をしたことがないと断っています。

警察独自の調査でそういうものを自信を持って裏づけするものがございません

以下の通り、あくまで俗説としての紹介です。

概略今言われたようなことが巷間言われておりまして

本件質疑は「パチンコ献金疑惑」のものです。
パチンコ献金疑惑は、社会党(現:立憲民主党、国民民主党、社民党など)と朝鮮総聯(ひいては北朝鮮)が、パチンコ業界からの献金によって関係を深めていたという問題。
週刊文春が徹底した糾弾キャンペーンを繰り広げ、国会に持ち込まれました。

警察庁は知らなかった?

非常に政治的かつデリケートな議題ですから、警察庁が慎重に構えて持っている数字を隠した可能性はあります。
ただ恐らくですが、警察庁としては本当に把握していなかったものと思います。

「警察が知らないわけないだろう」、事情を知らないとそうおっしゃる方もいるかもしれません。
私も警察の人間だったわけではないので殊更に強調するのは控えたいのですが……簡単には以下の通りです。

もちろん警察の力は強大です。
「警察が知らないわけない」、その認識自体は正しいです。
現実として各都道府県警において膨大な情報を有しています。

しかし警察庁にそれら情報全てを集約していたわけではありません。
あるいは集約していても、警備局や生活安全局にはあって(質疑で回答している)刑事局にはなかったということもありえます。
極端な表現をしますと、「汚部屋」とか「腐海」になっていて捜し物がすぐに見つからない状態。
だから警察としては知っていながらも答えられないという事態が発生するわけです。

当時においてですと、こういう可能性は十分にありえます。
私が霞が関にいた頃すら、警察庁に限らず「お役所あるある話」ですので。

では本当のソースは?

警察庁刑事局保安部長は次の通り述べています。

今仰せのような民族の方がそれぞれどれぐらいいるかということが報道されている事実

つまり本件数字は「報道による数字」です。
だとすれば報道元が何らかの情報源から情報を入手しているわけですが……これについては一切不明です。
いったいどこが何に基づいて出した数字なのでしょうね?

韓国5:日本3:北朝鮮1:中国など1

数字のソース

本件数字は、朝日新聞報道によるものです。
Wikipediaから引用しましょう。

『朝日新聞』2011年6月7日朝刊15面記事によると、(省略)、2011年現在のパチンコ店経営者の国籍は、韓国が5割、日本が3割、中国・台湾が1割、朝鮮(北朝鮮)籍が1割であるとされる。

(引用元:Wikipedia「パチンコ」)

実はこのまとめ方、非常に問題があります。

数字の真のソース

原文を引用してみましょう。
元のタイトルは「パチンコばかりバッシングするな」。
秋山惣一郎氏(現朝日新聞編集員)によるPOKKA吉田氏への聞き取りです。

いま、パチンコ店経営者の国籍は韓国が5割、日本が3割、中国・台湾と朝鮮籍が各1割とみています。
統計があるわけじゃない。個人的感触です。
(引用元:朝日新聞2011年6月7日「(異議あり)パチンコばかりバッシングするな ライター・POKKA吉田さん」)

Wikipediaの記載からは朝日新聞が(自らの調査によって)根拠のある数字を示したように見えます。
しかし真のソースはPOKKA吉田氏です。

POKKA吉田氏はパチンコ業界紙「シークエンス」の編集長であり、パチンコライター。
その筋においては著名な方です。

パチンコ店経営者の国籍について語ったとしても不思議はありませんし、全く実勢から外れた数字でもないでしょう。
しかも「統計があるわけじゃない」と念を押しています。
オピニオンという記事の性質もあわせて、新聞読者が流し読みする分には問題のない内容だと思います。

Wikipediaの問題点

しかし転記の際に問題が生じてしまっています。
具体的には「①ソースの峻別ができていない、②個人の主観である点が記されていない」。

公安調査庁ですと、例えば次の通り記します。
同庁調査官が秋山惣一郎氏から聞き取ったものと仮定します。

いわゆる又聞きですから、それがわかるように記します。
また、数字の性質を強調するため、注釈を前へ移動させています(ここは「私ならそうする」という部分ですが)。
「統計的根拠のない」=「さほど信頼に足る数字ではない」というのはインテリジェンスにおいて重要な意味を持ちますので。

これなら誤解なく読めるのではないでしょうか?

また、元記事とwikiとで大きく意味が変わっていることもおわかりになるかと思います。
「ソースがwiki(笑)」とよく言われるのは、こうした問題が生じるからなのが理由の一つです。

3つの数字の違いと問題点

統計的根拠を持った数字は1つだけ

統計的根拠を持った数字は、公安調査庁の調査に基づく「韓国5:北朝鮮3~4:日本・中国など1」だけとなります。
あとは風説の類であったり、個人の主観であったりです。

公安調査庁がこうした調査を行ったのは、まさに「パチンコ店経営者の国籍別割合」について確たる数字がなかったからです。
警察庁すら国会で問われて答えられない。
政府として、さすがにこれはいかがなものかと。

資料作成については、まだパソコンが普及していた時代ではないため結構な労力を費やしたと聞いています。
未だ定かな数字が世間に出回ってないのを鑑みると、むしろ説明を受けた当時より現在の方が作業の意義を感じられます。

公安調査庁の数字も問題

では「韓国5:北朝鮮3~4:日本・中国など1」を通説として採用すればいいのでしょうか?
それもまた問題があります。

公安調査庁の数字は今から20年以上昔のもの、あまりにも古すぎます。
古くても業界の実勢に沿っていれば構わないのですが……。

日朝首脳会談で北朝鮮が日本人拉致を認めたのを契機として、総聯系商工人の韓国・日本への帰化が急速に進みました。
韓国から日本への帰化も、生活の都合などを理由に進んでいます。
さらにパチンコ不況で倒産が相次ぎ、ホール数は減少の一途を辿っています。

これらは全て国籍の比率に影響を及ぼす要素です。
かように調査当時とは状況が異なりすぎるため、公安調査庁の数字も採用できません。

結局のところ、現在において採用に足る数字はなさそうです。

なお、私の知る限り、本件資料は改訂されてません。
改訂したところで政府にとって政策的な需要はありませんし。
そんな作業に割く人手も時間もないというのが実情です。

個人的所感

「統計的根拠がない」ことを踏まえた上で、POKKA吉田氏の数字が実勢に一番近いとは思います。

「韓国5:北朝鮮3~4:日本・中国など1」をベースにした場合、朝鮮籍は韓国・日本籍へ流れる。韓国籍は日本籍へ流れる。
そうであれば「朝鮮籍の比率は減る&日本籍の比率は増える」のは言えそうですので。
(ホール数の減少がどちらに影響を与えるか不明ですので除外するとして)

ただ、私の疑問として「総聯系パチンコ店の比率が小さすぎる」。
「いくら総聯離れが加速したとしても、日本系と並ぶまでに減るだろうか?」というのがあります。
それこそ仕事していた「個人的感触」として。
しかし私が退職してから15年が経過します。
現況の変化の方が私の感覚を上回っているのかもしれません。
その時は「時代だなあ」で片付けるしかなさそうです。

まとめ

実のところ「パチンコ店経営者の国籍別割合」の数字そのものには、あまり意味がないです。
例えば総聯離れを示す指標としては役立ちますが……。
比率がいくらであろうと「パチンコ業界の大部分は在日朝鮮・韓国人で成り立っている」という事実は本質において変わりありませんから。

そうはいってもパチンコ業界を語るのであれば重要な前置きとなる要素であり、確固たる数字が欲しいのは確か。
もし現在、組合か警察庁が数字を持っているのであれば、出していただけると嬉しいなと思います。

ただし「意味がない」とはしましたが「意味を持たせたい人」はいるかもしれないというのが私の印象です。
これについては、書くとしても稿を改めたいと思います。
数字の話はあくまで数字の話として切り分けたいので。


Author:天満川 鈴

社会の底辺に住まうパチンカス、ADHD(精神障害3級)
元公安調査庁職員。
国家一種経済職→入庁。イスラム過激派などの国際テロ、北朝鮮を担当。
朝鮮総聯へのスパイ工作を描いた小説「キノコ煮込みに秘密のスパイスを は週刊誌で紹介され、さらに推理・歴史作家の鈴木輝一郎先生から「江戸川乱歩賞獲れた」と絶賛。素人の小説としては異例の反響を呼びました。
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